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All about quiet funk (#11)

トップウォーターのバス釣り。この釣りを始めて40年近くになる。

元来、飽き性であるはずの自分がこれほど長い間、飽きずに続けてきたのはなぜだろうと考えてみた。

キャスティングしてアクションを加える。バスが水面を割ってストライクする。そのすべてが目で見える。エキサイティングな釣りであることは事実だ。

トップウォーターでは色々な魚を釣ってきたが、バスのトップウォーター釣りに惹かれ続けた。釣るという行為自体は同じだが、何かが決定的に違う気がしていた。

昔からサーフェイスという言葉の響きが好きで、「トップウォーターじゃなくて、サーフェイスゲームなんだよね。」などと、仲間内で語っていた。

状況に応じてトップウォーターという言葉は使うが、僕たちの釣りは、あくまでサーフェイスゲームであると思っている。

トップウォーターが <水面での釣り> という一括りであるということに対して、サーフェイスゲームは<水面のバス釣りスタイル>というゲーム全般を楽しむものだと認識している。

トップウォーターではご法度の、引くと潜るリップ付きのプラグでもサーフェイスゲームは成立する。潜らせない様に使うまでなのだ。

つまり、サーフェイスゲームは釣るための手段ではなく、スタイルそのものであるということ。釣れるまでのプロセスを第一義に、使うプラグはもとよりロッドやリールなどの道具立て、果ては服装から釣り場に向かう車にまでこだわる。

すこし大袈裟にいうと、サーフェイスゲームとは生き方そのものと言えるかもしれない。

改めて、サーフェイスゲームについて熟考してみると、バスプラグというものの存在の大きさに行き当たる。見るからに釣れそうだと思えない玩具のような色や形。それを使って釣ったときの嬉しさ。

「今日はこれが釣れそう」では無く、「今日はこれで釣りたい」と思わせるものがサーフェイスのバスプラグにはある。

そこには釣り道具としてのプラグという側面と、愛でるプラグコレクションという側面が存在する。単なる擬似餌の一品では無いのだ。

純然たるプラグコレクターでなくとも使うのが惜しいと思わせるプラグがあるのも事実。道具とコレクションの狭間で投げるべきか悩む。しかし、それがまた大人の楽しみであったりもする。釣りに行かずとも楽しめる不思議な魅力がこの遊びにはあるのだ。

サーフェイスプラグに魅了され、プラグ作りを生業として20年余りが経過したが、未だに変わらないのが新しいプラグを作る時の昂揚感。アクションを想像して形を考え刃を入れ整えて、色を塗り部品をつけて釣り場に向かうことは、いまも至上の時である。

クワイエットファンクという釣具のブランドを始めた時に、考えたブランドコンセプトは「地味・派手」というもの。相反するものがひとつになったイメージ。分かりやすく云うと、地味な外観なのに派手な動き(見た目の想像を超えたアクション)などという感じである。

そのイメージを意識して端的に具現化したのが、オリジナルフィーである。上下でズレたボディ、水面上のノーマルサイズの目と水面下の大きな目玉、かつて無い形状のプロップ等の外観。

そこにオールド系のカラーリングを主に施した。アクションは、形骸化したカテゴリーだと言われたダブルスイッシャーに一石を投じるクイックなスライドと、重低音が可能なプロップ音。静と動が同居した地味派手なプラグ。まさに quiet funk なのである。

ちなみに、クワイエットファンクのブランドロゴはオリジナルフィーを下から見た際の大きな目玉と三日月状のボディのズレ部分を形態化したもので、月と太陽(陰と陽)をイメージ化したものでもある。

オリジナルフィーと双璧を成す クワイエットファンク の代表的プラグ、デカダンストーイ。

セミを模した外観は、リアルになり過ぎず使い手にセミをイメージさせるバスプラグ然としたものになる様にデザインした。高浮力の発泡ボディと高抵抗のアルミウイングで非常にピッチの速いクロールアクションが特徴。

自ら公言するのはやや気恥ずかしいが、ノイジーに革命を起こしたと言っても過言ではないと思っている。発売から20年を経た現在も釣れ続け総販売数はおそらく数十万個に及ぶ、モンスタープラグ。

デカダンスには、発泡製のトーイ、プラスチック製のフィー、ウッド製のヴィー、など様々な素材と、100gオーバーの巨大デカダンススーパービックから、1/4oz.のデカーナライトまで数十種類が存在する。

(『Rod and Reel』2018年4月号 寄稿分より 一部抜粋)

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