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Happy birthday to me.

また一つ歳を取る日、富士山麓の廃れた街を歩いた。

朽ちていく街の外れの寺に、徐福の墓と伝わる塚があった。

秦の始皇帝が不老不死の妙薬を求めて旅立たせたという伝承上の人物の墓が、こんな朽ち果てた街のはずれにあるのは悪いジョークみたいな気がした。

僕も生きに生きて、もう40代。
結構長く生きた。そしてまた一つ歳を取る。

高校生の頃クラスの女子に「オッキーは20代で自殺とかしそうだね」と笑われた自分も、そんなことをしでかすことなくちゃんと生きた。

仕事は一世代下を中心にしていく時期に来たし、家庭という営みからは一足早く卒業した。
若者との接点も相変わらず多いけど、もう眩しくて目も当てられないと感じる。
自分を労るのは自分だけという生活にも慣れた。

それでも人生に疲れた気もしないし、まだまだやりたいこともあって楽しい人生だけど、始皇帝のように不老不死なんて求める気にはなれない。

せめて今日歩いた街のように、見る人が見れば深い趣きを感じる朽ちていき方をしたいとは思う。

僕は存在する苦しみの一時凌ぎとしても、他人を求めることはやめられないだろうから、みなさん、これからも仲良くしてください。


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