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ユニコードで合成表記として表す拡張アラビア文字

ユニコードにおける拡張アラビア文字の母音字は、ウイグル語Uۇ》やパシュトー語Eې》などのように基本アラビア文字に合わせていろいろなダイアクリティカルマークを付加したものが使用されるのですが、カシミール語など母音字をダイアクリティカルマークで合成で示す例外が適用されるものがあります。

今回はいろいろな字母と記号の合成による拡張アラビア文字をまとめます。
(※R4-09-10更新)

カシミール語

OOEٲ》とUUEٳ》, AWۄ》はカシミール語固有の単独母音字、Oۆ》はウイグル語やカザフ語で使用される母音字を使用するのですが、カシミール語母音字でユニコードに採用されなかったものは合成で示すのがルールとなっています。
カシミール語版ウィキペディアでは項目によっては母音を示すイェーがアラビア語の《يـ/ـيـ/ـي》とペルシア語の《یـ/ـیـ/ـی》が混同されているのですが、ウィキペディアのカシミール語表記『ویٖکیٖپیڈیا』で、ペルシア語YEHが使用されています。

نٛ上逆スモールV付きヌーン[-n- ン] - 語頭《نٛـ》/語中《ـنٛـ》。デーヴァナーガリー文字のアヌスヴァーラ《अं◌》に該当し、子音連続を示す。
ہَファトハ付きヘー・ゴール[-a ア] - 語末《ـہَ》。末尾が短母音で終わることを示し、先行する子音字に母音記号を付けない。
ہِカスラ付きヘー・ゴール[-i イ] - 語末《ـہِ》。末尾が短母音で終わることを示し、先行する子音字に母音記号を付けない。
ہٕ下ハムザ付きヘー・ゴール[-ɨ ゥイ] - 語末《ـہٕ》。末尾が短母音で終わることを示し、先行する子音字に母音記号を付けない。
وٗ逆ダンマ付きワーウ[uː ウー] - 単母音UU・ア行語頭《١وٗ》/語頭《وٗ》/語中・語末《ـوٗ》。
یٖ下アリフ付きペルシア語イェー[iː イー] - 単母音II《ای》/ア行語頭《١یٖـ》/語頭《یٖـ》/語中《ـيٖـ》/語末《ـی》。
يٖ下アリフ付きイェー[iː イー] - 単母音II《اي》/ア行語頭《١يٖـ》/語頭《يٖـ》/語中《ـیٖـ》/語末《ـي》。
ےٚスモールV付きイェー・バーリー[e エ] - 単母音E《اےٚ》/ア行語頭《١ێـ》/語頭《ێـ》/語中《ـێـ》/語末《ـٚے》。語頭形と語中形に限り、既にユニコードに採用されているクルド語Eێ》を用いるが、近年は語頭形《یٚـ》も語中形《ـیٚـ》もスモールVとペルシア語YEHの合成字母یٚ》が“正字”とされている。

ユニコード文字入力サイト『r12a』のカシミール語の項目によると、スモールV付き母音字は、ダイアクリティカルマークのスモールVと半母音字を合成する方式が“正字”とされています。

وٚスモールV付きワーウ[o オ] - 単母音O・ア行語頭《١وٚ》/語頭《وٚ》/語中・語末《ـوٚ》。本来のウイグル語OEۆ》を使用した場合の単母音O・ア行語頭は《اۆ》, 語中・語末は《ـۆ》。

ボスニア語

اٖ下アリフ付きアリフ[i イ] - 単母音I《اٖى》/ア行語頭《اٖىـ》/ア行語末《ـاٖى》。常にアリフ・マクスーラ《ى》を伴う。アリフを子音字に置き換えてイ[i]音の母音記号として表す。
ٮٛ上逆スモールV付き点無しター[ɲ ニュ] - 語頭《ٮٛـ》/語中《ـٮٛـ》。語末はヌーン・グンナーで示す。
ںٛ上逆スモールV付きヌーン・グンナー[ɲ ニュ] - 語末《ـںٛ》。語頭・語中は点無しターで示す。ユニコード14.0で独立した子音字《》が採用された。
وٖ下アリフ付きワーウ[i イ]- 助詞の「~と…」を表す表記で英語のアンド《&》やギリシャ語のケー《Ϗ ϗ》、シンド語のエーン《۽》と同じ用法。なお、アリフ・マクスーラが次に付く《وٖى》はヴィ[vi]を示す。

