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「野田クリスタルpresents ストリートファイター6 初心者すぎ大会」が神大会だった

「野田クリスタルpresents ストリートファイター6 初心者すぎ大会」が開催された。

お笑い芸人の野田クリスタルが主催の、完全初心者限定の『ストリートファイター6』の大会。

ただし主催者が選手のプレイングを見て「このプレイヤーは初心者ではない」と判定したら、その時点で失格にできる、というルール付き。

完全初心者でなくても参加可能だが、その場合は「初心者ではない判定」をされないように上手すぎないプレイで決勝を目指す、という制限を課せられることになる。これまでのゲーム大会には無かったバラエティ色の強い内容となっている。


まず「参加者は初心者でないことをバレないように対戦する」「プロの実況解説が初心者かどうかを判定する」という人狼的な構図がものすごくバカバカしくて良かった。

両者が初心者でない場合、『水曜日のダウンタウン』の「ダブル八百長対決」的な状況が生まれるハズなのだが、本物の初心者も混ざっているという人狼要素があることで、事実を正確に把握している人間が誰もいない、カオス度の高い状況が繰り広げられ続けた。まだ見たことのないような面白いものを作る、という野田クリスタルの芸人センスがあっての企画だろう。

初心者チェックのためにわざわざ8画面環境を用意するという周到さがバカバカしさに拍車をかけていた。あえて厳密にチェックするのが難しい多さにすることで、ちょうどいいゆるさが生まれていた。

配信環境のために電気を使いすぎて会場のブレーカーが落ちるというハプニングまで起き、「主催者が配信初心者すぎる」というツッコミどころまで生まれた。

そしてこの企画、ただバカバカしくて良いだけでなく、考えるほどに奇跡的なバランスで成り立っていることがわかる。

完全初心者大会なのでうっかりすると「初心者のプレイを笑う」という構図になりかねないところを、実況解説がプレイヤーの上手いところを探すという形にすることで回避している。

本当の初心者を失格判定にしてしまう可能性もあるが、むしろ「失格=プレイが上手すぎる」ということなので、嫌な気持ちになりにくい。

この大会ルールが普及しすぎると、初心者らしく見えるプレイングが周知されてしまい、いわゆる「メタ」が生まれ、初心者のふりをする「人狼」の判別が難しくなるだろう。だからこそ第一回ならではの生々しさ、ライブ感があった。

大会内容こそ突飛だが、「自分にも出場できるかも」と未プレイの人がスト6を買う動機になっており、真っ当に格ゲーの布教に役立っている点も素晴らしい。


解説のハイタニ氏は、スト6全キャラマスターランク到達のプレイヤーで、おそらく誰よりも初心者の判別に適した幅広い知識を持っている。

また最近は公式番組などの出演が多いため鳴りを潜めているが、元々ストリーマーとしては「ゴネる」「イチャモンをつける」という芸風が持ち味だった。

その持ち味が最大限に発揮され、次々に参加者を「初心者すぎない」判定していったのがまた面白かった。

「初心者のキーディスは滝」などの迷言や、「両選手が上手すぎて『いい試合でした』と実況解説が拍手をしながら両者失格」という、おそらくゲーム大会史上初のわけがわからない迷場面も生まれた。

試合後に「この大会のためにスト6をやりこんできたのかもしれない」と語ったのはあながちジョークでもなく、本当に最適解な人選だった。

ちなみに試合観戦中にキーディスプレイ(プレイヤーのボタン入力)がリアルタイムでチェック可能になったのは今作スト6からなので、スト6あっての本企画だったと言える。


そして最終試合は奇跡的なめぐり合わせにより、超連打プレイのリュウVS.ケンという旧主人公キャラ対決に。

試合を勝ち進むごとに目に見えてプレイングが上達してく成長の熱さと同時に、「ほんとにこの人達、初心者なのか……?」という疑念を誰もが心に抱くという謎の状況が生まれた。

両選手がオンラインルームの操作方法を全く理解しておらず、それが絶対確実ではないにせよ初心者の証明になっていたのがまた可笑しかった。

最終ラウンドでは、ガチャプレイゆえにどちらが最後のコンボを決められるか誰にもわからないという、世界大会の決勝でも見られないような異質な緊張感が生まれた。

もし仮に決勝戦が「初心者人狼」の組み合わせになり、「決勝は本気で戦ってください」と言って、試合が始まった瞬間に両者がゴリゴリの上級者の動きをし始めたら、それはそれで全く別のめちゃくちゃ面白い構図が生まれただろう。


企画の性質上難しいかもしれないが、ぜひ第二回大会を見たい。個人的には年越し企画などで毎年やって欲しいくらい。久々に呼吸が苦しくなるほど笑った。


主にVTuberのことを書くために立ち上げたこのnoteだったのだけれど、もうVTuberに限らず、動画配信全般のことを書いてもいいんじゃないか、と常々思っていた。

そんなところにやってきた、おそらく今年一番笑った配信だったので、この機会に書いてみることにした。そのくらい良い配信だった。

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