「冗談が通用しない人」の存在を意識して発言しなければならないらしい

2月13日の夜に福島県沖を震源地とする地震が発生しました。東京都でも東日本震災を彷彿させる強く長い揺れを感じて驚きました。一部の地域で停電などの一時的な被害は出たものの、不幸中の幸いにして致命的な被害は少ないようです。

この地震に関連する珍事が起きました。ツイッターで放たれた冗談が転じて凍結されたアカウントがあったのです。そのアカウントは「おねロリキメセク天皇」なる名前のアカウントなのですが、話題となっている発言は以下のとおりです。

バイデンが福島の井戸に毒を投げ込んでるのを友達が見ました!
今回の地震はバイデンが松屋で食い逃げしたことを隠蔽するために起こした人工地震です。目の前の出来事に惑わされず、情報を見極めていきましょう。

2つの発言のうち1つ目のアカウントが著名人に引用リツイートする形で「悪質な差別煽動。皆さん通報しましょう。」と煽られ、結果としてアカウント凍結に至りました。

まずこの発言ですが、どう見ても嘘です。ここに書いているバイデンとはアメリカ大統領であるバイデン氏を示しているのは間違いないでしょう。アメリカ大統領であるバイデン氏が福島の井戸に毒を投げ込む行動は明らかに不可能で、しかもそれをする理由もありません。「友達が見ました」というのも情報源の胡散臭さを意図的に醸すための常套句です。ここまで綺麗な嘘を人は「ギャグ」と言います。これを「差別煽動」と感じる理由が分かりません。これももはや「ギャグ」です。ギャグにギャグが重なり、珍事となりました。

発端となった発言の背景には、ここ数日で放たれていた「バイデンが松屋で食い逃げした」という出所不明の噂話が出回っていた事実があります。松屋は食券制の前払いなので食い逃げは出来ません。この矛盾を突いた明らかな嘘はアメリカ大統領選挙に関連する陰謀論に邁進する方々を揶揄するものだと私は感じました。「福島の井戸に毒を入れた」のもそれに並ぶものとして考えられたのだと思います。

2つ目の発言は更に高度です。さらに地震発生時の「人工地震説」も大地震が起きる度に生じる陰謀論の代表例です。大統領選挙に関連する陰謀論は主に右派が、人工地震説は主に左派が陥りがちな陰謀論です。対極にあるそれぞれの陰謀論を纏めて列挙して「目の前の出来事に惑わされず、情報を見極めていきましょう。」とはよく言ったものです。この風刺の効いたギャグセンスを私は面白いと感じました。

この珍事を目の当たりにして私は一つの教訓を得ました。冗談が通用しない人が一定数は居るということです。風刺や皮肉を効かせた表現をしても、それが多くの人の目に入れば、誰かは真に受けて不快感を与えてしまいます。それが一時の感情で済めばよいのですが、その発言が注目を浴びてしまえば大きな力でアカウント凍結などの実害が生じてしまいかねません。公の場での発言は十分に注意したほうが良さそうです。そしてこの珍事に説明を加えてしまっている私も大概です。

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