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深夜徘徊

この街に住み始めた時、憑りつかれたように深夜に歩いていた。
仕事から帰って、一度眠ると深夜2時か3時に目が覚めた。そこからおもむろに外に出て、ひたすら歩き回った。コンビニでビールを買ってとにかく延々と歩いた。ビールがなくなったら帰る、そして7時ごろには起床して仕事に行っていた。散歩という健康的な行為を、生活習慣の乱れとアルコールという不健康なもので挟み続けた結果、頭が変になった。

深夜2時から3時。いろんなものを見た。
同性のカップルが仲良さそうに歩いているところ、不倫中らしきカップルが乳繰り合うところ、路上生活を営む方々がダンスの練習をしているところ、グデグデのホスト、暗闇でチケットを手売りするお笑い芸人さん。
みんな揃いも揃って深夜にうろつく不審者であり、そして私もそのひとりだった。まともとは何だろうかと考えた。

その時のことをよく思い出す。とてもつらい時期だった気がするが、何が辛かったのかもう分からないし、思い出せない。とにかく夜中に歩いていたことだけは覚えている。

その時、同じように家に帰るのが嫌で、夜中に駐車場のライトを頼りに文庫本を読む女の子と僕は一緒に暮らすようになるが、今考えればお互いに自暴自棄だったのだろうかと思う。

「ひとりで抱え込むからそうなるのよ」と言われて反省したことがあるが、改善されているのか疑問だ。深夜にうろつくものにいつ戻ってもおかしくはないし、そういう夜はどうせ来るだろう。悪い時間だけど、あって良かった気もする。そういう思い出。

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