見出し画像

INGRESS 引き続きキネカプの謎に挑み続ける男の一日~自転車編~

■ご挨拶

皆さんこんにちは、お久しぶりです。お世話になっております。
INGRESSでは大阪エリアを中心に日本全国どこにでも現れるENLエージェント kizokuchan でございます。

前回初投稿の記事にて、INGRESSにおけるキネティックカプセルの挙動を確認すべく、大阪のチンチン電車こと阪堺電車に色々条件を変えながら乗車、およびその路線に並行して約14kmを歩き通すことで様々なデータを取り、ある程度はカプセルの挙動に関する確信や次の検証へ向けた指針を得ることが出来ました。

前回のおさらいになりますが、おおよそ以下のことが分かっています。
・距離の加算は約5分ごと、速度上限は約10km/h
・5分ごとの判定ではなく、あいだあいだで細かく速度や移動距離は判定されており、有効な移動分の距離だけがカウントされる

阪堺電車を使った検証では、洒落臭い小細工を重ねるよりも真面目に堅実に歩き続けた方が効率よく距離を稼げるという人生の縮図のような結果が得られました。そして同時に「徒歩はせいぜい4~5km/hなんだから、自転車を使って上限10km/hギリギリで走り続ければ効率が上がるんじゃないか」という新しい仮説を立てました。法律スレスレのところを走り続けて他社を出し抜き自社企業を成長させる経営者みたいな考え方ですね。安全マージンの無い計画というのはちょっとしたイレギュラーが致命傷になり大変危険なものです。しかし安全マージンをどこまで削り、理想のラインに近づけるかというテーマは大変に魅力があり、抗い難いのも事実です。
御託はこの辺りにして、今回は「本当に自転車で走れば効率が良いのか」ということに重心を置きながら実証計画の検討と実行、そしてその結果について書き連ねていきたいと思います。よろしくお願いします。


■徒歩、それは、君が見た光

画像1

前回、阪堺電車に並行して14㎞ほど歩いた際にカプセルの距離が増えるタイミングを逐次記録しました。その結果、キッチリではないもののおよそ5分ごとの加算だということが確認できました。
標準的な人の歩行速度は分速にして約70~80mですから、5分間で350~400m程度進むことになります。データで確認すると5分ごとの移動加算距離は、一部の例外を除きおよそ200~400mに集中していることが分かります。途中で何も障害が無かった場合は上手くいけば400m、途中信号などで停止する時間があった場合は200~300mの加算がなされた、という推測が成り立ちます。
このパターンで行けば、徒歩の場合5分ごとの距離加算を1セットと考えると、上手くいけば400m×5セットで2㎞カプセルが完成、安全を取るなら300~400mの加算を6セット繰り返して完成させることができる。つまり25分~30分で2㎞カプセルが一つ完成する。一般的な速度での徒歩ならこのパターンが限界に近い効率だと思います。

しかし、我々はさらに便利な道具があることを知っています。それは人間が素早く移動する為に使用する最も簡単な手段の一つです。

上記の二文はわざと中学英語のストレート和訳みたいに書いてみました。これはサンドイッチですか? いいえ、救急車です。


■自転車だァァァ(ドコドコドコドコ)

そういうわけで、自転車を使った検証をどう行うかの検討に入ります。なおこの検討は前日の9/25土曜日に阪堺電車の検証を終えた後、大阪では夜半からかなり強めの雨が降り始め翌日午前中まで尾を引いたため、自宅の布団の中で寝転がって天井を見つめながら思索したものになります。

繰り返しになりますが、キネティックカプセルの速度上限はおそらく10km/h程度ということが分かっています。10km/hで5分間に進める距離は約833mです。厳密に正確無比に10km/h巡行をずっとキープできれば、800m×3セットをこなすことができた時点で2㎞のカプセルは完成します。なんなら3セット目には少し余裕すら出てきます。しかし人間が自転車で10km/hを完全にキープしながら5分間走行し続けるというのは、かなり難しいことのように思えます。速度が下がると移動距離が短くなりますし、うっかり11㎞/hを超えるとその間の移動分はノーカンになるリスクがあります。ギリギリでいつも生きていたいのは歌の中だけにしておいて、現実ではもう少し有効な策を考えなければいけません。
では9㎞/hならばどうか、速度が10km/hの90%ですので進む距離も90%になります。833mの90%ですから5分間で約750m進めます。8㎞/hならばどうか、833mの80%ですから666mです。750mの3セットなら2㎞を超えますが、666mの3セットだと2㎞に達するのは難しいということになります。

以上の計算結果から、次のようなことが導かれます。
・自転車に乗って9~10km/hをキープしながら5分間に700m以上を走行し、それを3回繰り返すことで、15分で2㎞のカプセルを完成できる可能性がある

