スプーン曲げた

スプーン曲げ、一度だけ出来た事がある。
飲み会とかでうっかり喋ると、話が終わる前に(こいつはちょっと気持ち悪い)という空気になってしまうので最近はあまり話してない。

小学4年生くらいの頃だったと思う。
何巻だか忘れたが漫画「20世紀少年」でスプーン曲げのくだりがあり、ふーん、そういう感じで曲がったりする時もあるのね、くらいにしか捉えていなかった。あとユンゲラー。

そんな時テレビで超能力スペシャルみたいなのをやってた。確かバラエティ色が強めの番組のコーナーだったような。

超能力者が出てきた。なんだかテレビ映えしないスッとしたおじさんだった。が、嘘もつかなそうな雰囲気を感じた。
おじさんは「みんなにもスプーンは曲げられます。超能力、なんていうと遠く感じるかもしれないけど、誰にでもある力なのです。みんなが元々持ってる力です。テレビの前のあなたにも出来るんです。」と言った。

(20世紀少年のともだちランドの人と同じような事を言うなあ)と思った。

誰かに見られてたら恥ずかしいけど居間には俺ひとりだった。せっかくだし、真剣にやろうかなとスプーンを持ってきた。(気に入っている七福神の柄)

「スプーンを持って、先端に指一本当てて、力は入れないで。目をつむって。君が今持っているのはスプーンじゃない。こんにゃく、だよ。ぷるっぷるだ。やわらかいね。」おじさんはこんな事を1分ほど喋り続けた。

「完全にこんにゃくが出来たら…はい。」
スプーンは指一本で「すっ」と曲がった。

ゲスト達の驚きと疑惑の混じった歓声。
同じ気持ちだった。

「ではもう一度、今度はみんなでやってみましょう」スタジオのタレント達とさっきと同じくだりをやる。

俺も一緒にやった。
テレビの音が聴こえなくなるくらい、完全にスプーンをこんにゃくに置き換えた。(こういう妄想に集中するのは得意だった。)

(あっ!完全にこんにゃくになった!)
という瞬間があった。指を押す。その時指には、スプーンやこんにゃくの感触は無く、空を切る、という感じだった。
目を開けるとスプーンは曲がってた。

出来た。びっくりした。自分でも疑ったが、指一本でそのスプーンを元に戻すには、思い切り力を入れても5秒以上はかかる硬さ。さっき曲げた時は0.5秒で曲がった。なんの力も入れずに。

テレビに目を戻す。12、3人のうち2人くらい曲がってた。名前も知らないグラビアアイドルも曲がってて、実はマッチョなんちゃうか〜!と弄られてた。俺は(馬鹿どもめ)と思った。おじさんは「想像力が強い人は曲がったねえ」とふわっとした事を言ってコーナーは終わった。

俺は隣の部屋のお母さんに飛んで見せに行った。お母さんは一瞬疑うもすぐに信じてくれた。(やさしいな)
私もやる!と言い出し俺がレクチャーするも、結局曲がらなかった。

今も実家で七福神のスプーンは首が「〜」こうなっている。

それ以降俺に超能力が備わった訳ではないけど大体信じてる。俺のことちょっと気持ち悪いって思ってます?

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