きよか

奇譚、幻想譚、大人のおとぎ話を 超短編小説で静かにお届けします。

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砂漠

気に入った場所で仰向けになった。 夕空に星が見え始めていた。 ビールが飲みたいと思ったが、 それは一瞬で消えた。 私は目を閉じた。 ただ漠と積み重なった、 私の生ま…

きよか
2か月前

超短編小説「灯」

あれも捨てた。あれも、あれも。 運が良くなると聞いたから。 あれもあれもあれもあれも。 本当に欲しくて持っていたものなど 何ひとつなかったことに驚いた。 古いアパ…

きよか
3か月前
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超短編小説 「月」

夜風にあたろうと宴会を抜け出した。 故郷のひなびた温泉宿での同窓会は、良くも悪くもない。月が出ている。 満月だろうか、ずいぶん明るい。 宿の前の川のせせらぎに誘わ…

きよか
3か月前
5
砂漠

砂漠

気に入った場所で仰向けになった。
夕空に星が見え始めていた。
ビールが飲みたいと思ったが、
それは一瞬で消えた。
私は目を閉じた。

ただ漠と積み重なった、
私の生まれる前からの色々と
私が生まれてからの色々、
私と関係ない色々と関係する色々、
カルマとか怨念とか愛とか幸福とか、
それらが皆
かさかさになって、
ぼろぼろになって、
こなごなになって、
こんなふうになってしまえば清々しいのに…
そん

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超短編小説「灯」

超短編小説「灯」

あれも捨てた。あれも、あれも。
運が良くなると聞いたから。
あれもあれもあれもあれも。

本当に欲しくて持っていたものなど
何ひとつなかったことに驚いた。

古いアパートの二階の小さな部屋が
広くなった。
自分のために、素敵な間接照明がほしいと
思った。
休日のたびに買いに出かけた。
一つ二つ三つ四つ…
部屋が灯でいっぱいになった。

ある夕暮れ、窓の外で灯がともった。
カーテンを捨てたばかりだっ

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超短編小説   「月」

超短編小説 「月」

夜風にあたろうと宴会を抜け出した。
故郷のひなびた温泉宿での同窓会は、良くも悪くもない。月が出ている。
満月だろうか、ずいぶん明るい。
宿の前の川のせせらぎに誘われて、河原へ向かった。

護岸整備はされていなく、
石と砂の岸はしっとりと、流れは戯れるように月のひかりを受けている。
月夜のこの川が、こんなにも美しいとは思ってもみなかった。
今日いちばん、いや、ここ何年かでいちばん
心が躍った。

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