ポケモンソードシールドBGM分析:ダンデ戦

初投稿でnoteの使い方も分かりませんが書いていきます。

初回なので、まず雑感から。

雑感

発売して1年以上が過ぎたポケモン剣盾ですが、最近になってやっとSwitchを入手してクリアすることができました。

率直に言って、サウンド全体について音質の悪さが気になりました。そもそもポケモンの音源は、VSTi音源になってからの数作品、具体的にはXY以降の作品は全体的にミックスが悪く音がぼやけている印象ですが、XYやSMと比べても剣盾の音質の悪さは顕著です。一体何があったのかは分かりませんが、このせいでプレイ中はあまり音楽に入り込めませんでした。そういうわけで、Youtubeに上がっている音源を後から聴き直して分析し直しました。違法アップロード万歳

さて、ダンデ戦の話です。残念極まりないことに、この曲は「殿堂入りのメロディとガラル地方のテーマ(?)が組み合わされた曲」という話が広まってしまっているようです。これは一部の要素しか見ていないといえます。

ダンデ戦の作編曲は明らかに一之瀬剛氏によるものですが、彼の曲がその程度で終わるはずがないので、最初から見ていきましょう。

分析

1~8小節

「ダンデ選手の入場です!」と実況がありそうな3拍子のファンファーレです。前半4小節は8分音符、後半4小節は全音符でおなじみの「殿堂入り」のフレーズを弾きます。

ところでこの「殿堂入り」は、タイトル画面のイントロで印象的に使われていますが、ダンデの登場BGMにもちゃんと入っています。

この最初の部分ですね。ということで、ダンデ戦で殿堂入りのフレーズが使われている、というより、ダンデ戦BGMはダンデのテーマの変奏と考えた方が分析しやすくなります。

ところでダンデの曲、女の子のテーマみたいですね。RSEのハルカを思い出しました。

9~10小節

ポケモンおなじみの、2小節戦闘イントロといっていいでしょう。ただし、これをイントロと言ってしまうと次の8小節の位置付けが微妙になります。しかし他に適当な言葉を思いつかない……

11~18小節

これまたポケモンでおなじみの8小節のイントロです。一之瀬氏お得意の3連付リズムで、1~8小節を「入場」とすると、「行進」的なイメージです。

13~14小節及び17~18小節に、「殿堂入り」が出現します。

11~14小節のメロディは、「ラララミー ラララミー レーラー レーミー」となっており、このレラレミの部分ですね。

これ、最初は「ラララミー」の部分も殿堂入りっぽい音形にしようと思ったのではないかと邪推しますが、どうでしょうか。

18小節目は2拍で途切れ(こういう芸も一之瀬氏のお得意ですね)、次の部位に入ります。

19~30小節

ちょっとトリッキーな小節数です。殿堂入りのフレーズをここではっきり使用し、8小節で終わるのではなく、更に4小節加えています。後述の構成を考えると、4+4+4に分解したくなるところですが、前の8小節と次の4小節で雰囲気が分かれているので8+4と解釈します。

さて、ここで注目すべきなのはティンパニとベースラインです。再度、「ダンデのテーマ」を、50秒~のサビに注目して聴いてください。

お分かりいただけたでしょうか。ダンデ戦のベースラインは彼のテーマ曲のサビの変奏、と言いたいところですが、このメロディはホップのテーマにも登場します。

1分くらいですね。おそらく、兄弟のテーマなのでしょう。

31~38小節

間奏のような雰囲気です。しかし実のところ、周到に攻撃の準備をしています。まず次の目玉となるピアノパートの出現、そして唐突にも思えるギターの短い刻みですが、これについてはダンデのテーマに全編通して登場しているものです。しかし、1:06あたりが最も原型に近く、分かりやすい現れ方をしていると思います。

このギターの動機、ホップのテーマにも、もちろんその戦闘曲にも登場します。更にはムゲンダイナの最終フェーズ、ホップとの共闘シーンの曲にも登場します。先程のベースラインと合わせて、彼ら兄弟の動機と考えるのが妥当でしょう。

39~46、47~53、54~61小節

先程登場したピアノが駆け上がって下がって、アウフタクトでリズムを叩くのがいかにも一之瀬氏流ですね。シンバルの音の長さと音程にも注目すると、一之瀬氏のリズムへのこだわりが理解しやすいかと思います。

47~53小節にかけては昔のポケモンっぽい8分音符のベースラインの動きに変わり、更に54~61小節では一之瀬氏お得意の変態速弾きスラップベース金管による刻みがついに満を持して登場。3段階に進化しているわけですね。

メロディは若干変奏をしつつもほとんど同じですが、絶対にコピペでは終わらせないという矜持を感じます(凡百のゲーム音楽家なら、ただのコピペで3分くらい尺を稼いで済ませるところです)。

62~69小節+70~76小節

54~61小節で作り上げた例のノリを維持したまま、ガラル地方のテーマ(?)に突入します。これはネット上でもよく言及されていると思います。このメロディが実際のところ何を意味するのかはっきりとしませんが、劇中に何度も出てくるので印象的です。

ところで、この部位のラスト、75小節と76小節に渡って次のフレーズの導入らしきギター(とスラップベースのユニゾン)のメロディが挟まれますが、これもダンデのテーマとホップのテーマで使われているものです。

ダンデのテーマでいうと、48秒あたりですね。

77~84、85~92、93~99小節

殿堂入りのテーマの変奏に回帰します。77小節の最初の3つの音が、76小節の影響を受けてスタッカートを引き継いでいるのが印象的です。

全体通して、相変わらずの速弾きスラップベースですが、アウトロっぽくちょっと静かになります。これがまたしても3段階かけて進化していきます。

85~92小節では、ダンデホップ兄弟の動機と名付けた例のギターの短い動機が追加されます。

そして93~99小節では、少し不思議なシンセのメロディが追加されます。

これ、最初は何だろうと思ったのですが、剣盾の曲にこのメロディを使ったものが他にないため、おそらくポケモンのタイトルの主題1の変奏と思われます。

どうせなので全部入りのやつを。

変形が少し激しいので分かりにくいかもしれませんが、何度も聴けば納得できると思います。(主題1ってなんやねんと思われるかもしれませんが、RSEとSMだけに登場する主題が別にあるので、便宜上このように呼んでいます)

しかし、当然の疑問があります。なぜここでタイトルの曲なのか。最終戦だからメインテーマを持ってきた(SMの時のように)とも考えられるのですが、剣盾についてはそれだけではないようです。

なぜかというと、トレーナー戦に思いっきりこのメロディが使われているからです。

1:13~ですね。ちなみにサビが終わったあとの4小節もベースまでバッチリタイトル画面の曲なので、確認してみてください。

つまり、このメロディはポケモンのメインテーマではありますが、剣盾においては「戦闘のテーマ」としても使われているのであり、最強のトレーナーであるダンデとの戦闘にこのメロディが出てくるのは自然、と言えるのです。

100~101小節

曲の終わりです。何か仕掛けがあるわけではないと思います。

まとめ

以上、ネットでまことしやかに流れている分析があまりに気に入らないので書き上げた新しい分析でした。ノートなどに書いてちゃんと数えたわけではないので、小節のカウントには間違いがあるかもしれません。

簡単に結論をまとめましょう。

ダンデ戦には「殿堂入りのテーマ」「ガラル地方のテーマ」だけでなく、

「ダンデ・ホップ兄弟のテーマ」「ダンデ・ホップ兄弟の動機(1)」「ダンデ・ホップ兄弟の動機(2)」「ポケモンのメインテーマ」が使われている。

以上です。

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