仮題「技能実習生問題に対して僕達は何ができるのか」

※おことわり
私はジャーナリストの方々のように細かい取材をした訳でも無く、専門家の方々のように法律、経済、外交、日本ベトナムの文化等を専門に活動している訳でもありません。日本とベトナム、そして技能実習生、留学生について非常に興味がある一個人の意見として読んで頂ければ幸いです。

目次
・はじめに(簡単な結論を書いています)
・日本とベトナムにとっての技能実習生制度
・技能実習生制度が終わらない理由
・根深い原因とややこしくしているもの
(まだ途中です。)

・はじめに
 近頃日本でベトナム人技能実習生、留学生の犯罪、労働問題が様々な問題がニュースになって一般の皆さんにも周知されるようになりました。
この問題は今に始まった話ではありません。私は6年程前から自分の周りに被害を受けたり、犯罪に走ってしまった留学生、技能実習生と話し、相談にのる機会が度々ありました。ベトナム人の親戚がいた事、ベトナム語を話せるベトナム人であった事、そして私自身数少ない日本に住むベトナム人を助けたいと思い、自分なりに色々調べ何かできないかもがき、実際にそれを仕事をしようと思ったこともあリました。
 しかし深く知れば知るほど、戦わなければいけない相手の大きさにビビり、4年前にベトナムに渡りさらに絶望し、気付けば何もできずに今まで過ごしてきました。

 けれどこの頃、この問題がニュースで取り上げられ、日本で大きな話題となっています。ただ残念なことに、表面に上がってきている事だけを取り上げて報じられ、議論されている印象があります。上記のようにこの問題に関わりを持ってきた者として、これがまた一過性のニュースとして消費されて終わるのはあまりにも悲しい為、今回自分が知っている事、そしてそこからの考察を書いておこうと思った訳です。

 ここからかなりの長文になります。是非読んでいただきたいのですが、あまり時間の無い方の為に、まず胸糞悪い結論と提案を先に書きたいと思います。
・日本とベトナム両国の関係が良く、両国政府および民間共にメリットがある為、技能実習生制度は無くならならず、入国管理もある程度は厳しくするもののその効果は限定的だろう。
・労働問題は実は両国共通。長時間酷使、最低賃金以下の給与、不正な天引き…日本企業が日本人、そしてベトナム人相手にやっている事、それはベトナム企業がベトナム人、そして第3国の労働者にやっている事と同じだからとても厄介。
・この技能実習生、留学生問題は2国間関係に止まらない。日本に対するイメージダウンもそれは日本単体で見たらの話。同じような話は色々な国から聞こえてくる。結局ベトナム人にとって、技能実習生度はガチャ。
・提案その1:技能実習生制度は継続しつつ、アップデートするべき。良いアップデートができるかは自分たちがどれだけ政治家に良いプレッシャーをかけられるか。政治家が企業の方を向いている限り、実習生の人権はおざなりになる。
・提案その2:留学生の犯罪防止強化を。まずは日本語学校にプレッシャーをかけ、間接的にベトナム側送り出し会社が詐欺をできないようにしよう。


さて、では始めましょう。
(この記事は長すぎて現在執筆途中です。)

・日本とベトナムにとっての技能実習生制度
 日本にとって技能実習生は現状期間限定の単純労働者となっていることは間違い無いでしょう。もちろん、本来の「技能実習、伝達」という目的に沿っている企業もあるのかも知れません。しかしどの日本企業にそこにリソースを割く余裕があるのか?そしてなぜその技術を習得するのに「3年しか」与えないのか?と疑問に思う事が多々あります。
 そして改正される入管法を見ても、期間限定の単純労働者と見ているというのは明らかだと思います。
 企業にとっては最低賃金で雇える労働者が大量に確保できる。その点に尽きるでしょう。
 
 ではベトナム、そしてベトナム人にとって、技能実習生制度とはどのようなものなのでしょうか?日本の報道を見るだけでは「なぜいまだにベトナム人は技能実習生制度を使って日本に来るんだ?」という疑問は解決されません。
 また「日本のイメージがダウンする。」「せっかくの親日国ベトナムに日本が嫌われてしまう。」という意見も散見されますが、実はそうとも言い切れない事情があります。
 少し長くなりますが、ベトナムの事情について詳しく書いていきたいと思います。
 
