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ぼくの秘密の家庭教師⑧

翌日学校に行くとぼくのことが話題に上っていた。きっと人生で初めてのことだ。もちろん情報提供者は美紀さんだった。
「のびぞうのとこは四頭も犬飼ってんのかぁ。すっげーなー。」
「のびおくん、四頭も飼って、けんかにならないの?」
「のびドラ、一人で散歩させてるなんてすごいじゃん。」
いくつあんだよ、ぼくのあだ名。するとそこに副委員長でスポーツ万能の隼人くんがやってきた。
「のびえもん、美紀から聞いたぜ。犬の散歩をしながらマラソンの練習をしてるんだってな。二月のマラソン大会に向けておれも一緒に練習してもいいか?おれ、犬大好きなんだよ。おれが触っても平気かな?」
「うん。いいけど・・・。うちの犬はみんなお利口さんだから絶対に噛まないよ。五時半くらいからスタートだよ。時間大丈夫?」 
「ヤッタゼ!おれんちはさ、犬飼いたいけどお母さんが動物が苦手で飼えないんだ。犬とマラソンかぁ・・・楽しみだなぁ。あっそれから、おれは月水金はサッカーがあるから、火曜日と木曜日に一緒に走ろうぜ。で、どこに行けばいい?」 
「今のコースは、楠公園を四周するんだ。慣れてきてぼくに体力がついてきたらコースは変わると思うよ。」
「のびえもん、思うよっておかしいなあ。」
あぶないあぶない。ジッチがコースを決めるんだなんて言ったら、あだ名に『ばかえもん』も加わってしまう。
 隼人くんはクラスの、いや、学年の人気者だ。勉強もスポーツもできるし、なにより面白くて優しいんだ。ぼくは隼人くんに声をかけてもらっただけで嬉しかったのに、来週の火曜日からは一緒にマラソンの練習ができることを信じられなく思っていた。帰ったら早速ジッチに報告しなきゃだ。
 帰りの会の時、先生がみんなにぼくのノートを紹介してくれた。工夫をした素晴らしい勉強方法だって。ぼくは嬉しさよりもジュナってすごいんだ!と今更ながら感動した。さよならをすると先生がぼくを呼び止めた。
「栄さん。今日のノート素晴らしかったよ。これからもがんばってね。まずは、続けることが大切よ。これからもみんなに紹介したいから。これからも続けることができたら先生は他のクラスにも紹介したいと思っているよ。それでいい?」
「はい。一か月間続けられたら紹介してください。先生、ぼくの挑戦なんです。それじゃ!先生さようならー。」
ぼくは、家で待っている家庭教師たちのもとに全力で走って帰った。

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