見出し画像

「だいじなこと」セルフライナーノーツ

人気漫画のTVアニメ化に際して、主題歌を90秒尺で書いてくださいと依頼が来たので、原作漫画を読了してすぐに書きました。「ふたつの世界」などとは異なり、ロングサイズは作らずに90秒に全てを詰め込みました。短いのに濃厚。

注文の多い仕事、としての作曲は実は苦手ではありません。何故なら、ここでいう注文とは「具体的なアイデア」であり、クライアントの意図さえしっかり読み取れば、あとはそこに自分なりに応えることで、音楽自身も自然に成り立つように出来上がることが多いからです。90秒尺、と決まっていれば全体の構成も作りやすい。

メロディーと歌詞は、移動中の新幹線の喫煙室でふと思い浮かび、小声でスマホに録音しました。

表題が少女漫画原作だったので、曲想に対して、同じくアニメの主題歌だった「ふたつの世界」風のアレンジに寄せました。ざっくりしたリフやコードと言うよりは、メロディーに対してベースやピアノの動きを対位法的(なんちゃってですが)に置いていきました。くるりの楽曲制作ではあまり使うことのない音色…コンプレッションでがっつり歪んだベースが楽曲の肝です。

先述の「ふたつの世界」と異なるのは、原作漫画、並びにアニメの世界観がより「コアなアニメファン向け」であることでした。

私自身はコアなアニメファンではないので、いわゆる「アニヲタ」的世界観づくりは得意分野ではありません。そのぶん、全体のストーリーや世界観に寄せた楽曲の構成、主人公ならびにヒロインの「知られざる気持ち」の部分に留意して歌詞を書きました。物語終了直前の「大人になった彼ら」の描かれていない過程を想像しながら、主人公になりきって歌いました。

歌詞でいうところのコンセプト、としては「太陽のブルース」、そして「ふたつの世界」の続編とも言えます。「忘れてしまいそう」な「だいじなこと」について。そして、決して交わることのない他者の気持ちを、どのように思い遣ることが大切なのか、という中々に難しいテーマではあります。

サウンド面では「ふたつの世界」や「かんがえのあるカンガルー」などと同様に、ホーンセクションが楽曲の世界に彩りを添えています。近年は様々な楽器アレンジを細かくやることが多いですが、この楽曲もそのタイプです。

録音は、京都のスタジオ、SIMPOにてデモ作りとヴォーカル、同じくファーストコールにてバックグラウンドヴォーカルとギター類、東京のgreenbirdにてドラム(石若駿)、5弦ベース(佐藤さん)、ピアノ(野崎泰弘)、東京のアバコスタジオにてホーンセクション(ファンファン含む大勢)を録音しました。ブラスアレンジは私が作ったものを基に三浦秀秋くんが手掛けてくれました。

ミックスはウィーンのDiezが仕上げてくれました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?