ケレン・アンが2019年に3月、フランス語メインのソロ・アルバムとしては14年越しにリリースした《Bleue ブルー》の中の2曲目の先行発表曲で、かつアルバム・タイトル曲の 〈 Bleu ブルー 〉。
優しくほんわり明るい曲調。
ありきたりのトーチ・ソングとも違う、微妙な大人の歌。
いつくしい思いと虚しさの交差する切り取られた瞬間というべきか。
憂愁のブルーの色合いは淡くフェードアウトするのか、激しいドラマに豹変する一歩手前なのか、胸苦しいようなスリリングさがある。
https://youtu.be/ruZFeJTZsd4
繰り返し聴いていくと、かなりよく練られていることに気づく。
「背中と背中を向けて」は「今」で、その4行からあとは時間が遡っている。
そして「 頬と頬を寄せて」が、同じ2人の位置関係でも、冒頭より時間が先行している。
背と背を向けあっているから、相手の青い眼は見られないはずで、具体的な視覚的ブルーはすべて心象のなか。
4行目の「重い沈黙がゆりかごのように自分を抱き包む bercer」から、男の「腕の中」の記憶の表現を5行目に呼びこんでいくわけだが、曲末の、現在に針を戻す冒頭の4行が再現するときにその4行目でで終わるのは、自分を抱き慰めるものは沈黙以外他になにもないという、他者-相手の不在感を際立たせる。音楽的にはそしてここではちゃんと終止してない。