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バーガーキングの予定調和的な煽りが多くの人に刺さるようになったら面白いのにと思った話

ちょっと古い記事ですが、ツイッターのタイムラインに流れてきたバーガーキングの広告があまりにも衝撃的でした。

バーガーキングの比較広告

バーガーキングの標準サイズである「ワッパー」の後ろに、マクドナルドの「ビッグマック」を隠していたという種明かしがされたものです。ビッグと言いながら、バーガーキングのワッパーの大きさに及ばないという声明を込めたものです。

1年間という長い期間をかけて行う周到さに脱帽しました。これはイギリスのバーガーキングで行われた広告のようですが、日本では考えられないですね。

日本でもそういうことを出来ないものかと思っていたら、秋葉原のマクドナルド閉店に対するバーガーキングの店頭表示が話題になっていました。なるほど、だから上記の記事がタイムラインに流れてきたのですね。

表面上は文章で敬意を表しつつ、実際には勝利宣言です。

縦読みで「私たちの勝チ」と書いてあるのが最たるものです。レシート持参でサービスというのはマクドナルドの顧客はバーガーキングがいただくという宣言です。

何よりもいやらしいのが、お辞儀をしている男性の顔がはっきりと描かれていない点です。縦読みを知った後に見ると、勝ち誇って笑っている様子を想像してしまいます。

ここまで攻めた広告はなかなか見られません。

日本で比較広告は規制されているのか

日本でもイギリスのバーガーキングのような比較広告をもっと利用できるようになれば面白いのにと、私は思います。しかしこれは2つの点でなかなか難しいように感じてしまいます。ひとつは景品表示法を過剰に捉えられてしまっている点です。もうひとつは日本人の気質によるものです。

消費者庁のホームページには景品表示法の項目の中で比較広告に関するページがわざわざ作られていました。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/comparative_advertising/

景品表示法第5条は、自己の供給する商品・サービスの内容や取引条件について、競争事業者のものよりも、著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認される表示などを不当表示として規制していますが、競争事業者の商品・サービスとの比較そのものについて禁止し、制限するものではありません。

要するに嘘や誤魔化しで自社の商品をよく見せたら駄目ですよという内容です。

そもそも誤った情報を使ったら駄目なのは分かります。このページにかかれている例を見て思い出したのは、楽天市場での過剰な割引表示です。具体的な数字は忘れてしまいましたが、例えば50%オフと書いていながら正規の価格で販売されていた例です。商品に対する価格というのはある程度は均一になります。それを案に比較させていたから駄目なんですね。

これを読むと、イギリスのバーガーキングが行った広告は日本の法の範囲内ではあるようです。商品を等身大で比較しているので問題ありません。

その少なさから日本では比較広告が制限されていると思われがちですが、全くそんな事はありません。実際に「地域最安」といった表現は食品や家電などの量販店で使われているのを目にします。事実を正確に捉えた内容であれば問題ないようです。

比較広告は日本の文化では難しい

法的に問題なかったとしても、日本ではこの広告の手法はおそらく使えないかと思います。それは日本の文化と合わないからです。

日本人は秩序を乱すのを嫌う傾向があると思います。「日本人」という主語は大きすぎる表現になってしまいますが、そうでもない人もいるのは断ったうえで使います。

どんな非常時でも整然と列をなし、廃棄物を投棄せず、街を清潔に保ちます。良い面としてよく語られる点です。一方で秩序を重んじるが故に争いが苦手です。相手を蔑んだ表現は嫌われる傾向にあります。

ブーイング表現を受け入れられない日本人

相手を蔑んだ表現において顕著に感じるのは、スポーツを観戦しているときです。とりわけ顕著なのが「ブーイング」表現です。親指を下に向けて「Boooo!」というあれです。

例として私がよく見に行くバスケットボールチームに東京エクセレンスというチームがあります。バスケットボールでは相手のフリースローをブーイングで妨害する文化があります。Bリーグ参入当初は東京エクセレンスも場内放送でブーイングを煽っていました。しかしこれは定着しなかったようで、気がついたら相手のフリースローの際は自然発生的に「レッツゴー!エクセレンス!」のコールをするようになっていました。

私が長年見ているサッカーの試合でもそれは顕著です。あまりスポーツ観戦に馴染みのない人ほどブーイングを嫌うようです。ブーイングをしないのが美徳とされる風潮もあります。

2019年にラグビーが流行になったのも「ノーサイド精神」が日本人に深く刺さったという面があると思います。

相手を蔑んだ表現や態度に寛容であるかどうかという点が、西洋と日本の文化の決定的な違いの一つだと思います。

予定調和的な対立に寛容でありたい

バーガーキングの例に話を戻すと、ツイッター上ではバーガーキングを絶賛する声が多いように思いました。最大限の敬意を払っている点と、そもそもバーガーキングとマクドナルドはそのような関係にあるというお約束の構図があるからかと思います。

秩序を重んじる日本の文化はとても誇れるものだと思います。なので釣り合いを取るは非常に重要なのですが、「バーガーキングvsマクドナルド」のような予定調和的な比較広告はもっと使ってもいいような気がしています。

相手を尊重しながらどうやってマウントをとっていくかといった表現は非常に高度です。このような広告が増えれば、私たちはより知的な表現の中で生活することができます。

なかなか難しい気はしますが、今回の騒動を見て、改めてもう少し寛容になったら楽しいのにと思いました。正確な割合は分かりませんが、この手の煽りを受け入れられる人は増えてると思います。ということで、バーガーキングにはもっと頑張っていただきたく存じます。

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