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歩行周期 LR(ローディングレスポンス)について

歩行周期 LR(ローディングレスポンス)について

LR=始まり:初期接地で始まる 終わり:反対側の脚が地面から離れた瞬間

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LRはICの次に起こるフェーズです。

IC~LRまでは両脚支持期となりそれ以降は単脚支持期が続きます。
その為LRでの役割は

・衝撃吸収
・荷重の受け継ぎ
・前方への動き


となります。

とにかくここでは安定させて次のMstにスムーズに移行できるようにする。そんなイメージでしょうか。


しかし、臨床上このLRはMstの次に異常動作(痛み)を起こしやすいフェーズだと感じます。

その理由は3つあります。

・距骨下関節の回内(外反モーメント)
・外部膝関節屈曲モーメントがICよりも増大する
・外部股関節内転モーメント

これらの理由がLRの異常動作と関係しています。

なお歩行動作を考える上ではモーメントやベクトルなど力学的な視点が非常に大切になってくるので歩行を診る時は足が地面に接地した際の膝や骨盤、上半身の位置が床とどのような関係になっているのか。

こういったことを考えながら観察していくと見えてくることが増えてきます。

では、まずLRの正常な状態を確認していきます。

☆LRに起こる関節運動

・股関節が20°屈曲し伸展筋群と外転筋群が活動

・膝関節15°屈曲し大腿四頭筋(主に広筋群)とハムストリングスが活動する

・足関節5°底屈、距骨下関節5°外反、前脛骨筋と後脛骨筋の活動

一般的にはこのような動きが正常です。

ICよりも荷重移動が進んでいくのでそれを支えるために股関節周囲や膝周囲の筋活動が多くなり、各関節で安定性を高めている、そんな状態でしょうか。


では、先ほどの異常が起こりやすい3つについて詳しく説明していきます。

・距骨下関節の回内(外反モーメント)
ICは距骨下関節(以下ST)回外で接地します。

その後LRにかけてSTは回内方向へ動きます。

ここでSTの可動域が過剰な方や偏平足の方は通常よりも外反モーメントが増大してしまいます。

STが回内するということはその上についている下腿も連動して動きます。

STが回内すると下腿の動きは内旋です。これは脱臼などしていない限り絶対的な動きです。

下腿の内旋が起こると大腿との間で回旋ストレスが生じます。

この回旋ストレスにより鵞足や四頭筋腱に痛みを生じます。また、STが過剰に回内するので内側縦アーチが潰れて足底筋膜に牽引ストレスが生じ痛みを引き起こすこともあります。

・外部膝関節屈曲モーメントがICよりも増大する
ICでは膝関節の屈曲は5°でした。LRではさらに屈曲し15°必要になります。

この時床反力ベクトルは膝関節の後方を通過します。

つまり、外部膝関節屈曲モーメントが働きます。

膝関節が屈曲しすぎないように膝関節伸展筋で止めようとします。これを内部膝関節伸展モーメントと言います。

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外部膝関節屈曲モーメントが増大すると内部膝関節伸展モーメントも増大します。つまり、伸展筋の過剰収縮となります。

その場合、膝関節伸展筋である大腿四頭筋が多く使われることになるので滑走不全を引き起こし膝の痛みに繋がることになります。


・外部股関節内転モーメント
床反力ベクトルを股関節で見てみると内転モーメントを発生します。


それに対して大腿筋膜張筋や中殿筋、大殿筋上部線維などの外転筋群が拮抗して働きます。これによってLRでは股関節の動きが制御されます。


しかし、外転筋の機能不全を起こしている場合は股関節が側方へ動揺するトレンデレンブルグ歩行や体幹を患側へ傾けて歩行をするデュシェンヌ歩行を呈することがあります。


このような歩行が繰り返されると大腿外側の組織(大腿筋膜張筋、中殿筋前部繊維)は受動的支持となり筋の支えが行えなくなります。

以上のような理由でLRは異常動作や痛みを引き起こす原因になります。

【まとめ】
・LRは両脚支持期で荷重移動を行う

・距骨下関節の外部外反モーメントの増大は膝や足部の痛みに繋がる

・膝関節のどこを床反力ベクトルが通るのか確認する

・外部股関節内転モーメント増大は大腿外側組織へのストレスを引き起こす


参考文献

観察による歩行分析

片寄 小林ら:足部・足関節理学療法マネジメント

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