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コロナ禍だけど、音楽フェスに参加しました

2021年5月2日に千葉県千葉市で開催された「JAPAN JAM」に、5月3日にさいたまスーパーアリーナで開催された「VIVA LA ROCK」に参加した。

高校生の頃からずっと、趣味を聞かれて最初に答えるのは「音楽ライブに参加すること」だった。
大学に入ると月に1度は必ず、多い時は週に2回もライブハウスに通っていた。大規模なフェスは夏と年末、それからGWのいわゆる春フェスで少なくとも年に3回。別のフェスに日替わりで行くこともあるから実際はそれより多く参加している。

2年越しに開催されることになった大型音楽フェスに、参加するかどうかすごく悩んだ。きっと私だけじゃなくて、多くの音楽ファンが同じように葛藤したと思う。

5月1日に「VIVA LA ROCK」が初日を迎えて、翌日からたくさんのニュース媒体がその是非を報じたし、それによって音楽フェスの主催者や参加者に対しての厳しい意見もたくさん目にした。
特に、開催直前で開催地にほど近い東京都に緊急事態宣言が発令されたこと、開催地である千葉県と埼玉県にまん延防止等重点措置が適用されたこと、さらには同時期に宮城県で開催される予定であった「ARABAKI ROCK FEST.」の中止が発表されたことで、強い言葉で詰るコメントが増えたように感じた。

それを受けて、参加しようと決意するまでに考えたこと、そして参加して感じたことを一介の音楽ファンとして伝える必要があるのでは、と思った。決して参加者全員の気持ちを代弁するような意図はなく、あくまで私という個人がこう考えていた、という記録である

「音楽を守りたい」という大義名分への違和感

フェスの開催が決まってから、合言葉のように繰り返されていたのが「音楽を守りたい」「音楽を止めない」というフレーズだった。キャッチフレーズとしては素敵だし、イチ参加者の私だって本気でその気持ちを持っている。
だけど、この状況下でたくさんの人を集めるイベントに参加するにあたっての大義名分としては不足だと言わざるを得ない。
本当に「絶やさないこと」だけが目的なら、チケット代を寄付した方が手っ取り早いし安全だ。何より、普段から音楽ライブに行ったりしない人たちからしたら、そんな感情論だけでは納得できないに違いない。
開催する側・出演する側の発する「音楽を守りたい」は切実で、客にはわからない深刻な問題(予想できる範囲内では、主に経済面での)があるんだと思う。しかし、参加者が同じ「気持ち」を掲げることには違和感がある。

私たちがフェスに行くのは、結局「行きたいから」でしかない

そこを言い訳してはいけないと思うのだ。
みんなが確かに「音楽を守りたい」という気持ちを持っている。
だけど、最終的にフェスに行くのは、ライブに行くのは、志のためではない。行きたいからだ。楽しみたいからだ。これは言い逃れしようもなく、ただのわがままである。
じゃあそのわがままを認めてもらうにはどうするか。
わがままであるという前提があった上で「感染対策を徹底して参加」することで、「安全におこなえる経済活動のひとつ」として認めてもらえる可能性がやっと見えてくるのではないか。

私は「行きたいから」行く。
だけどこれでコロナウイルスに感染したら、私じゃなくても会場で集団感染が起こったら、私は「遊んで混乱を引き起こした迷惑な集団のひとり」になる。そうならないために開催する側が最大限気を遣ってくれていることは痛いほど伝わってきたし、私も個人としてできることは最大限やる。そこが私たちのスタートラインになる。

5月2日 JAPAN JAM(※1日目)

ここからは実際に参加してみてのレポートと感想。各アーティストのパフォーマンスはどれもこれも最高だったが、また別の話になるのでここでは割愛する。

4日間の開催期間のうちの初日。最寄駅である蘇我駅はあまり大きな駅ではないので少し心配していたが、開演30分前くらいに到着しても人とぶつかることのないほどの混雑度だった。駅から10分くらい歩くのだが、誘導しているスタッフが密回避を徹底的に呼びかけていたこともあり道中は落ち着いた雰囲気。

入場時には検温とアルコール消毒、そして持ち物検査を行い、チケットはリストバンドに引き換える。クローク(出し入れ可能な有人ロッカーのようなもの)あり。例年を知っていると本当にスカスカだと思った(各日1万人)。

ステージ前方付近は1m×1mの区画に分かれていて、1つのマス目には1人しか入ってはいけない。当然モッシュをはじめとする全ての接触、発声は禁止。後方は特に制限はないが、大幅にチケット販売数を減らしているだけあって密集するようなことはない。なんせ敷地が広大でステージとステージも離れているから、移動の際も混み合っていた印象はない。

飲酒禁止に加え、飲食スペースの制限あり。ベンチは向かい合わせにならないようになっていた。

途中雷が鳴って、屋根がある場所に避難を促される場面があった。判断は迅速だったが、この移動はちょっと混乱があった。前方で待機していた客にとっては不満が生まれてしまったし、残念ながら再開するときにいい場所を取ろうと(取り返そうと?)ダッシュする人もいた。完全にイレギュラーな事態とはいえ、野外フェスで起こりうることではあるし、イレギュラーだから対策が徹底できませんでした、ではお話にならないので、ここはもう少しやりようがあったのではないかと思う。

