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All about quiet funk (#9)

「パーツと機能の進化論」 羽根 について

セミのプラグが作りたくて、羽根のついたプラグで真っ先に思いついたのが、ヘドンのクレイジークローラー。

動きのイメージはジッターバグに近かったので、1993年当時のデカダンスのプロトタイプは固定式の羽根を装着していたが、キャスティングに難があり、試行錯誤の末、古いクレイジークローラーのウイングシステムを採用した。

シンプル且つ機能的で実によくできた機能を備えている。(後に調べてみると、オリジナルはヘドンではなくジムドナリーのWOWというプラグであったが…)

羽根系ノイジーの何がバスを誘うのか、長い間この釣りを続けてきても本当のところは分からないのであるが、明らかに、他のタイプのプラグとは一線を画しているように思う。そう断言するのは、これまでに何度も、何をやってもダメな日にデカダンスに助けられてきたからである。

羽根系ノイジーのアクションパターンは大きく分けて2通り。リトリーブによるクロールアクションと、ピンスポットでのステディアクション。クロールアクションには、ゆっくり大きく(ボディを反転させるように)動くものから、小刻みにボディを震わせるようなピッチの速いものまで様々である。

クレイジークローラーを筆頭に、主流はゆっくり大きくローリングするタイプ。大きなバスが釣れることが多いように思う。ミンミンゼミもこのタイプ。小刻みでピッチの速いものは市場に少なく、デカダンストーイはこのタイプである。幅広いコンディションに対応して、スレにくい。

一方、オーバーハングでの釣りに多用されるステディアクションは、移動距離が短く虫の波紋を再現させやすい羽根系ノイジーの得意とするところ。アクションのつけ方にもよるが、ローリングの大小には影響されにくい。晩夏から初秋にかけて、落ちてくる虫を意識したバスに圧倒的に効くことが多い。

前述した事案の羽根パーツとその機能についてであるが、羽根の大きさ(長さと幅)や取付け位置によってアクションは様々に変化する。また、羽根の素材、厚み、曲げ方による影響も大きい。

理想のアクションを具現化するまでには時間を要した。デヴュー作のデカダンストーイは最も時間をかけたプラグで、初期プロトタイプから1997年の製品化までに実に4年の歳月が経過した。発売から20年近く経ったいまでも販売し釣れ続けているのは当社の中でも稀有の存在である。

本題に戻ろう。
羽根パーツの機能の理想とは?

まず、アクションについて。アングラーの意図のままにプラグを動かすために必要な機能を備えていること。具体的に述べると、ここぞというポイントにプラグを落とし込み、ロッドワークを駆使しシェイクして水面に波紋を広がせる。

その時に羽根が閉じたままだったり、羽根が開くまでに時間が掛かってしまうと折角のストライクチャンスを逃すことに為りかねない。着水後に羽根が開きにくい最大の原因は、羽根を閉じた状態の羽根の先端がプラグの全幅を下回ることに起因する。

羽根を閉じた状態では出来るだけ広がっていることが望ましいが、広すぎるとキャスティングの際に抵抗になりやすく、タックルボックスへの収納にも事欠いてしまう。可動式の羽根を備えている存在自体の意味が無くなってしまうのである。

広すぎず狭すぎない理想の羽根の開き角とは、閉じた状態でボディの中心線と平行になり、開いた状態で垂直よりやや上向き(およそ80度前後)である。

開いた状態での角度が狭まるとリトリーブによる水の抵抗が低下するためスローリトリーブに反応しずらく、60度以下になるとクロールアクション自体、難しくなってしまう。

反対に垂直にすると最大抵抗となり、スローでの反応は良くなるが、泳ぎだしにきっかけが必要となり、ミディアムリトリーブでは暴れすぎて扱いにくいものになる。

続いて、羽根の大きさと素材について。プラグを操る際に重要だと思うことのひとつに、引き抵抗(操作感)があるが、それまで使っていた既存の羽根系ノイジーに不満を感じる最大要因であった。水の抵抗をより受けやすくする為に幅を広げてみてはどうか? 

幅が広いと引き抵抗は増し操作感は向上するが、プラグ自体の浮力の関係でおのずと制限がある。羽根の重量が増すとプラグを左右水平に浮かせることや着水時にひっくり返りやすくなってしまうからである。

羽根のサイズと共にアクションに大きく影響するのが、羽根の曲げカーブ。水面で水を抱え込むことにより、湿り気のある特有の音を作ることが出来て、ローリングのピッチを早める効果もある。これを逆手に取ったフラットなウイングは、音を立てずにローリングを強めることが可能になる。

操作性以外では、キャスタビリティの良さが挙げられるだろう。いかに羽根の空気抵抗を受けずにキャスト出来るか否かということ。プラグをキャストする際には羽根が閉じて、着水後には速やかに羽根が開く。

即ち、スムーズな羽根の開閉が求められる。相反する機能の両立は難しいが、可動部のクリアランスが大きく影響していることに注目したい。羽根とU字金具(羽根止めパーツ)には、遊び(連結部のゆとり)が不可欠なのである。

以上、デカダンストーイを主眼に羽根パーツの機能について書き連ねてきたが、ひとつの事をやり続けていると、違うものにも興味が湧いてくる元来の性分が功を奏し、これまでに様々なタイプの羽根を作ってきた。

羽根の進化ともいえる、その一例を最後に紹介したいと思う。フラットウイング(ミンミンゼミ装着)、クリアウイング(ポリカーボネート製)、ラージ&マグデカウイング(羽根大&金属音)、ドラゴニアウイング(トンボ型細長羽根)、デカーナウイング(羽根小)、スーパービックウイング(超特大羽根)他、カラーウイング等々。

それぞれに固有の特徴があり、羽根パーツの探求はまだ終わりそうにない。

(月刊『Basser』2016年10月号 寄稿分より 一部抜粋)


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