 ●新卒の受け皿問題
 ベトナムは中国と同じ社会主義を標榜していながら自由主義経済を導入した国であり、格差の拡大が著しい国でもあります。富裕層はベンツをキャッシュで買えるほどの収入を誇る一方、統計上の平均収入は月収40,000円程度です。
 月収40,000円程度の庶民が家や車を買う事は夢物語であり、日本の高度経済成長時期と比べ、まだ一般庶民が企業や自営で働いていても明るい未来が見えない社会です。ただその中でも中流層が生まれてきており、若者達はより高い収入を得る為、血眼になって勉強に励んだり自分のビジネスをしたり、副業したり、転職を重ねています。
 中流層になれるチャンスが全員にある訳ではありません。まずは大卒を目指す訳ですが、国立大は難関で中学高校の段階で既に選抜されたエリートのみが挑戦を許され、私立大は学費が高く家族の収入がものを言います。近年は受験戦争も激化しており、塾に通う子どもも増えています。
 更に大学を卒業できても、新卒の受け皿が少ないと言う問題が待ち受けています。自営業率が今尚58.7%
(出典ILO、2017年→https://data.worldbank.org/indicator/SL.EMP.SELF.ZS)
もあり、後述しますが家族をとても大事にし、他と区別する文化もあり、新卒での就職口が足りていないのです。
 もちろん、彼らは技能実習生ではなく、採用されビザがおりれば日本で働ける人材でもあります。しかし技能実習生制度を活用するとビザもおりやすく、トライアルとして行ける、という事で一定の応募人数がいます。
 実際大卒で技能実習を終えたベトナム人はベトナム国内の日系企業に就職を決める事が多く、給料も倍近くになります。

 ●下克上のルート
 ベトナムに行っている実習生のほとんどは。大卒者ですら中流層になる入り口にすら立てない中、短大卒や高卒にはほぼチャンスがありません。就職はできてもお情け程度でしか給料は上がらず、労働条件の悪い所で働かざるを得ない人も多くいます。技能実習生制度を使って日本へ行くのは、下克上のルートなのです。

話は少しそれますが、ベトナム人を理解するに当たって行動や思考をこの3つの主義で捉えることができます。
<歴史と文化から見たベトナム人 ~人材育成と活用への心構え~>https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07000672/report.pdf
① 現実主義:過去や未来を憂えない。 ② 家族主義:自然に恵まれた生活環境によって必ずしも社会組織にたよらず とも個別の家族だけでも生きていける。そのため、日本人が「世間様」と 良く言う既に擬人化されるまでになっている個人の社会責任や共通の社 会規範が比較的希薄であること。③ 形式主義:物事を徹底的に追求して、生産効率、精度、品質を高めたりす るよりも、「形」が整っていれば、まずよしとする。

この内の②が今の技能実習生問題を根深くしているものです。
下克上は自分の為では無く、多くは家族の為なのです。
<若者が消えたベトナムの村 「実習生御殿」に見る日本への「愛憎」>https://withnews.jp/article/f0181123004qq000000000000000W08u10101qq000018406A
ここでは「実習生御殿」とだけ紹介されていますが、これができる事がベトナム人にとってどれだけ誇れる事か、あまり触れられていません。両親の為に家を建てる事ができるかもしれない。そのチャンスはとても貴重なのです。

<12/7追記>
・技能実習生制度が終わらない理由
 追記で更新する日にちょうどこんなニュースが出ていました。

 また以前はこんな記事も、

 ニュースの内容は中々ショックです。

 いわば制度として「実習」に来ていた外国人を搾取している構造が明らかになり、その制度の管理、監督がうまくいっていないということが露呈しているのです。
 それでも。私は技能実習生制度は無くならない。今後少なくとも10年は。 私はそう確信しています。その理由を説明していきましょう。

 ●日本は言わずもがな
 少子高齢化による人材の空洞化。人件費を節約する企業文化。みなさんご存知だと思いますので割愛します。

 ●ベトナム政府にとっては正に救い
 前項で述べた「新卒の受け皿問題」は国にとっては大きな問題です。若者の失業率が低い事は政府運営をやりやすくします。若者の失業率が高いと若者だけでなく、その親世代も不満を抱きます。また彼らが消費するお金がなくなると経済成長に大きな影響が出ます。でも彼らの就職先を確保したり、起業を促したりするには限界がある…だから技能実習生制度は正に救いなのです。
 富裕層は海外からの投資をうまく受け入れ、政府の支援を受けて勝手に増えてきています。下層は投資が続く国内外の工場の単純労働者として働き、最低賃金の上昇に合わせて徐々に所得が増えていっています。しかし中流層は国内で育てられないのが現状です。中国プラス1として注目され、海外からの投資も集まってきているベトナムは、これから中流層を産めるかどうかがポイントとなっている国です。
 技能実習生制度はその中流への入り口により多くの人を送り込む為、必要不可欠な制度なのです。
 日本政府が実習生の人権にあまり配慮せずに法改正を進めたのは、技能実習生によって成功例が産まれており、ベトナム側からのプッシュがあっただろうと私は確信しています。