終演後も開演前と同じくスタッフが誘導を徹底。呼びかけの甲斐もあって距離間はキープできていた。

参加した率直な感想として、スタッフも参加者もなんとしても成功させようという意識が高いなと思った。人に1回もぶつからずに終えたフェスなんて初めてだ。
初めは「アルコール禁止ってそこまで意味あるのか?」と思っていたけど、騒いでる人を本当に見なかったから、少なからず意義があったと今は思う。

しいていえば、避難の際の混乱と、どうしても仮設トイレはちょっと怖いなと思った。また、チケットを購入する際に個人情報を入力するのだが、チケット譲渡が蔓延している状況でこれは意味を為していない。ここは早急に改善が必要と感じる。

5月3日 VIVA LA ROCK(※3日目)

5日間開催のうちの3日目。こちらは屋内開催ということもあり、チケットに5つのアルファベットが振られていて、入場できる時間があらかじめ決められていた。この時間も2日目から微調整されていて、“開催して終わり”ではなく即時改善していく姿勢が伺える。物販エリアも一定の時間までは事前申し込みが必要で、徹底して混雑を避けていた印象。前説によればこの日の動員は9500人。

入場の際にはアルコール消毒と検温、持ち物検査に加え、事前に公式アプリに登録している顔写真の確認と、COCOAの接触確認画面の提示が必須。再入場の際も省略することなくこの一連を求められる。もともと埼玉県民を優先してチケット販売している経緯もあり、近隣住民が参加することが前提でクロークは無し。

ステージ前方はジャパンジャムと同じように1m×1mの区画に分かれているが、各出演者で事前抽選があり、立ち位置まで決められている。ちなみに入れ替え時にはアプリから通知が来る。前方ブロック以外はアリーナにも座席が用意されていて1つ空きで使用が可能。スタンド席も同様。

実はビバラは1日目の時点で禁止されている場所取り問題が取り沙汰されていた。連日参加している人によると、場所取りの取り締まりは2日目からかなり強化されたらしく、置き去りにされた荷物は撤去する旨も定期的にアナウンスされていた。移動の導線も2日目から見直されていたようだ。

こちらも飲食スペースが決められていて、アルコール類も当然禁止。食べ物を売っている場所がステージから遠いのはかなり効果的だと思った。

終演後はスクリーンに図示したうえで分散退場。主催の鹿野さんが(おそらく最後のブロックが退場し切るまで)アナウンスしながら、最後までこのフェス開催に懸ける思いをお話しされていたのがとても印象的だった。駅も電車も混み合うことなく、極めて快適に帰路につけた。

ジャパンジャムと比較すると、やはり屋内開催という部分を不安に思っている人が多かっただろうが、安全を確保するための動きはむしろビバラの方が徹底されていたと思う。ブースごとの混雑状況が確認できることや、細やかな案内がリアルタイムで通知されることなど、アプリのインストールを必須にしたことで生まれたメリットが大きかった。

加えて、前日の反省をすぐに翌日以降の運営に反映していく動きには感動したし、そんな様子を見た参加者も日を増すごとに気が引き締まっているように思った。

2日間、2つの音楽フェスに参加して

前述の通り“完全なわがままで”フェスに参加してみて、完璧ではないけれど、スタッフのみなさんが本当にきめ細やかに気を遣って空間を作っていることが実感できた。私もできる限りの努力をしたつもりだ。

実際にその場にいた者として、みんなルール(マナーではなく)を守っていて感動すらした。黙食がこんなに徹底されている様子は日常生活でもなかなか見かけない。
けれど、禁止されているはずの酒の持ち込みをしている人のツイートを見かけたのもまた事実だ。ひとりふたりかもしれない、けど、ひとりふたりはいた、ということだ。私たちはそれを“ごく少数の人”だと説明するのではなく、きちんと糾弾していかないといけない。“わがままで来ている”仲間なのだから。

極めてフラットなものから、はっきりと悪意を感じる偏ったものまで、各局ワイドショーで連日報道されている。当たり前だと思う。今はまだ、わがままで行っている段階だから。だからこそ、今回の2つのフェスは胸を張って安全だと言える状態で終わってほしい。これもよく言われていることだが、これが成功すれば「安全な経済活動としての音楽フェス」が実績になる。でも、それを免罪符にしてはいけない。努力と協力の甲斐あって実績を作れた、は成功だが、実績を作るために強行突破した、はテロだから。

開催期間が終わって少なくとも2週間経ってみないことには、これを成功と呼べるようになるかわからない。
本当に、2日間、心の底から楽しかった。楽しい思い出にしたいし、また参加したい。そのために、まずは。わがままを、通過点にしたい。


読んでくれてありがとうね