北ロル語

ユニコードコンソーシアムに北ロル語で使用される上逆スモールV付き字母の追加申請がなされたのですが、却下されました。
かつて北ロル語版ウィキペディアもありました。
アリフ・ワスラٱ》やジャウィ文字Vۏ》, 上2点付きワーウۊ》, キルギス語YUۉ》, 上逆スモールV付きペルシア語YEHؽ》など母音記号付きダイアクリティカルマークを多用します。

اْスクーン付きアリフ[ʔə ア]
اٛ上逆スモールV付きアリフ[æ アェ/ʔa ア] - フランス語《È》など広いエ[ɛ]音に由来する借用語などに見られる。ベトナムは〈ڤیاٛتنام〉と表記。
گٛ上逆スモールV付きガーフ[ɢ グ]
لٛ上逆スモールV付きラーム[ɮ ズまたはル]

ペゴン文字

ط࣭下1点付きター[ʈ ト] - 語頭《ط࣭ـ》/語中《ـط࣭ـ》/語末《ـط࣭》。マダガスカル語のソラベ文字にも見られる。ユニコード14.0で本来の《》とその異体字《》が採用された。

マラヤラム語とタミル語

タミル語表記のものはアルウィー文字と呼称されています。

ا٘ヌーン・グンナー付きアリフ[e エ] - 単母音EE《ا٘ي》/語頭《ا٘》/語中・語末《ـا٘》。マラヤラム文字の短母音E《》に対応。
اࣣ下逆ダンマ付きアリフ[e エ] - 単母音EE《ای》/語頭《اࣣ》/語中・語末《ـاࣣ》。タミル文字の短母音E《》に対応。
اٗ逆ダンマ付きアリフ[o オ] - 単母音OO《اٗو》/語頭《اٗ》/語中・語末《ـاٗ》。マラヤラム文字の短母音O《》, タミル文字の短母音O《》に対応。

アラビア国際音声字母 - AIPA

サウジアラビアのMansour M. Alghamdi教授 ( 本人サイト : http://mghamdi.me/ ) の著書『Arabic Phonetics and Phonology』などに見られるアラビア文字による音声記号で、国際音声記号に対応したものとなっています。
子音字は常に独立形で表示され、上逆スモールV又は下スモールVを付加するものが中心です。
母音字はユニコードに採用されていないのですが、子音字は上逆スモールV付きダール《ۮ》[ɖ ドゥ], 上逆スモールV付きラー《ۯ》[ɽ ル], 上逆スモールV付きザーイ《》[ʐ リ], 上逆スモールV付きスィーン《ݾ》[ʂ シ], 点無しクヮーフ《ٯ》[ɡ グ], 上逆スモールV付きヘー《ۿ》[ɦ ハ], 上逆スモールV付きワーウ《ۉ》[ʍ ホゥ]などが採用されています。

بٛ上逆スモールV付きバー[β ヴ]
پٛ上逆スモールV付きペー[ɸ フ]
تٛ上逆スモールV付きター[ʈ トゥ]
ضٛ上逆スモールV付きダード[ɬ スまたはル]
عٛ上逆スモールV付きアイン[ʢ]
غٛ上逆スモールV付きガイン[ʀ ル]
ٯٛ上逆スモールV付き点無しクヮーフ[ɢ グ]
مٛ上逆スモールV付きミーム[ɱ ンヴ]
نٛ上逆スモールV付きヌーン[ɳ ヌ]
ىٛ上逆スモールV付きアリフ・マクスーラ[ɻ ル] - 上逆スモールV付きペルシア語イェー《ؽ》とは異なる。アリフ・マクスーラ《ى》は英語R音[ɹ ル]を示す。
يٛ上逆スモールV付きヤー[ɰ ウ] - 日本語のワ行音の発音。