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ぼくの秘密の家庭教師⑤

ピロリロリ~ン、ピロリロリ~ン、ピロリロリ~ン・・・
携帯電話の画面を見てみると、お母さんからだった。
「野比、お昼時間だけどお弁当食べた?」
「あっお母さん・・・今起きたよ。なんかすごくぐっすり寝たって感じ。」
「熱はない?」
「うん。もう大丈夫。今からお弁当温めて食べるね。」
「今日も早めに帰ってこれるようにするからね。ゆっくり休んでいてね。」
電話を切ると、みんながドッグベッドから出てきて、後ろ脚一本一本をていねいにストレッチしながら起き出してきた。
最後までベッドにいたクイミがのっそり起き出してくると、ぼくに言った。
「ゴロク、お弁当を食べ終わったら、俺の話を聞いてくれな。」
「ん?食べながら聞くよ?」
「いや、食欲がなくなっても困るからな。食べ終わってからにしよう。」
 確かに、後になって思えばクイミの言う通り、お弁当を食べながら聞いていたらぼくは食欲もうせて、お弁当を残してしまっていたかもしれない。その話の内容とは・・・。
 クイミの話をまとめると、次のような内容だった。
 【ゴロク改造計画 作:クイジナウ】
 ・やるべきことをいつも後回しにするゴロクを改造する
 ・毎日の宿題を適当にしているゴロクを改造する
 ・お手伝いを全くしないゴロクを改造する
 ・運動が苦手なゴロクを改造する
クイジナウというのは、クイミ、ジッチ、ジュナ、ウニヨンみんなの名前の頭文字をとってつけたらしい。『ゴロクを改造する』というみんな思いもこめているんだって。
「え~どうして?みんなと楽しく遊びたいよ~。それにどうしてぼくだけ?」
「おとんに任せたぞって言われたこともあるし、ゴロクにはがんばってほしいんだ。自信を持ってほしんだよ。おれたちと一緒にやるんだからがんばれるだろ。」
「クイミの言うとおりだよ。ゴロクはいい子なのに毎日おかんに叱られてばっかで・・・、おかんやおとんがかわいそうにもなるときがあるんだよ。そういうのを見るのはもういやだよ。」
「ジュナはそういう時はいつも隠れているもんな~。」
ジッチが言ったことでお母さんが『ながら説教』をしているときのジュナの様子を思いだした。(そういう理由があったのかぁ)いやいや、だからといってクイミたちに改造されるなんてぼくはまっぴらごめんだ。不服そうな顔をしていたぼくのにクイミが言った。
「ゴロク、やるべきことから逃げてばっかりいていいと思うのか?こそこそ逃げてばっかりのゴロクじゃなく、当たり前のこと当たり前にやっていけるゴロクになってほしいだけなんだ。おれたちは今回またとないチャンスを活かしたいいんだ。おれたちのゴロクだからこそおれたちが手伝いたいんだよ。正直言うとずーと思っていたんだ。このままではゴロクはだめだ。ただの甘えん坊の怠け者になってしまうとね。そうならないために今回のような奇跡が起こったんだと思いたいんだ。」
「確かにね。ぼくはめんどくさがりで、根気もなくて、毎日の宿題も適当にやったり、お母さんやお父さんと約束したことも守れないよ。でもね、今さら変わりっこないよ。ぼくには無理な話だとしか思えないよ。」
「ゴロク兄ちゃんは変わりたいって思っているってこと?」
ウニヨンにお兄ちゃんといわれてくすぐったい気持ちになった。
「もちろんさ!でもね、ウニヨンそう簡単にできることではないんだよ。」
ウニヨンだけにはお兄ちゃんぶって強気で答えた。
「よく言った!ゴロクも変わりたいと思っているってことが知れてこれで決まりだ。そう簡単にできることではないことを、おれたちクイジナウゴでやっていくんだ。」
「ジッチ、いつの間にかクイジナウがクイジナウゴに変わっているよ。意味は分かるけど。それはどうでもいいんだ。ぼくはね・・・」
ぼくが話しているのに、お構いなしにさえげってクイミが言った。
「ゴロク、今日からおれたちが、ゴロク改造計画の達成に向けた家庭教師だ。全力でやるぞ。それじゃジュナ、細かい役割分担の発表だ。」
(クイミたちがぼくの家庭教師?そんなことできるわけない)
そう思っているぼくをよそに、ジュナの発表が始まった。
「それじゃあ発表するね・・・。」
【ゴロク改造計画役割分担】
 ○リーダー      クイミ
 ○体育担当      ジッチ
 ○勉強(算数)担当  ジュナ
 ○勉強(国語)担当  ウニヨン
「ぼくにも仕事があるんだ。うれしいな。」
ウニヨンは本当に嬉しそうに言っていたけど、ホントにウニヨンがぼくの国語の家庭教師なんて務まるのだろうか?
「ジッチは、ボールのキャッチのコツ、速く走るコツといったことを教える。ジュナは数字にはめっぽう強いから算数だ。そして、ウニヨンの国語は・・・そうだ、毎日欠かさずウニヨンに読み聞かせをするんだ。そしてウニヨンの質問に答える。それが国語の勉強内容だ。」
「やったー!ぼく本大好き!読み聞かせ楽しみだなぁ。」
(本当にこんなんで、ぼくを改造できるの?でも、みんなと一緒ならまあやってみてもいいかな。大したことなさそうだし)と、その時のぼくは思っていたんだ。

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