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近況と雑感

カープがそこそこ強い。

先発投手陣が整備されている(左の床田がとにかく素晴らしいのと、若手投手陣の丁寧な投球内容が良い)ことが見てとれる。盗塁阻止率が低いのが気になるが、キャッチャーのリードも悪くないように思う。

鈴木誠也メジャー流出で不安視された打線も、坂倉や西川の覚醒によって繋がりの良い切れ目のない打線になりつつある。

数年前、セリーグ三連覇したカープは強かった。様々な要因があったように思うが、エルドレッドをはじめとする外国人野手の存在感は、ひとつの大きなポイントだったように思う。

チームのこと、日本でどういう風に過ごしているか、日本の野球とアメリカの野球のことなど、エルドレッド氏は楽しそうにビールを飲みながら雄弁に語ってくれたことがある。チームの中に溶け込み、広島の街に溶け込み、とてもリラックスしながら当時のカープの主砲として活躍していた。

外国人選手の多くは、チャンスを求めて日本までやって来ているが、プレッシャーの中、大きな孤独感に苛まれているのも見てとれる。

日本語は、本当に難しい言語だ。表現のヴァリエーション然り、漢字と仮名の組み合わせと発語の多さ曖昧さは、全世界的にもトップレベルの難しさだろうと思う。勿論、食べ物や文化もそうだが、言語とコミニュケーションに関しては、日本はいわゆる西洋諸国や他の東アジアとは違うややこしさに溢れているように思う。

ややこしさが悪いわけではない。

日本で生まれ育った人間からすると、当たり前のことであり、コミニュケーションの複雑さは野球といった複雑なルールを持つゲームを面白くする。変化球主体のピッチングの組み立てや複雑なチーム走塁術、守備も、日本野球の醍醐味であろう。

コロナ禍で困窮する世界は、ひとつの困難を共有しているはずだ、とそれぞれの世界市民が考えているはずだが、それも国や地域それぞれの事情で、問題意識は複雑化する。

家庭事情や健康問題、経済的な事情が様々であるように、ローカルな想像力の範囲ではカヴァー出来ないそれぞれの悩みはコロナ禍においてただただそれぞれに膨らんでいく。

ウクライナで起こっている戦争のアレコレを、私たちは簡単に想像することは出来ない。ニュースを観て知った付け焼き刃の知識だけでは、戦禍にさらされている人々の事情や気持ちを伺うことが本当に難しい。

私が勤めている大学では沢山の留学生が学んでいるのだが、兵役義務のために2年間休学し国へ戻っていた韓国の学生が復学し、私のところへ進路や学修の相談に来た。

彼は日本で仕事として音楽活動がしたい、と言う。あと2年で卒業予定だが、卒業後のビザのことや国際情勢のこと、経済的な事情など、悩みは多いようだった。

ビザの取得方法や、日本語を勉強する方法、日本の音楽業界におけるプロダクションやメーカーとの契約、と韓国のそれの違いについて、などの話をした。

留学生にも色々いるから、一様には言えないが、その彼は学修に対しては勿論、日本の文化、考え方についての学び、また労働に対する考え方など真摯な姿勢をもって日本での生活について取り組んでいる様子だった。あとは彼の頑張りを見守るだけだが。

自分の領域外に出て行って何かをすることは、殆どの人たちが様々なケースにおいて経験することだ。そこには喜びだけではなく沢山の困難が待ち構えていることは言うまでもない。

特段、言葉が通じない外国で、自分自身の在り方を問い、コミニュケーションを通じて社会的に貢献することの困難さたるや、想像を絶するものであろう。

留学生の彼と話すなかで、韓国での兵役義務のことや、K-POPのことなんかにボンヤリ思いを馳せつつ、これから日本はいったいどうなっていくんだろう、と何だかしんみりとした気持ちになってしまっていた。

今年のカープの内野手、4番を務めるライアン・マクブルームは唯一の外国人野手であり、徐々に結果を出し始めている。今日も2ランホームランを打ち試合を決めた。

ゆっくりとダイヤモンドを一周し、帰ってくる彼をひときわ嬉しそうに祝福するのは、無慈悲な人的補償により数年前ジャイアンツから移籍してきた長野選手である。

長野選手が紳士的な方だというのは有名な話だが、孤独の無力感を知っている人は、やっぱり優しいんだな、と、コミニュケーションの大切さの基本を思い知らされる。

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