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【安全】万博の休憩所2は本当に安全なのか

話題になった休憩所

2025年4月13日に開幕する大阪万博であるが、最近話題に上がったのがこちらの休憩所である。

これは、花崗岩に穴をあけて鋼製のワイヤーでつるすというもので、岩の重量は90~250kg、合計重量は90tにもなる。
話題になっているのは、この休憩所が本当に安全なのか?という点である。
おそらく荷重計算などは行われていて問題ないと判定されていると思われる。ただ、リスクという面ではどのように扱われるのかを考えてみたい。

リスクアセスメント

世の中にはリスクアセスメントというものがある。リスクアセスメントとは以下の厚生労働省のページに詳しく記載がある。

これだけでは不親切であるので、概略について記載させていただくと
[1]事業場のあらゆる危険性又は有害性を洗い出し、特定する。

[2][1]による労働災害(健康障害を含む)の重篤性(災害の程度)及びその災害が発生する可能性の度合を組み合わせてリスクを見積る。

[3][2]の見積りに基づくリスクを低減するための優先度を設定した上で、そのリスクを低減するための措置(リスク低減措置)を検討する。

[4][3]のリスク低減措置を実施するとともに、その結果を記録する。

とまぁ危険性や有害性がある作業についてどの程度のリスクがあり、さらにリスクを下げられるかを判定するものになる。
今回は仕事を行う事業所というわけではないのだが、この休憩所にて求刑した場合のリスクを見積もってみたい。

リスクアセスメントの手法

リスクアセスメントの手法はいろいろあるが、今回は中央労働災害防止協議会(中災防)のリスクアセスメントシートを採用させていただく。

リスクの見積もりは、「危険な状態が発生する頻度」、「危険状態が発生した時に災害に至る可能性」、「負傷又は疾病の程度」の3つの項目により行う。

リスクの見積もり

まず、「危険な状態が発生する頻度」だが、頻繁(4点)/時々(2点)/めったにない(1点)の3段階となっている。今回は休憩所であるので、常時人が岩の下に入る状況になる。よって「頻繁」ということになる。よってここの点数は4点となる。
次に「危険状態が発生した時に災害に至る可能性」になる。これは確実(6点)/可能性が高い(4点)/可能性がある(2点)/可能性はほとんどない(1点)となる。今回の事例ではこれは確実(6点)になると推定される。今回はもし鋼製ワイヤーが切れた場合は確実に岩が落下し、下にいる人に当たると推測できる。もしワイヤーが切れたとしてもほかの安全装置(例えば鉄製の屋根など)があれば可能性はほとんどない(1点)まで下がる可能性があるが、今回は特に何もないため確実の6点とせざるを得ない。
最後の「負傷又は疾病の程度」だが、これも致命傷(10点)とせざるを得ないであろう。軽くても90kgの岩が落下して直撃を受ければ、即死も十分考えられる。よって、合計点数は20点となる。

リスクポイント

中災防の評価シートではリスクポイントは以下のように分類されている。
リスク0 2点以下 対応不要
リスクI 3~5点 必要に応じて、リスク低減措置を実施する
リスクII 6~8点 多少の問題がある
リスクIII 9~11点 かなり問題がある
リスクIV 12~13点 重大な問題がある
リスクV 14点以上 直ちに解決すべき問題がある
今回のケースは20点(つまり満点)なのでリスクVの最大値となる。
リスクアセスメント的にはこの休憩所は扱ってはいけない内容になる。もし使用したいというのであれば、岩の下に鋼製の屋根を付け、ワイヤーが切れた場合でも岩が落ちないなどの対処が必要であると考えるし、私もそれをお勧めしたい。

吊り荷の下に入るな

世の中で行われる建設では当然重量物を高いところに持ち上げるクレーンが必要になる。その中では「吊り荷の下に入るな」という言葉がある。これは、どんなに安全対策を行っていても吊り荷は落ちる可能性があるということで、クレーン運転の資格や玉掛けの資格(玉掛けとはクレーンに吊る荷を掛けたり外したりする作業のこと)を取得するときには確実に言われることである。そもそも玉掛けという資格が独立してあるということはそれだけ危険性の高い作業であるということになる。
建設現場では常識である「吊り荷の下に入るな」はこの休憩所でも適用されるべきであるし、屋根などを付けてしっかりとした安全対策をとるべきだと考える。岩が落下してけが人や死者を出してからでは遅いのである。

作業手順書は血で書かれている

作業手順書は血で書かれているとよく言われる。これは、過去に起こった災害や事故による教訓をもとに書かれていることが多いためである。この休憩所も、安全をしっかり担保したうえで万博の開催を迎えてほしいと切に願う。




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