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若手キャッチャーをベテランピッチャーが育てる、ということの深い意味について。

4/20、対ロッテ戦。勝利投手になったのは今年凱旋帰国したばかりの和田。
帰国後初の完封勝利でした。

ホークスファンにとって、この和田の勝利には1つ勝ちがついたこと以上の意味がありました。

東スポweb

このとき和田の女房役としてマスクをかぶったのは斐紹。
今年は若干23歳にして常勝軍団ホークスの開幕スタメンマスクも任されました。

ホークスは主力キャッチャーである高谷、細川、鶴岡の3人はいずれも35歳を超えており、長い目で見るとこれからのホークスの屋台骨を支えるキャッチャーが育っていません。
3人が前線でバリバリ働いて勝ちを作ってくれている間に、次の正捕手を育てるのが喫緊の重要課題なのです。

しかしキャッチャーが育つには何年もの時間がかかります。
今でこそ名捕手と言われる巨人の阿部ですら、ルーキーのころはキャッチングもまともにできないと散々に言われていたほどです。

野球というスポーツにおいて、すべてはピッチャーが球を投げるところからはじまります。
そしてどこにどんな球を投げるのか、それを考えて最終的な指示をだすのはキャッチャーに他なりません。

それぞれのバッターのデータを頭にたたきこみ、あらゆる状況の先の手を読み、ピッチャーの調子を鑑みながら最適な球を要求する。

ある程度はベンチからの指示もあるとはいえ、一球一球の判断はピッチャーとキャッチャー、2人のバッテリーが呼吸を合わせる必要があります。

だからこそ実践経験が少ないキャッチャーがマスクを被ると、ピッチャーがベテランになればなるほど自分の経験から「そこに投げたら打たれる」「ここは勝負すべきところ」と判断しキャッチャーのサインに首を振ることも多くなります。

しかしホークスの工藤監督は今年、あえて斐紹を摂津・和田のベテランピッチャーの女房役として徹底的にマスクを被らせました。

それは自分自身がホークスの投手だったころ、のちに球界を代表する名捕手となった城島健司を育てた経験があったからこそだと思います。

▲日刊スポーツ

そこに投げたら打たれるとわかっていても要求通り投げる。
そして実際に打たれた後、その日の配球をすべて振り返りながら反省会をする。

鳴り物入りで入ってくるルーキーは血気盛んで自分が間違っているとは思いもしないからこそ、まず実際に打たれるというショックを与えることで聞く耳をもたせたのではないかと思います。

「本当にそこなんだな。」
マウンドからじっと見つめて確認する、一球一球の意味。

これができるのはコーチでもなく、先輩キャッチャーでもなく、やっぱりピッチャーしかいないのだろう、と思います。

ベテランピッチャーがキャッチャーを育てるというのはよく耳にすることですが、なぜ同じポジションの先輩キャッチャーじゃないんだろう?というのが私の中でずっと疑問でした。

置かれた状況も悩みもなにもかも、先輩キャッチャーの方が同じ道を通ってさらに乗り越えてきたのだから最短距離を教えられそうなものなのに、と。

もちろんみんな先輩キャッチャーからたくさんのことを教わっているだろうけど、他の誰でもない、ピッチャーにしかできないことがあるのだと和田ー斐紹バッテリーを見ながら気付かされました。

それは、お互いがお互いを勝たせてあげること

ひとつのポジションには1人しかつけないわけで、どんなに素晴らしい先輩キャッチャーがいても試合中はなにも手出しができません。

でも一緒にバッテリーを組んでいるピッチャーなら、ピンチの場面をともに乗り越え、勝ちを一緒に喜ぶことができる。

和田がヒーローインタビューで斐紹のリードを褒めているのを聞きながら、ベテランピッチャーのチームへの貢献は勝ち星だけではないのだと改めて。

この"別のポジションの先輩が後輩を育てる"というのはきっとビジネスマンにとっても有効で、タスクフォースや部署を超えたプロジェクトを実行する時、鼻っ柱強目の期待のルーキーを別部署のベテランエースと組ませることで飛躍的に成長するんじゃないかな、と思ったり。

人は直属の上司からの指摘を素直に受け取ることができないものです。

それは関係が近いからこその甘えからくる反発だったり、かたちを変えたライバル心だったり。

でもポジションや部署が違うだけで相手の指摘を素直に受け取れるときもあるのではないかと。

そんなベテランエースとルーキーの関係に思いを馳せながら、今日も常勝軍団ホークスの勝利を祝う美酒に酔いしれるのでした。

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