おふくろの味、おやじの味
食器、洗濯、掃除用洗剤のテレビCM。
ここ最近ぞくぞくと男性の俳優さんやタレントさんが起用されています。
「ついに”おじいちゃん”まで⁉」とびっくりしたのがお風呂用洗剤のCM。
パパ、じいじ、孫すべて男性キャストで「ラクしてキレイ~。」とお風呂場でアピール。
実際はどこまで男性が家事育児に参加しているかは様々でしょうが、意識的には男女平等、家事労働も平等が浸透しつつある感じですね。
冷蔵庫のCMでも、女性が働いて帰宅するとパパが「ご飯できてるよ。」
からの家族団らんの図。
単なる理想像なのか、それともすでに共感する家庭が多いのか、明らかに数十年前とは家族のかたちや家事に関しての意識が変わってきています。
で、タイトルの『おふくろの味、おやじの味』です。
以前は自立した子供が郷愁と共に思い出すのは『おふくろの味』が鉄板でしたが、
家事を平等に分担する家庭では『おやじの味』も「あり」ですね。
お料理に関しパパ担当の比重が多いご家庭では『おふくろの味』は影が薄いかも。
先日ラジオで耳にしたのは働くママから
「うちは週5で夕飯は冷凍食品です。」の投稿。
保育園の先生にドン引きされた・・・との事ですが、疲れきってイライラしながら作るより、心に余裕ができて、また子供との時間もとれて合理的。
そんな考え方も「あり」なのでしょう。
またネットで簡単にお料理を検索できる昨今では、改めて親に「作り方を教えて」なんてやりとりも少なくなったり。
家電もどんどん進化して、具材を入れておけば調理してくれたり冷蔵庫の残り物からおすすめレシピを教えてくれたりする優秀なものも登場してきています。
『おふくろの味』の伝承は難しくなっていくかも…です。
これからは味の伝承というよりも、記憶や経験の伝承になっていくかもしれません。
誰と一緒に作ったか、誰に教えてもらったか
そして誰とどこで何を食べたか。
たとえ塩むすびでも楽しく食べた記憶が豊かな食生活のベースになったり。
記憶や思い出を共有する事でその人との結びつきが強くなったり。
同じ家族同士で違う『おふくろの味』を連想したとしても、一緒に過ごした豊かさをベースにそれぞれにまた『我が家の味』を作っていくのかもしれません。
春は別れや出会いの季節。
新たな生活をはじめるにあたり改めて『おふくろの、おやじの、我が家の味』を考えてみるのもいいかもしれません。
「忘れられないあの味」を共有する事はお互いが離れていても根っこの部分で繋がっている確かさを感じる事ができます。
偶然にも11年前の3.11を思い出させるような大きな地震がありました。
また毎日のニュースで「祖国を離れざるを得ない…」そんな辛さも目の当たりしています。
何気ない日々の中で他愛ない会話と共に食卓を囲む豊かさは決して当たり前ではない
改めてそう思う2022年の春です。
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NHKで放映されていたカナダのドラマ「アンという名の少女」の中で
病で余命わずかな友人のために主人公のアンは彼女のレシピ集をまとめます。
「彼女の幼い娘が大きくなったらきっと役立つ…」
その言葉に思わず涙、涙でした。