短歌十四首*斑入り石蕗(ふいりつわぶき)
バスのまど季節はじめの雨つぶがビルや街路樹うつくしくする
睡蓮の咲く池めざすこの朝はどの道行っても必ず着ける
ひぐらしの鳴き声聴かず夏はゆきファンタグレープぬるいまま飲む
この夏の最後のゴーヤ揚げているチップス好きの無口な兄に
不織布マスクずらしたときに甘い香り金木犀は姿見せない
「いま雨が降っているから季節には花が咲くんだ」静かに父は
しあわせは例えば深い秋の日の枯葉の匂い感じとること
母のギター静かに響く夜おそく自分勝手なわたしを包む
よろこびを告げると自分のことのようによろこぶ友は苦しみ告げぬ
朝がくるブランケットにくるまってあした生まれる国で生きたい
「しあわせは頭の上の眼鏡だね」美しい文字遠い友達
庭にあった斑入り石蕗おもいだす祖母がその名を教えてくれた
キリストの生まれる前から変わらずに輝く星がわれらを照らす
はてしなく広がっていく黄金色はじめは君がくれた一粒
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