マ社長の星屑レビュー☆第24回「Ash / Ibeyi」


久しぶりにレビューの季節だということでiTunesを物色いたしましたら、「ibeyi」の新譜が9月末に出とるがなということで、30秒でお題が決まりまして、ポチりましてこれから聴いていきます。

まず、「ibeyi」って誰やねんということで、簡単に説明しますと、双子の女の子デュオで、パリ生まれなんですが、お父さんがブエナビスタ ソシアル クラブのパーカッショニストなもんで、幼少時代はキューバでも過ごされていたみたいです。しかもルーツがアフリカ民族のヨルバ人ということで、歌は英語とヨルバ語で歌われているそうです。かなりややこしいですが、世界を股にかけている系ですね。

自分との出会いは2年前のファーストアルバムなんですが、確かに直線的に発するコーラスの感じとかドラム的じゃないリズム、そしてオリエンタルな顔立ちにつかみどころのない人たちだなと思ったのを覚えています。ちなみにどっちがお姉ちゃんかはわからないんですが、「リサ」がボーカル、鍵盤。「ナオミ」がボーカル、パーカッションです。

パーカッションもカホンっていう四角い箱に穴が空いたでんじろう先生が打つ空気砲みたいなものと、バタドラムっていう西アフリカ起源のキューバの宗教儀式で使用されていたコンガの祖先みたいなのを使われるそうです。でも、こんなことを書いているとどんだけ民族色出してくんねんと思いがちですが、音は全然最近の音なんで、とりあえず1枚目のアルバムから1曲お聴き見してください。

Ibeyi - River

すごい、1000万再生なんですね。ほんでもって、最後の方に歌われているのがヨルバ語っぽいですね。さあ、そんな彼女たちの新譜はどないなっているんでしょうか。ようやく聴いていきます。

デビューアルバムの流れを汲んだアルバムのイントロ的な1曲目。わざと繋ぎノイズを残した宗教的なアカペラコーラスのループにアカペラコーラスを乗っけた一曲。暴力的なパーカッションがめっちゃかっこいいんですが、個人的にいけないことをしちゃって、光の当たらないところに閉じ込められながらお祈りをしている気分の曲です。

2曲目も環境音的ノイズからアフリカ色の濃いコーラスに歌が混じって始まり、パーカッションとボーカルと環境音のみというシンプルな構成で繰り広げられるんですが、コード楽器というか、音程楽器が声のみという潔さ。まあシンセ鳴ってるかって書いたら、あっ、ボーカルがケロりました。人力じゃないのかな。プリズマイザーではないと思いますが、何かしらの加工で作られているっぽいですね。別に全く悪いことではないんですが。二人の声質や歌い方が微妙に違うところもいい味になっていますね。

Ibeyi - Away Away (Official Video)

3曲目は打って変わってシンベから始まるアメリカ的R&Bを感じる曲。サックスなんかも入ってきちゃって、いきなり通貨が変わった感じがするのですが、これが分け隔てなく今の音楽と自分のルーツミュージックを聴いているからこそできる技なのでしょう。しかし、人の声と打楽器の持つ力強さというか、プリミティブな音の力をよく知っている人たちだなと思います。ほんとなんだか怒っている人に言い寄られている気持ちになります。ヒップホップ聴いてるみたいな。

Ibeyi - Deathless feat. Kamasi Washington

4曲目は3曲目からの流れで自然に聴けるR&B的曲で、シンベでの低音と打ち込みのリズムも鳴っているんですが、パーカッションというか基本のビートがカホンやバタドラムで紡がれているっていうのがこの人たちの最大の特徴なのかなと思ってきました。意外とパーカッションの方がかゆいところに手が届くもんですし、余計なリズムの音がいらないから自ずとシンプルな構成になっていくのかもしれません。曲は関係ないのですが、そんな二人がよくわかるライブ映像もありましたので、聴いて見てみてください。

Ibeyi - Better In Tune With The Infinite (Live on KEXP)

5曲目はまたコーラスで始まったかと思いきや、よりヒップホップよりな一曲で、サンプリングなのか、おばちゃんの切実な訴えがラップ的に差し込まれつつ、タイトルが繰り返し歌われます。大衆の歓声のサンプリングもあったりしまして、このゴタゴタの衆院選選挙を待つ自分にとっては何かのプロパガンダに聞こえてしまってちょっと厄介です。