まあ、700m×3なら9㎞/h巡行で行けますしトータル2100mですから、かなり手堅く行けるんではないかと踏んだわけです。くどくど書いていますが自転車で移動しながらINGRESSを行う行為は「チャリグレス」として広く知られており、今回のイベント期間中に実践された方もかなりいらっしゃるのではないかと思います。そしてかなり早い段階で「700の3セットで2㎞行けるな」という最大効率予想に辿り着いた方は少なくないでしょう。
しかしやはり男子というのは面倒くさいもので、ある仕組みが決まった法則に従って動いているということが既に知られていたとしても、自分で調べてみて確認しなければ納得できないという性分を持っているものです。ガキの頃、プラレールの先頭車を「これどういう原理で走るんだろう」とドライバー片手に分解し、スイッチやらモーターやらギアやら何処をどう通って回転や信号が伝えられているか完全に理解してご満悦になった後、二度と元に戻せなくなったことがあります。
あの時はごめんな、EF65。


■検証方法について

自転車で走って距離の伸びを確認するということは決めました。そうなると、走行に適したコースを選定し、その場所での走行経路や走行方法、記録方法などをあらかじめ決めておく必要があります。まずはそれらを検討することにします。もし朝から雨が降っていなければ前日に歩き通した阪堺電車ルートをレンタサイクルなどでトレースしてみるつもりでしたが、あいにくの天気のため別の方策を探ります。
日曜日も既に正午を回り、天気も小康状態になったのもあって小腹がすいていたことを思い出し、身支度を整えて私が向かったのは自宅最寄り駅の近くにあるコメダ珈琲でした。
ひとまず腹ごしらえをし、コーヒーを飲みながら検証に必要な条件を書き出してみます。以下箇条書きにします。本当にここのグラタンは美味いな。

•ほぼ直線で平坦な700m以上のルートが確保できること
•コース上に距離の目安となるものが複数存在していること
•コース上に交通信号、交差点など不確定要素で停止を余儀なくされる障害がないこと
•自転車での走行およびUターンが安全かつ容易に行えること
•キャリアの電波が安定して入り、GPS位置ズレ等のリスクが少ない場所であること

これらを満たす経路を、マップをぼんやり眺めながら探します。
前日全ての行程を終え、喫茶店でデータの整理をしていた時に自転車の話題が出ました。その際、友人エージェントが「サイクリングコースなんかが良いんじゃないか」というアイデアを出してくれました。そのことを思い出しながら更に地図を眺めていると・・・

画像2


見つけました。
なにわ自転車道」といいます。大阪市とその北側にある吹田市の境界は「神崎川」という川がメインになっています。その両岸の河川敷がサイクリングロードになっており、大阪市内を流れる淀川河川敷のコースと合わせてなにわ自転車道の名前が付けられています。河川敷であるためアップダウンが殆どなく、直線区間も切り取りやすくなっています。信号は皆無でノンストップ走行が可能、周囲には目立った遮蔽物が無いため、マルチパスによるGPS位置のブレなどは起きにくいと考えられます。更にこのコースには大きなメリットがあるのですが、それは現地到着時の説明にて後述します。

続いて、移動手段の自転車を調達します。これについては「HELLO CYCLING」を利用します。関東圏と関西圏を中心に展開されているシェアサイクルサービスで、自転車が設置されている無人のステーションに行って自転車を借り、駐車台数に空きのあるステーションならどこに返しても良いという使い勝手のいいレンタサイクルサービスです。しかも借りられるのが電動アシスト自転車で、料金は私の住む地域では¥70/15分、12時間までなら¥1,000で頭打ちというお手ごろな価格です。似たようなサービスはdocomoをはじめとして複数業者や自治体が全国各地の都市で展開していますので、遠征時や長丁場のミッション攻略等、ロングランが必要になる場合は事前にサービスの有無を確認しておくと大いに役立つ場面はあると思います。

最近ではコロナ禍の影響もあってか、電車での通勤を避ける目的でこうしたシェアサイクルの利用が注目されています。私も天気がいい日は自宅近くのステーションから勤務先近くのステーションまで利用することもあります。が、基本的に朝夕で利用者の利用方向が一様になることが多く、取り合いになっている現状があります。基本的に朝は郊外のステーションの自転車はあっという間になくなり、逆に都心部のステーションは返却された自転車で埋まってしまい返却が出来なくなり、泣く泣く一つか二つ離れたステーションに返却することもあります。また電動アシストタイプのため、業者がこまめにバッテリーをフル充電のものに交換して回っているのですが、そのケアも追いつかず、夕方や週末になると残量が10%を切っていたり0の車両ばかりになることもあります。この辺りは利用者のニーズや利用経路のビッグデータを反映して改善される余地のある点であり、各業者の頑張りどころだと思います。

