見出し画像

近況と雑感

夏終わりかな。だいぶ過ごしやすく。今年の夏は海には行かず、川でだいぶ遊びました。鮎とかウグイとか居るとこで潜って遊ぶのはとても楽しいです。


夏の終わりとともに、私の体内時計は京都音博に向けて自動的にチューニングされます。ただ、例年とは夏の過ごし方がいつもと違うのと、音博自体のやり方や状況が随分と違うので、時差ボケのような不思議な感覚があります。

実は京都音博、13回目の昨年度に、お客さんが見えないところで、大胆な変革を成し遂げていました。

旗揚げ以降12年来、一緒に京都音博を作ってきた大阪のイベンター/プロモーター、夢番地さんと袂を分かち、昨年度よりキョードー大阪さんと一緒にやり始めました。

音博は私たちくるりのメンバーと、佐藤社長(くるりの佐藤さんは事務所社長でもあります)以下ノイズ・マッカートニーのスタッフ、開催地京都の様々な関係事業者や、京都市、梅小路公園、近隣の自治会の皆さんなど、多くの方々が一緒に作っている音楽イベントですが、それらを纏め、形にしているのがイベンター/プロモーターです。

京都音博は特殊なイベント、らしく(私にはその実感はあるようでありませんが)、ロケーションや音楽の中身、には私たちくるりがプロデュースしているからこその独自性があります。だからこそ、イベンター/プロモーターにとっては、決して運営しやすいイベントではありません。音博独自のルールやコンセプトを、端から端まで共有して実務に活かし会場を作り、梅小路公園周辺の住民の皆さんとのコンセンサスをとりつつ、ご来場いただいたお客さんを満足させないといけないからです。

キョードー大阪さんと一緒にくるりが仕事するようになった時、普段のコンサートだけではなく、京都音博を抱えている私たちは、キョードー大阪の社長さんと担当スタッフさんに、私は念を押して言いました。

「音博は多分変わったイベントで、天候だけでなく様々なリスクを多く抱える割に、とにかく利益率のかなり低いイベントです。その割にやることが沢山ありすぎて大変なので、多分相当のご迷惑をお掛けすることになると思います。」

キョードー大阪の社長とスタッフたちは、私たちに、とにかくやり甲斐があるイベントで、素晴らしいイベントだと思うので、くるりの皆さんが思いついたことを実現していきましょう、私たちはプロなので、それをやるのが仕事ですし、何より私たちも楽しみながら勉強させていただいております、と仰られました。

実は、音博に対して私自身のモチベーションが少し低下していたという事実がありました。10年以上も続けている大きなイベントで、先述した通り利益率がとても低く、様々な縛りの中でブッキングや設営に苦しむことも少なくありませんでした。

昨年の音博は、私の実感として、ほんとうに素晴らしいものに仕上がったと思っています。ご縁というのは素敵なもので、長年にわたり夢番地さんと作ってきた音博の根幹を大切にしていただきながら、私たちのやりたいことを実現し、今後に向けての「発展型」音博を作ることが出来たのは、キョードー大阪さんの力が大きかったと思います。

話を戻します。

エライことになって半年くらい経ちましたが、くるりのツアー中止やイベント出演中止を経て、私たちはとにかく今年の京都音博の開催の是非について、メンバー、スタッフ、イベンターと何度も協議してまいりました。

キョードー大阪さんには、開催に至るまでのタイムラインを何度も引き直しながら、どう転んでも良いように常に準備していただいていたと思います。

そもそも京都音博とは、いわゆる「音楽フェス」ではなく、音楽の万国博覧会である、という名実ともに行われているイベントなので、世界中がパンデミックの波に飲み込まれていく中、ブッキングのことを考えるだけで胃が痛みました。中止も頭をよぎるというか、現実的なものとして考えないといけないな、と思っていました。

くるりは7月にSSTVさんと組み、京都磔磔より生演奏の映像配信を行いました。目の前にお客さんが居ない演奏は、タモリ倶楽部以外のテレビ収録慣れしていない私にとって、かなり不思議な気持ちになったものでした。それでも、久々にバンド全員で音を出して演奏すると、あぁ、私はこれをやるためにずっと生きてきたんだった、と涙を堪えるので必死になりました。

京都音博は、国内外問わず様々なジャンルのアーティストが共演する素晴らしいイベントですが、今回の開催をオンライン配信にすることによって、海外アーティストや、普段なかなか観る機会のないアーティストの演奏を、割とスムーズにお聴かせすることが出来るかもしれない、と思い、数多くのアーティストの「オンライン出演」を軸に組み立てよう、そうすれば、現場感が無かろうが、梅小路公園で無かろうが、「京都音博感」は出るだろう、と思ったりもしました。

ですが、私は独断で、そういうのはやめよう、と思いました。どうせなら、普段よりエネルギー使うことをやろう、と思いました。

2017年音博や、私の近年の音楽活動がヒントにはなっているのですが、もし世界がこんな状況になっていなかったら、来年か再来年くらいから始めようと思っていたプロジェクトを、突貫工事で立ち上げ、音博の中に組み込んでみよう、と思い立ちました。それが『岸田繁楽団』です。

『岸田繁楽団』については、公式サイトで簡単に説明しているので、もし良かったらそこをご参照いただきたいのですが、あまり前例がない活動形態だと思うので、なかなか説明は難しいです。音楽的には、大所帯の合奏です。今いちばん演奏することが難しいやつです。

今回の楽団員たちと、出演を快諾してくれたゲストのシンガーたちは、驚くほど素晴らしい人たちです。皆んな音楽にまみれること、合奏で空気を作ること、良い演奏を讃え合うことに、やっぱり飢えているんだなぁ、と思いました。勿論、私もです。早く、皆さんにお聴かせしたいなぁと思います。

岸田繁楽団の音も、これからの活動指針も、このコンセプトに呼ばれて集まってくれたスタッフと、団員たちと一緒に生み出しています。まだ、産道にいますが、9月20日に、ネット回線を通して、皆さんの前で産声を上げると思います。

さて、最後になりましたが、くるりの現況です。

『岸田繁楽団』は誰でも入れる楽団なので、佐藤さんもファンファンも、ごくたまに弾きに来たり吹きに来たりしてくれますが、くるりは、7月の磔磔と同じ布陣でお届けしようと思っています。セットリストは、7月とはだいぶ違う予定です。

音博とは関係ありませんが、MV集『QMV』が9月23日に発売になるのと、そんなにお待たせせずに新曲もポロポロと、発表すると思いますのでよろしくお願いします。

追伸。

京都音博のウェブサイト、是非ご覧ください。音博マーケット、というリンク集があります。音博のフードエリアや物販エリアを、ウェブサイト内に立ち上げました。私たちが選りすぐったお土産ものや、オンラインで音博を楽しんでいただくための、おつまみや飲み物、お食事なども取り揃えております。どうぞご覧くださいませ。

https://kyotoonpaku.net/2020/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?