6曲目は穏やかにシンセのコードに白玉シンベ、足踏みと足しばきと指パッチンを合わせたみたいなパーカッションと歌のみの落ち着きそうで落ち着かない曲。1曲目からなんですがバックにはずっと環境音が重なっていて、この曲には鳥のさえずりが聞こえるのですが、穏やかな1日というよりも何か引っかかるものがある週末って感じで、この人たちこんな強い人たちやったかな。地鶏の歯ごたえある肉を噛み続けているけど飲み込めない気分です。

7曲目はエレピと歌のみなんですが、ようやくちょっと光がさしてきた気分がしてきました。しかしながらデビューアルバムからたった2年ですが少し大人になって言いたいことも色々増えて、怒ることややるせないことも増えたんだろうなと感じるアルバムです。二人は多分強い人間だからそれを音楽として発すると伝わりやすい人たちな気がします。ちょっとおっちゃんやられてきましたが、希望をあまり持たずに次に行きたいと思います。

8曲目は初めて生ベース?って思ったらフィーチャリングでミッシェル・ンデゲオチェロやった。すげー。いきなりちょっとおっちゃん元気になってきましたが、ほぼ白玉しか弾かないベース。たまに入る弾く直前の空ピックがすごいノリを作っててめちゃめちゃかっこいいんですけど、すげー、もったいねー。おそらくミッシェルが彼女たちのことを好きなんでしょうね。4分を超えてからの生パーカッション登場で盛り上がるかと思いきや1分足らずで引っ込んであっ、また出てきた。と思ったらすぐ引っ込むという、非常に贅沢な曲でした。

マリンバが印象的で南国を感じる9曲目。オートチューンのケロったボーカルが若干鼻につきますが、打ち込みリズムと相まっていい感じです。いきなり何語かわからないラップが乗っかってきたんですが、この曲もフィーチャリングがついているんですね。マラ・ロドリゲスって人で、スペインのヒップホップシンガーみたいです。wiki曰く「フラメンコとヒップホップを融合。歌詞は主に浮浪者や、女性の社会的な問題」らしいです。やっぱアルバム全体がそういう感じなんですかね。なるほど、自分は音楽にそういう思想が付随してくるのが若干苦手なんだということを再認識いたしました。パンクとか平気やねんけどな。関係ないんですが、お笑いのシソンヌさんのコントで「明るい引きこもり」ってのがあったんですが、そのコントと一緒で、引きこもりっていうネガティブに捉えられるもんでも、陽気な引きこもりだぞって言ってくれたらこっちも入っていけるのになと思う、色々億劫になってきた40の秋です。

10曲目、パーカッションイントロがカッコいいこの曲もやっぱり悲しいのですが、チリー・ゴンザレスさんというエレクトロ・ヒップホッパー、ピアニスト、プロデューサー、ソングライターの方がフィーチャリングされています。おそらくピアノを弾いておられると思うのですが、このピアノがまた悲しい。焼けて崩れ落ちた家を前に佇みながら負けないぞって言ってる感じがします。

11曲目。なんだかビョークみたいに聴こえてきてしまいました。次がアルバムタイトル曲だからそこまでは聴きたいのですが、あんまり音楽を聴く脳みそでなくなってきている感じがします。だってなんだかんだ悲しいんですもの。これは自分が病んでいるのか、聴いていくとそういう精神状態になるのか検証してみたいもんです。青空の下で聴いたりしていたら全然違うのでしょうが、今はずっと呪文を唱えられているような感覚です。

12曲目、タイトル曲。ウニョウニョしたシンセに人が喋っているようなサンプリングの上にボーカル。なんとなくわかってきました。普通って何かわかりませんが、普通の音源と比べてあからさまにコード楽器が少ないから言葉がより強いのかもしれません。逃げ場がないんですね。もうちょっとあん肝とかうなぎの肝とか生ものとかいっぱい食べられる人やったら大丈夫だと思うのですが、おっちゃん疲れました。イヤホン外させていただきます。ごめんなさいm(_ _)m

というわけで、いい悪い、じゃなくて、合う合わん、で最後まで聴くのは無理でした。でも彼女たちにしかできない音楽を作っておられますし、ピアノボーカル、パーカッションボーカルっていうスタイルもかっこいいと思います。10年後くらいにまた落ち着いた「ibeyi」の音を聴いてみたいなと思ったセカンドアルバムでございました。

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