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「おや、こんな所でお会いするとは」 貴方は僕に向けて余所々々しく言った。 「この列車が何処に向かっているのか、あなたは知っていますか?」 僕はよく分からなかったから、首を横に振った。ポケットの中から切符を取り出すと、それは掌の中で落ち葉のように粉々になり、まだ名前のない風に攫われていった。貴方は構わずに続ける。この列車には、終着点が無いのだと。 列車の中では、乗客が事ある毎に深呼吸をしていた。それは、何のためなのか。あと一歩を踏み出さないようにするためである。我々はい