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【受験社会④】講師目線で2022年の埼玉入試問題分析してみた

こんにちは、ならんはです。
入試の時期が本格的に始まってきました。今年は小6を担当していないということもあり、なかなか特殊な年ですが…。とはいえ入試問題には目を通しており分析は怠らずにやっていこうと思っています。忙しいことを言い訳にすると全然解けそうもないので、時間を見つけてはとにかく解く、ということをやっている日々です。

注目問題などは入試期間が終わった頃に各学習塾で入試報告会などがあるのでそちらを見てみると面白い発見があるかもしれません。今回は、担当目線で入試問題をどう考えるかをテーマに執筆していこうと思います。

入試問題分析のいろは

まずは担当目線から「入試問題を解いてどうするか?」という視点で考えてみましょう。すぐに思いつくこととしては、単純に「今年こういう問題が出た!」と問題を紹介することがあります。
ただ、このパターンは入試期間に(受験生、非受験生問わず)伝えていく分にはいいと思いますが、入試期間が終わって普段の授業に落とし込む場合、あまり得策とは言えません。

理由は簡単です。「今年の入試問題が次の年(あるいは次の受験校)にまた出るとは限らない」からです。別の年度・学校で似たような出題があったり、1月校出たものが2月校に出たり、ということはあるかもしれません。この時期限定になってしまいますね。
とはいえ、入試問題のトレンドを確認するという視点はすごく大切なことなので、ぜひ忘れないでください。

では、問題分析した後どうやって授業に落とし込んでいけばよいのでしょうか。それは「授業で何を伝えるか?どのように考えさせるか?」という視点です。この問題を通して何を伝え、何を考えさせるか、というネタを常に仕入れていくようなイメージです。

これは「何を学ぶか(教えるか)」よりも重要な考えでありながら、文系科目をしっかり勉強する理由にもつながります。だからこそ担当がきちんと良問を選択し、授業で展開していくことが大事なのです。詳細は前回のnoteに書いていますので是非ご覧ください。

【前作note添付】

授業で何を伝えていくか?

「日本のすがた」などの統計資料や時事問題は除き、地理・歴史・公民の3分野の内容から、今年の入試問題でピックアップしてみましょう。

①昨年行われた東京オリンピックの前に行われた1964年のオリンピックが昭和何年かを問う問題。 【1/10開智(先端1)】

こちらは「+25の法則」ってやつですね(今私が命名しました)。昭和○年の数字に25を足すと西暦の下2桁の数字になるというものです。
この問題、実はこの試験の最初に出題されているわけですが、「知っているか知らないか」という次元の話ではないわけです。「知っている情報からどうやって答えを導くか」という思考力も求められる問題になります。

たとえば、昭和は何年に終わったでしょうか?これはテキストに載っているはずです。そうですね、1989年に元号が平成になりました。(ベルリンの壁が崩壊し、冷戦が終結したのと同じ年です。)
ということは、昭和は64年あるわけですから、1989年が昭和64年であることを使えば、1964年が昭和何年かは計算で求められます。
計算すると、64+25=(19)89になってますね。では、(19)64-25はいくつですか?39ですから、答えは昭和39年とわかります。

ただ、この問題は4択問題である上に、選択肢も10年刻みなので比較的解きやすい問題だったのではないでしょうか。
ちなみに平成は「12」の法則です。2000年以降のみになってしまいますが…頭の片隅に入っていると当日慌てずに問題を解き進められるはずです。

②表から読み取れることをア〜エの中から1つ選ぶ問題【1/11栄東A】
今年度の栄東は公民からの出題が減ったことと、資料の読み取りなどの思考力系の問題が見られたことがポイントといえます。
例年であれば、地理・歴史・公民の3分野からまんべんなく出題され、大問1つずつで構成されていたものが大問の数が2つに減り、さらに公民分野からの出題は計4題ほど。憲法の条文穴埋めと国会・内閣・裁判所からの出題にとどまりました。
また、資料の読み取りに関しては選択式ですが表やグラフが出てきて、正しく読み取れているものを選ぶという内容であり、知識によらない出題となっています。背景としては、近年のトレンドでもある思考力系の問題を取り入れることで、暗記型の社会科から脱却を図っているのでしょうか。中学入試だといわゆる適性検査型の入試や、都立高校の入試に類似したタイプの問題といえるでしょう。

多くの学習塾のカリキュラムは小6の夏休み頃までは単元学習をしていくと思います。ですが、特に社会科の入試問題は「ここの単元だけ」という出題は少なく、地理であれば地方ごとではなく日本全国の中で出題されたり、歴史であれば時代をまたいで出題されたりします。
ということは、単元ごとの知識ももちろん大切ですが、どうやってその知識の横断を整理し、知識の引き出しをいかに増やし、思考できるようにしていくのかが大切になります。つまり、小6夏以降から始まる直前期の過ごし方が極めて重要だということです。

テキストに載っていないけど、入試には出るということはよくあります。
大切なのは、それぞれの単元学習を前提として総合問題にどうアプローチしていくかということです。当日その場で初めて見る問題に対処して、制限時間内に問題を解き切り合格最低点以上を取らなければ、合格を勝ち取ることはできません。そのための知識、そして思考プロセスや解法を普段の授業でいかに学ぶことができるか、それこそが社会科の成績向上に必要な力であるといえます。
どんな問題にも対処できるような普遍的な解法、そして経験やテクニックはテキストをなぞって過去問を解くだけでは身につけることが難しいでしょう。
普段の授業でその経験を積んでいきながら、ポイントや関連知識を復習していく、その手助けができるのがまさに授業なのです。
だからこそ、社会科担当は(他の科目もですが)、教材「を」教えるプロではなく、教材「で」教えるプロであるべきだと思います。

昨年度の某社の入試報告会動画で社会科担当の方がおっしゃっていたのですが、4年生のうちから家でコミュニケーションを取り、素養や日常生活の中で知識をいかに学べるかどうかが大切だというお話しにも通じるところがあるなということを一年越しに思い出しました。入試問題を解くだけで終わりにせず、きちんと研究すると見えてくるものがあるように感じます。そのためにも日々研鑽していかないと…と思わせてくれます。

いかがでしたか?1/20には千葉県入試がスタートし、2/1からは東京と神奈川でも入試がスタートしていきます。また気になる問題があればピックアップしていけたらと思っています。
また次回もお楽しみに!

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