12月

あなたの項に噛み付くようにして身を預けると、左側からぱちぱちかさかさと微かな音が耳朶をなぶる。生理的機能として備わっている、目蓋が角膜を潤すための不随意運動に伴う音だ。

こんな話を知っている?気温が氷点下50度まで下がると大気中の水分は結晶となり霧氷が発生する。人の吐く息も同様にして、耳の辺りで微かな音をたてる。極寒の地であるシベリアのヤクートではこれを星のささやきと呼んでいる。
あなたの瞬きの側ではいつもその光景が脳裏を掠めた。一面に広がる雪景色、ヤクート馬は鬣から霜を落としている。向かい合った個々の体温が染み込む吐息が一瞬にして凍る。外気にさらされた吐息の音。星が囁くような、微かな音。きっとあなたの瞬きに似たような...

聞いて欲しい、あなたの瞬きは、星のささやきだ。

こんな話をしたら、また君はおかしなことを言ってと笑うのかな。