HELLO CYCLINGには専用アプリが提供されており、現在地の地図からステーションの位置や空き台数の状況、各自転車の大まかな電池残量を確認でき、特定の車両を予約して30分を上限に押さえておくことも可能になっています。ステーションは駅に近い駐輪場の一角やコンビニの敷地内、公共施設の駐輪場やビジネスホテルの隅っこなど、様々な場所に設置されています。こういうサービスはステーション同士のネットワークの密度が命ですから、提供側もステーションの箇所を増やそうと頑張ってくれています。
今回テストコースに選んだなにわ自転車道の近くにもステーションがあり、日曜日であるにも関わらず電池残量がそこそこある空き車両を見つけられたので予約をしました。予約時に決済方法を選択し、30分以内にステーションへ行ってアプリで提示された手順に従い、自転車のロック解除をして利用開始となります。

電動アシスト自転車にはもう一つメリットがあり、大体の車両はハンドル左側に各種スイッチが搭載されているのですが、ここで表示切替を行うと走行スピードを確認することが出来ます。その他は電池残量と残り走行可能距離が切替を行うごとに順番に表示されます。いつもなら大抵は電池残量を表示して走るのですが、今回はこのスピードメーターがキモになります。サイコンのように精密な速度は計測していないと思いますが、ある程度の目安にはなると思います。

画像3

少し開始時間は遅くなりましたが、店の中から往来を眺めて通行人が傘をさしていないことを確認し、外に出て予約したステーションに向かいます。自転車のレンタル手続きを行ってロックを解除し、なにわ自転車道へ向かいました。到着したのは夕方の16時半を少し回ったころでした。


■現地到着

画像4

さて、河川敷のサイクリングロードでほぼ直線の700m以上のコースが確保された、なにわ自転車道にやってまいりました。
まずはコースの下見を行います。ただ700m強の距離を行ったり来たりすると言っても、何か目印になるものがなければ判断がつきにくく曖昧な距離を往復することになってしまいます。
サイクリングロードには写真のようにキロポスト的なオブジェがあり、これが目印として活用できます。しかも上記の写真下部中央の案内板をよ~く見てください。かなり汚れているんですがしっかりと書いてあるんですよ。
700m 十八条大橋→」という表記が。

画像5

もう一度先ほどの地図を見ていただきたいと思います。「十八条大橋」というのは、上記地図の画像中央付近を南北に縦断している大きな道が神崎川を渡っている部分の橋の事です。ここは大阪市と吹田市の境界にもなっています。厳密には川を渡って北側の土地は一部だけ大阪市になっており、この橋の周辺だけは市境は川の真ん中ではなく渡った先の陸地の途中にあります。
この大きな通りは国道423号線で、別名「新御堂筋」と呼ばれています。
大阪市北区の各ランプから北上し新大阪駅の真横を通り、神崎川を渡って吹田市に入り、複雑に入り組んだ吹田市と豊中市の市境をさらに北上して箕面市まで至る立派な道路です。その交通量は西日本一ともいわれています。1970年の大阪万博に合わせて開通し、今では大阪北部の大動脈となっています。上り線と下り線の道路の間には大阪メトロ御堂筋線が走っています。大阪に住まう人間にとっては当たり前の光景なのですが、地下鉄と呼ばれるものが高架道路の真ん中を走っているさまは他地域からお越しの方からすると驚きだそうです。

十八条大橋の「十八条」はこの橋が架かっている神崎川のすぐ南にある地名から取られています。条と名の付く地名ですと京都の条里制が有名ですが、こちらの地名も同様に条里制に拠った名称だそうです。難読地名でよく出る「十三(じゅうそう)」は、この条里制に拠った十三条に相当するという説と、淀川の上流から数えて十三番目の渡し場だった、という説が存在します。USJにほど近い「九条」は条里制から来た地名ではなく、江戸時代に淀川の河川改修をする際「衢(みち)を壊す」という意味の衢壊(くじょう)が由来である説と、学者の林羅山が「衢:ちまた、賑やか、壌:土地」という意味で「衢壌(くじょう)と名付けた説、洪水の際に京都から九条家の笏(しゃく)が流れ着いたので九条になった、という説など複数あるようです。冷泉家や土御門家の笏が流れ着かなくて本当に良かったと思います。
こういう時には「諸説あり」という便利な言葉があります。NHKのチコちゃんは他人が答えられないとすぐ怒るくせに自分たちの解説動画ではガンガン諸説ありを使っていますので、我々も確信が持てない時は軽率に多用していきましょう。

