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電話帳


家族、職場、大切な人…
万が一があったとき、緊急連絡先になりうる人とその情報を登録しておくものだ。


普段は気にならないけれど、ときおり脳裏によぎっては複雑な気持ちになる。

恋人のスマホの電話帳には私の情報がない。

別に、私が言ったからって登録してほしいわけでもない。
そうしてわがままを言って登録してもらうことに価値を感じないから。
これは、ただの私のひとりごと。

どうしてこれを気にしているのか、理由はもちろんある。
1. 元恋人の情報は別れて数年が経過する今も消されず残っているということ。
2. 以前に1度だけ「私の情報は登録しないの?」と聞いてみたところ、「面倒くさい」と返答されたということ。

元恋人には割けたその労力を、私には面倒くさいで一蹴するとはなにごとか。
せめてこれが、同棲中でもなんでもない時期に起これば私だって行動しやすかったのに。
もっというなら、遠距離恋愛中がよかった。

不思議なことに恋人は私と結婚するつもりらしい。
いったい何を考えているのか。
何も考えていないのか。
緊急連絡先にするのを躊躇うような相手と結婚なんてするもんじゃないよ、と優しく諭してあげたい。
きっと子犬のように泣きそうな顔をするだろう。


仮に万が一があったとして、結婚もしていない今、私に連絡が来ることはきっとない。
けれどもどうしても、あの画面を思い出す度、いつかあの電話帳に私の名前が追加されないだろうかと現実に起こりそうもない空想を止めることができないでいる。


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