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メスにモテれば全て良し~タントラマンへの道(第36話)

フェロモン男子

初代愛犬ムクは、去勢手術をされなかったという点において
二代目、三代目愛犬とは大きな違いがある。

その影響なのか、個体差なのかはわからないのだけれど、ムクは圧倒的に体臭が臭かった。

何しろ、手で身体を撫でたりするとすぐに臭いが手についてしまうので、ムクを触った後は必ず手を洗わずにはいられない程であった。

それに対して他の2頭、特に現在同居中の三代目ええねん♪は、年に3~4回美容院に行く時以外はほとんど洗われることが無いにも関わらず、臭いがほとんどしないのである。
一日三回、屋外での散歩も欠かさないためかなり薄汚れて見えるのに、一緒に寝ても臭いが全然苦にならないほどなのだ。

その他にも、去勢とは関係ないかもしれないけれど、ムクが「水が怖い」、「火が怖い」、「雷が怖い」の三拍子揃っていたのに対し他の2頭は三つとも当てはまらないというような違いもあった。

人間の視点からは、怖がりで弱虫とも思えるムクだったが、実は雌犬にモテるという点では他の2頭とは正反対であった。

今から50年以上前の時代、都市部の郊外辺りではまだ野良犬の群れも存在していたし、家から脱走して近所をうろついている光景にもしばしば遭遇したものである。

ムク自身、脱走して一時的に野良犬のグループに加わって行動していたこともあったくらいだ。

一家で山登りに行った帰り道で逃亡してしまい、一週間くらい帰ってこなかったことも少なくとも2度ほどあった。

また、近所の飼い犬の雌が我が家の敷地に入って来てムクの前で仰向けになったりしているのを目撃したこともあった。

なので、ムクには隠し子が相当な数いたと考えるのが自然だろう。
彼がこの世に生を受けたのも、逃亡中か放浪中だった雄犬を父に持つのだから。

さらに、ムクは体はそんなに大きくなく体重も10キロ程度しか無かった割には喧嘩は結構強かった。
自分の二倍くらい大きな相手とも喧嘩して、相手の背中にしがみつきながら善戦するのだ。

他の二頭は喧嘩とはほぼ無縁。ええねん♪に至っては、戦わずして負ける方式を採用しているのではないかと思われるほどの平和主義者である。
そして、ムクのように雌犬に媚びられるようなことも皆無なのだ。

他の2頭の方がムクとは比べ物にならないくらい安心・安全・快適な生活環境の提供を受けていたけれど、人生(犬生)を楽しめたのはムクの方なのかも。

他の2頭も去勢されていなければムクと同様、発情期には雌を求めて逃亡を図っていたに違いない。子孫を残すという生命体としての最大の目的を達成するために。

そして、3頭の愛犬との暮らしを時系列で振り返ってみたとき、
彼らと自分自身の状態(境遇)との間には興味深い一致があることに気づいたのである。

(つづく)



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