また、こういった風にINGRESSに絡めて郷土や遠征先の歴史、地名の由来、文化、自然、美味しい食べ物などに触れてみるのも一つのプレイスタイルです。こうやってついでに得た知識やグルメや絶景等の記憶は自分の脳みそと心と胃袋を豊かにしてくれます。この辺りはINGRESSやポケモンGOを提供しているNianticがゲームを通して推奨している「外を歩いて、家の近くや遠くで新しい発見をする」という方針にも合致しています。はやいとこ大手を振って大胆な遠征や旅行が出来る日が戻ってくることを祈るばかりです。

話が脱線しそうなので本筋に戻しましょう。
案内板の表記を信じるなら、このスタート地点である「なにわ自転車道95」のポストから、「十八条大橋」まではおよそ700mということになります。しかし今回の検証、看板上の「およそ」では困るんです。往々にしてこういった案内板の距離は良い感じに丸めた数字が使われていることが多く、正確性に欠けます。しかも十八条大橋そのものについても、ちょうど川の前後の構造が片側につき本線2車線+合流路、それが上り下りで2倍、さらに中央には複線の鉄道・・・となかなかの幅員を誇ります。スタート地点から橋の真下まで来たものの、実は600m程度しかありませんでした・・・ということになると計画が頓挫します。十八条大橋のどの辺りまで行けばスタート地点から700m以上走ったことになるのか知っておく必要があります。

この辺りまでお読みいただいて、勘のいいエージェント諸氏は気づいたかもしれません。一回言ってみたかったんですよね「カンのいい読者ならお気づきだろう」って。
ここで皆様に質問です。スタート地点の「なにわ自転車道95」と書かれたポストを見たとき、INGRESSに思考が染まり切った筋金入りのエージェントは何を思うでしょうか。
そうですね、「これポータルになってないかな/ならないかな」ですよね。
幸いにしてなにわ自転車道上にあるほとんどの距離ポストはポータルとして成立しており、その他に案内板やちょっとしたオブジェがマメにポータル化しています。地道にポータルを申請し生やしてくれた先人たちには感謝しかないですね。

ではもう一つお尋ねします。「スタート地点や途中のオブジェがポータルになっている場合、どういったメリットがあるか」です。
「通りすがりにハックできる!」「敵のポータルだったら焼いて取り返す!」「向こう岸までリンク張ってやる!」はい、血気盛んな皆さんの回答は良く理解できました。私も通常なら迷いなくそう答えます。しかし今回一番大事なことは検証の中で「片道700m以上を確保すること」です。
ポータルをハックすると、一定の確率で「ポータルキー」が手に入ります。ポータルキーを持っていればリンク(離れたポータル同士を結ぶライン)を張ったり、遠隔でリチャージ(そのポータルの防衛用HPみたいなものを回復する)ができたりします。そしてもう一つ、「現在地からそのポータルへの直線距離が確認できる」のです。

画像5


通常、INGRESSを開いていて直接距離が確認できるのはどう頑張っても自分の位置から500m先くらいまでのポータルが限度です。しかしポータルキーがあれば理論上は地球の裏側にあるポータルでも現在地からの距離が確認できます。
スタート地点の「なにわ自転車道95」というポータルの近くには「なにわ自転車道案内板」という名前のポータルもあります。これらのポータルをハックしてキーを取得します。更に十八条大橋へ移動する途中にある「なにわ自転車道96」および「97」「98」のキーもハックして取得します。
十八条大橋自体はポータル化していないため、とりあえず橋の麓に丁度良く広めのスペースがあり、分かりやすい地点があったのでそこを待機及びUターン地点として設定します。以降、この検証内では「折り返しポイント」と呼称することにします。
橋の下のさらに先の方では2家族くらいの大所帯がBBQをやっていました。子供がしきりにサイクリングロードを横切って走り回っているのが見えたので、近づかないようにします。
大きめの橋の下でBBQをやっている光景は最近よく見かけます。おそらく雨風しのげるからでしょう。一瞬「このご時世に何をやっているんだ」ということを思いましたが、向こうの家族が今私のやろうとしていることの内容を知ったとしたら「このご時世とか関係なく一体何をやっているんだ」と思う事でしょうからお互い干渉しない方が幸せです。

画像15

上図は十八条大橋付近のポータル位置を示したものです。今回は神崎川の左岸、すなわちこの地図で見て川の南側にある河川敷を走ります。十八条大橋南側の少し右にポータルがあると思います。これが「なにわ自転車道98」です。他4点も含め、今回目安にするポータルを赤丸で囲みました。とりあえず待機及びUターン用として設定した折り返しポイント地点からスタート地点へ向かって近い順に「なにわ自転車道98」「97」「96」「95」「なにわ自転車道案内板」の5つのポータルが河川敷のサイクリングロードに沿ってほぼ一直線に並んでいることが分かると思います。折り返しポイントから各ポータルキーを参照して距離を確認します。その結果以下のような距離関係になっていることが分かりました。

