焦燥

焦燥感だけが、日々刻々と募っていく。
ふと気がついたのは、自分がもう15の娘じゃないってこと、21歳は立派な大人だということ。

片隅でそっと浸かっている生ぬるいプールには人が押し寄せ、誰もが辛い顔をしながらその汚い水をすすって笑いあっている。
ハエの死骸の浮いたその水で口をゆすいで、どこか遠いところに行きたいと願う。

町中でみかけた白い丸々と肥えたオバサンの柔らかそうな肌に触れてみたい衝動に駆られて一歩踏み出した、こちらに見向きもしないで顔を扇ぎ続ける彼女を見てはっとした。
そんな汚いことをしようとした自分が怖くなって駆け足で逃げだした。

意味もなく町中を歩く。無性に喉が渇いて仕方がなかった。
全く関係のないこの町で、あの村の匂いがする。一度それに気が付いてしまったら脳が勝手に思い出させてくる。

夏。眼下に広がる緑、どこまでも青い天井、ただ吹き抜けていく風、なんの根拠もなく晴れ晴れとした気分で汗を流し続けていたあの時の自分。

秋。ひたすらあなたのために祈ったこと、なにかの燃える匂い、北上する夜行バスと眠れない音楽。

扇風機をまわして。泥水を涙で薄めて。

気持ちだけ急いていてもなにもできないまま、なにもわからないまま怖いことを忘れられないまま眠る。

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