明日、君がいなきゃ困る

私が話した些細なことをよく覚えていた。ある雨の日に唄っていた歌、コンビニで買ったチョコレートの陳腐さへの不満など、私自身がとっくに忘れてしまったことを時々思い出し、楽しげに話した。驚く私に「だって僕は手帳を持ち歩く意味を持たないのだから」としたり顔で言いながら、友人との約束は忘れていたでしょう。
暖かいあなたが好きで、その抱擁が僅かなしこりを残した全ての悲しみを吹き飛ばした。あなたさえ側にいれば何もいらなかった。真冬に凍てつく指先も全てあなたが溶かしてくれた。
誰も知らないあなたを知っていた。それは誰にも教えたくないあなたで、あなた自身もしらないあなただった。また同様に、あなたも私自身が知らない私を知っていた。時折それをベッドの上で曝け出し合いながら、夜が浮上していくのを待った。カーテンの隙間から漏れ入るライトが疲労で少し磨り減ったその左頬を鋭く差しては闇に紛れた。