画像8


画像9

折り返しポイントから〜
〜なにわ自転車道98:115m
〜なにわ自転車道97:310m
〜なにわ自転車道96:509m
〜なにわ自転車道95:700m
〜なにわ自転車道案内:805m

この位置関係ならば、十八条大橋の折り返しポイント~95、もしくは折り返しポイント~案内板が往復に適した区間として設定できそうです。700mきっかりというのは移動経路や微妙な位置ブレで700mを切る可能性がありますので、95と案内板の間に改めてスタート地点を設定すると都合が良くなります。ちょうど、川沿いの道路からこのサイクリングロードへ降りてくるスロープの降り切った地点がこの区間にありますので、そこをスタート地点とします。この750mくらいの区間をメインとして往復走行を繰り返すことにします。
区間の設定が出来ましたので、いよいよ実走行に入ります。


■走る走る 俺だけ

さて、スタート地点から折り返し地点をひたすら往復する実走を始めます。ただし、がむしゃらに往復しても効率を求めることはできませんので、もう少し下準備をします。
具体的には、「約5分の距離加算インターバルの間に、750mを移動して距離の加算を確認する」という行為の繰り返しになりますので、距離の加算タイミングがスタート地点か折り返し地点で行われるのが理想的です。従って、スタート地点を少しうろうろしながら距離の加算タイミングを待ち、その時点からのスタートとします。
スタート地点から走り出したら、なるべく9〜10km/hを維持して750m先の折り返し地点へ向かいます。走行中スキャナは開きっぱなしにしておきます。折り返し地点に到着したらカプセルの距離を確認し、距離が加算されるまでその場で待機します。距離が加算されたら実走行距離と増えた時刻、増えた距離を素早く記録し、折り返し走行を開始します。距離が加算された時点で次の5分間が始まっているので時間ロスを少なくするため、絶え間なく2点間を移動することになります。
記録の仕方ですが、なるべく簡略化するため以下のように記します
15時04分 700m走って600m距離が増えた場合→1504 07 06

実際に走行を開始したのは16時47分、カプセル距離は0.4kmでした。
走ってみるとわかるのですが、10km/hという速度は本当に絶妙な数字です。電動アシスト自転車は基本的に漕ぎ出しとか、速度低下時、坂道など漕ぐ力が必要な時に電動モーターで力添えをしてくれるものです。文字通り電動“アシスト”なのですが、ちょっといい感じに漕ぐとあっという間に13〜15km/h出てしまいます。一般的な電動アシストにはアシストパワーの設定が3段階あり、普通は「エコ」「ノーマル」「パワー」のような名称になっています。当然設定によってバッテリー消費速度が変わりますので、走行可能距離も1.5倍くらいの開きが出ます。今回は一番穏やかなエコモードで走行しますが、それでも油断すると10km/hを軽く超えてしまいます。

箱根駅伝などで見かける先導の白バイは精鋭の中の精鋭が担当し、後方のランナーを絶えず確認しながら常に一定の距離を保って低速で走行します。ベテランの電車運転士は今自分の運転している車両がおよそ時速何kmなのか体感でわかっており、その日の天候や車両のクセに応じて適切にブレーキをかけ、駅の所定位置に停止させます。この道40年以上の老舗の天麩羅屋の大将は、自分の指を高温の油に突っ込んで温度を測り、揚げるのに最適な具合になっているか確認するそうです。
私はというと、彼らほどの社会的義務感や熟練度はなんら持ち合わせていないのですが、ただ己の「知りたい」という単純な気持ちに従って、電動アシスト自転車の速度計と車両前方や周囲をせわしなく確認しながら9〜10km/hをキープしつつ、時には散歩中の老人を追い抜き、時には早めのジョギングをする集団に抜かれながら河川敷のサイクリングコースをひたすらお百度のように往復しています。
河川敷の利用者といえば人間の散歩か犬の散歩、それにジョギング目的がほとんどですから、中には一定の区間を行ったり来たりしながら走っている人もいるわけで、そんな人と私の自転車往復のコースが一部被ってしまう事態もあるわけで、それはもう阪堺電車の運転士さんとは比にならないほど何度も何度も同じ顔とすれ違ったり追い抜いたりすることになるわけです。ジョギングをしている人とすれ違うたびに、「また会ったな、こいつ何のためにおんなじ所を何度も何度も行ったり来たりしてるんだろう」という顔で見られている気がしてきます。そこは「お互い様だろう、お前こそ何のためにおんなじ所を何度も何度も行ったり来たりしてるんだよ」と返したい所なのですが、何のためにかというとそれはどう考えてもジョギングのためですし、こちらの「何のために」を説明すると非常にややこしくなります。もしポリスメンに何度も何度も同じ場所を往復している理由を尋ねられたら「ただの気象実験だ」と答えるのが良いでしょう。ともかく大人しく無心で往復を繰り返します。