 ●うまくいっている、本当に
 政府だけではありません。若者達がこれを大きなチャンスと見ています。なぜなら帰ったベトナム人が成功している人達を見ているからです。
 まず就職が容易に、そして給与が大きく異なります。特に技能実習帰りのベトナム人は日系企業にとても人気で、日本語検定の資格もセットで面接に臨めばかなりの確率で採用されます。数は多くありませんが、起業をする人もいれば、実習先の企業と上手くコラボレーションすることもあります。共通するのはほとんどが日系との絡みで仕事をし続けると言うことです。
 これは日本企業が基本ローカル化をあまりせず、日本での企業文化をほぼそのままベトナムに持ち込む為、日本で実際に仕事、生活をした人を重宝する事に起因します。
 つまり技能実習から帰ってきたベトナム人は日本人とベトナム人の橋渡し役をやっているのです。日本企業はご存知の通り、一度雇うとトラブルがない限り解雇もしないし、現地企業と比べトレーニングもしっかりしています。
 全員とは言いませんし、日本企業とは肌が合わない。と言う人もいます。けれど一方で日本の人気はまだまだ衰えていませんし、実際上手くいっている例も数多くあるのが現状です。

 ・根深い原因とややこしくしているもの 
 上手くいっている部分があるけれど、現状多くの問題があって被害者が出ています。私はこれをしょうがない、で片付けるつもりはありません。けれど解決策を考える時、表層に出てきているものだけで判断するのは拙速です。
 ここまででも十分長いですが、更にもっと深掘りしていきたいと思います。

 ●搾取、労災、逃走、自殺、死亡…
 技能実習生に対する企業の犯罪やブローカーの詐欺は許せるものではありません。しかし、それが制度の問題であるのかは冷静に見る必要があります。
 企業が労働者を酷使し、搾取する構造は技能実習生に限りません。Twitterで検索をかければ日本人が薄給で酷使され、苦しんでいる様子は労せず見つかります。連休明けに飛び込み自殺が増える事は電車通勤している人であれば常識になってしまっているのではないでしょうか?
 技能実習生が転職できないと言う仕組みを除き、その他は国内の労働問題として捉えるべきでしょう。日本人、外国人区別なくこの問題に取り組みべきでしょう。
 と言うは易しですが…根深いですよね。このテーマだけでこのブログの比じゃないくらいの文章が必要になってしまいます。

 ●日本だけでは無いんです
 この労働問題は日本だけの問題かと言えばそうではありません。ベトナムでも、全く同じでは無いにしろ賃金や労働時間、労働安全や児童労働等問題にあふれています。
 ベトナム人は大きな理想を描いて来日して、労働問題で失望します。でも振り返って見るとベトナムで同じ問題が起きている。その他実習を受け入れている国でも問題が起きている。日本で様々な問題が起きているのに、ベトナム人が日本に来続けるだろうと思う理由はここにあります。

 ●偽装留学生問題をご存知ですか?
 技能実習生ほどではありませんが、留学生も数多く日本を訪れています。彼らは留学ビザで日本に来て、大半は日本語学校に通っています。一部優秀な人は大学に通っていますが、ここでは対象としてません。
 技能実習生はまだ管理団体があり、企業という受け入れ先があり、働きに来ている部分もあるので給料もしっかり出るところは出ます。対して留学生はアルバイトをする時間に制限があります。つまりは収入に大きな制限があるわけです。
 にも関わらず、彼らの多くは借金をして日本に留学するパターンが多く、生活が破綻するリスクがとても大きいのです。

 技能実習生の問題が表に出てきており、偽装留学生問題はここのところ隠れてしまっています。しかしこれは日本にいる外国人として無視できない数であり、セットで考えていかないと危険です。
 またこの偽装留学生問題があるから技能実習生はまだいいルート…となってしまっている側面もあります。

(また後日追記して更新します…)

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