繰り返し往復走行し、加算された距離を記録していくうちに、いくつか異なる条件での走行結果も欲しくなり途中で実行しています。条件と結果については後述します。
そしてこれは実験とは直接関係のないことなのですが、何度も同じ経路を同じようなスピードを心がけながら往復しているうちに、自然ときっちり10km/hがキープできるようになってきたんですね。しかも速度計を見た時に「今は10km/hの上の方」とか「今は10km/hの下の方だからこのまま惰性で流すと9km/hに落ちてしまう」とかが体感でわかるようになってきたんですよね。そして実際にその体感と結果がビックリするくらい一致しているんですよ。しまいには「今このススキの横を通ったからスタートから大体1分」とかペース配分を考えだす始末で・・・人間の慣れというのは恐ろしいものです。

■約2時間の後に

17時前から計測を開始し、途中小雨にも降られ、すっかり辺りも暗くなった18時55分。そこそこ満足のいくデータが取れたと判断し計測を終了します。
計測中に取ったメモはこんな感じです。

画像10


なかなかに分かりづらいでしょうから今回もきれいな表にまとめ直しました。
まずはそちらを見ていただいてから所見を述べていきます。

画像11

まず、700m強を往復し続けてデータを眺めてみると真っ先にわかることが、「安定してカプセル距離0.7kmを稼ぐことは難しい」ということです。これには位置誤差や計測距離の誤差、さらには私が10km/hをオーバーして走行してしまっていった可能性、さらには自転車の速度計の誤差など様々な要因が絡みます。稀に0.7や0.8kmが出ることがありますが、その直後に加算される距離が減っていることから何らかの理由で過剰に増えた距離のツケを払っているものと考えられます。もっと自転車の走行に熟練すればコンスタントに0.7㎞を出し続けられるのかもしれませんが、走行中かなり神経を使いますし、少しイレギュラーが割り込むと未達になりますので、注ぎ込んだ労力に見合うリターンとしてはいささか安いと感じてしまいました。

ここからは個別の事象について説明していきます。
17時8分からの3ターンで1.9kmになりましたので、もしやと思いその場で5分待ってみたところ、次のターンでカプセルが完成しました。
その際に気になったことですが、1.9kmであるにもかかわらずカプセルの距離ゲージが満タンになっているように見える現象が確認できたことです。下のスクショはその際の画像です。

画像12

見るとわかるのですが、ゲージは満タンなように見えます。参考に、1.8kmの時と2.0kmの時の画像も添付して比較します。

1.8km時↓

画像13


なんとなく「あと0.2kmありそうだな」というゲージ具合ですよね。

続いて2.0km時の画像です↓

画像14

言わずもがな「満タンですよね」という感じのゲージです。1.9kmであればこの2枚の画像の中間ぐらいのゲージ具合になるはずですが、現実はほぼ満タンのまま1.9で止まっており、その場で5分ほど待つと完成しました。ここが表の※1、※2に相当します。
この時点で私は「3回で2kmカプセルの完成はできず、内部的には2kmたまっているが1.9kmで待たされるパターンがあるのでは」という仮説を立てました。しかしこの後3回で完成する事例も確認でき、謎は深まることになります。

ちなみに後日、慎重に歩きながら1.9kmになるよう調整したカプセルの画像がこちらです。

画像15

これがいわゆる「普通の1.9km」の状態なのだと思います。この場合では現地で5分ほど待機してもカプセルが完成する気配はありませんでした。少なくとも、なんらかの処理の違いがあることは間違いなさそうです。

表の説明に戻ります。17時48分、※3「20km/hで走行してみる」を実行します。
これは単純にひと区間を20km/hで走行してみるというもので、10km/hがボーダーなら距離が加算されないはずだという再確認になっています。案の定、加算距離が0.1kmであったため、走り出しと減速時などの僅かな距離が加算されたものと推測します。

続いて、※4「300mくらいを20km/h、残り400mを10km/hで走行」です。
これについても結果の表の通り、0.1kmしか加算されませんでした。そうすると※3の条件と加算距離は変わらないのですが、直後の※5「通常の10km/h巡行に戻す」で0.8㎞増えており、前回10km/hで走行した分が少し乗っかった可能性もあると考えられます。

次の※6は、カプセル距離が1.4kmに増えた時点でiPadをホーム画面にしてINGRESSをバックグラウンド動作状態にし、そのまま700mほど走行してスタート地点直前で再びINGRESSを呼び出してアクティブにしたらどうなるか。という検証です。結果では見事カプセルは2.0㎞になり完成しましたので0.6㎞以上の距離が加算されたことになります。
ではこちらはどうかと※7では走り出す前にタスクキルしてINGRESSを完全に落とし、中間地点付近で再度INGRESSを立ち上げて折り返し地点まで移動し加算時刻付近まで待機してみました。結果距離は増えず、5分×2セット待ってみても増えなかったので復路を開始したところ、走り出して約1分後に0.1㎞だけ増えました。
以上のことから、「裏落ちしていなければ、バックグラウンドでも速度および距離の判定はされている」ということが分かりました。またこれはさらなる検証が必要かと思いますが、「距離の加算タイミングではINGRESSがバックグラウンド動作ではなくアクティブになっていること」が必要かもしれません。

18時40分、カプセル距離が1.7㎞になったので※8「スタート地点から330mほど進んでまたスタート地点に戻る」パターンをやってみました。約5分間の判定スパンで、開始位置と終了位置しか拾っていなければ移動距離の加算はゼロに近しい値となるはずです。結果は見事2.0㎞になりカプセルが完成しましたので、300m以上の移動は判定されていることになり、「5分間の移動の中で、ある程度細かく速度や移動距離は拾っている」ことが実証できました。

最後の3ターンはカプセル距離が0.0→0.5→1.1→2.0と増えました。つまり各ターンの増加距離は0.5、0.6、0.9となります。当初の予想を覆す3ターンでの2㎞カプセル完成ですが、最後の3ターン目の増加距離が多めになっており、以下の2通りの可能性が考えられます。
①1ターン目もしくは2ターン目、あるいはその両方の実移動距離が0.7㎞以上であることから、その不足分が3ターン目に乗っかり0.9㎞加算された
②1ターン目と2ターン目の加算距離は順当、3ターン目で実際は7~800mしか移動していないものの、0.9kmと多めに加算されたので、この次の移動分は少なめに加算される

いずれにせよ「3ターンで2㎞カプセルが完成せず、次ターン不動で完成したケース」「3ターンで2㎞カプセルは完成したが、各ターンの距離の伸び方が怪しいケース」を体験することができたというわけです。


参考までに実移動距離とカプセル増加距離の比較グラフも載せておきます。途中高速で移動してみたりその場待機してみたりしたので純粋な比較にはなっていませんが、今回の条件では「移動中にカプセルが2㎞に到達しその後の移動分が無駄になる」ことが徹底的に避けられるため、なかなかの実入りとなっています。

もう少し踏み込んだ条件で走行を繰り返して検証を続けたかったのですが、陽もすっかり落ちてしまい周囲に街灯も少ないため、この状況で自転車往復を繰り返すといよいよもってマジモンの不審者になる可能性があり、ここまでの検証としました。
あとママチャリに毛が生えたようなレンタサイクルで2時間強17~8kmの移動をしたことでお尻の方がかなり筋肉痛のようなヤバいことになっており、自転車をステーションに返して久しぶりに二本の足で歩き始めたときは、股関節から内股~膝辺りまでの感覚が変になってしまい、足がほぐれるまで随分とひょうきんな歩き方で駅まで向かうことになりました。


■あとがき、そして

といったわけでスタートはだいぶ遅かったものの、2時間にわたる自転車による検証を終えた私は、キネティックカプセルに関する新たな知見を得られたと大喜びで帰宅したのでした。イベント終了日1日前にして、カプセルの完成数は既にノルマを大きく超えた75個になっていました。検証中はカプセルが完成したらとりあえず次のレシピをぶち込むことだけ考えていましたので、ひたすらJARVIS(青ポータルを緑ポータルに反転するレアアイテム)を投入しADA(緑→青に反転するアイテム、JARVISの逆)を生成、もしくはハイパーキューブ(XM最大量の4倍を一時的にチャージできるアイテム)を生成していた結果、アイテムのバランスがえらいことになってしまいました。コンビニの誤発注なら即首が飛ぶレベルです。

今回の検証でわかったことを簡単にまとめておきます。

・自転車は10km/h以下の走行なら徒歩よりも効率が良い。ただし速度オーバーや誤差発生のリスクがあり、一定のペースで距離を延ばすのは難しい。
・2㎞カプセルの場合、3ターン1.9㎞で止まる現象が確認された。3ターンで2㎞に到達する場合もあり不確定要素となる。
・2時間も同じ箇所を自転車で行ったり来たりすると頭がおかしくなるし、下半身が一時的に死ぬ。
・ラブラドールレトリバーは可愛い。

いかがでしたでしょうか。
前回から路面電車、徒歩、自転車と手を変え品を変えカプセルの距離加算について検証を行ってまいりました。そもそもが「およそ10㎞/h以下でないと移動が有効にならない」というかなり厳しめの条件が最初から付いて回ったので、手段としては非常に限られることは分かっていました。ここまでくると本当にシニアカ―ってどうなのよという気持ちが湧いてきたのもなかば冗談ではありません。

家に帰り入念に全身をストレッチでほぐし、晩飯をとって風呂に浸かりながらデータを眺めていた私は、他に何かできることはないかと思索を張り巡らせていました。
元々「可能な限り楽をしたい」というよこしまな気持ちから始まった一連の検証。思い起こしてみれば一日に20㎞以上歩いたり、自転車で2時間以上罰ゲームのような人力クルーズコントロールをやってみたり。楽をしようとしてとんでもない苦労を重ねてきています。
しかし、「10㎞/h以下」という厳然たる条件が選択の幅を狭めてきます。世の中に10km/h以下で安定して走行する乗り物はそうそう無いのです。

もうこれ以上出来ることはそんなに無いかな・・・そう思いながら湯船を出た私。髪でも洗おうと桶に手を伸ばした瞬間、目に飛び込んだ映像に脳が揺さぶられます。
それは何の変哲もない風呂桶。目に入ったのはその縁取り。円い。真円に近いと言っていい。円だ。まるい。まる、マル、ゼロ、ぜろ、0・・・

「・・・実移動0、ってのはどうだ・・・?」


今回、「約5分間の移動中、その始点と終点だけでなく途中で細かく速度と移動分は判定されている」ということは確認しました。そして極端な話、5分間で低速を守りながらスタート地点からある程度進み、またそこから同じ経路でスタート地点に戻ってきても距離は加算されることが分かりました。

少し時を戻して阪堺電車の検証の時、1往復を終えた私は天王寺駅前のコメダで昼食をとりました。また2往復目で途中から友人の応援付きで歩いて戻ってきた際も、一息つくためにこれまたコメダに入りました。
断っておきますが私はコメダ珈琲さんから一銭も貰っていません。むしろお金を落としているのは私の方です。コーヒーについてくる豆菓子はレジにて一袋10円で購入して持ち帰ることが出来ます。これがまた酒に合うんだ。

話を戻します。天王寺駅前のコメダ珈琲は日本一の高層ビル、あべのハルカスと道路を挟んで反対側にあります。ビル影というものは電波にとって大きな障壁となり、時には受信状態の悪い状態を作り出します。コメダで休憩中スキャナを確認すると、現在地がかなりの広範囲にわたってあちらこちらへフラつく現象が確認されました。

GPSという測位システムにおいては、「電波(位置情報)の到達時間」が精度を保証する上で非常に重要な要素となります。高層ビルの多い箇所や地下通路、もしくは防風林の根元などではそれらが障壁になり、電波そのものを遮断してしまったり、またタチの悪いことにそれら障壁に一度当たった電波が反射して端末に届くことがあります。反射した電波は上空から直接届いた電波より長い経路を辿ってきますので、到達時間が変わってしまいます。これが「マルチパス」と呼ばれる誤差要素になります。高層ビルが多い地域では、このマルチパスが原因でGPSの位置測位が安定せず、実際には静止している状態であっても端末上の位置ではフラフラ移動することがあります。

実際にあべのハルカスの周辺ではこの現象がよく起きており、INGRESS上では狙った位置に留まることが難しく、これを逆手にとって「GPSラビリンス」的なミッションが存在します。位置ブレが激しい中で何とか頑張って所定のポータルをハックしてみてね、という趣旨です。


かように位置ブレが激しく、実際に休憩中などにスキャナの画面を見ていてもその移動が著しく、「もしかしたら、これ使えるんじゃないか」と思いついたわけです。

簡潔に次のテーマを書いてみると、以下の通りとなります。

・GPSによる位置ブレが激しいエリアで一切移動をしなかった場合、位置ブレによる移動はカプセルの距離に加算されるか。加算される場合、時間効率はいかほどか。

一切の移動をしない。これこそが「楽をする」という行為の極致にして終着点であると確信した私は、次なる検証へ向けて策を練ることにしたのでした。

なおこのアイデアを風呂で思いついて「これだ!!」とは思ったものの、そのまま裸で小踊りしながら玄関を飛び出すようなことはしていないので、少なくとも倫理観においては私の方がアルキメデスよりも上だと思います。

長くなってきたので上記で思いついた検証を含め、またネタがたまったら同じような形式で公開していこうと思います。
緊急事態宣言が明けたもののまだまだ予断を許さない状況が続きますが、行楽にはもってこいの季節、三密に気を付けながら少しずつ普通の生活に戻していきたいものですね。
それではまた「位置ブレ編+α」でお会いしましょう。
皆様、良きINGRESSライフを!!


コメダ、ご期待ください。

~終わり~

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?