『大竹伸朗展を見てきた』

『大竹伸朗展を見てきた』

 2023年5月30日、愛媛県松山市にある愛媛県美術館で開催されている大竹伸朗展を見てきた。氏の作品展を見るのは何年ぶりだったのか調べてみると、2013年に見た高松市の丸亀でみたニューニュー展でおよそ10年経っていた。
 早速ざっくりと幼稚な感想なんだけど、大竹伸朗の作品群は一番好きだ。
 初めて氏の作品展を見たのは20歳、当時美術専門学校在学中だった。今はなきキリンプラザ大阪で開催された『ダブ景』展を見た。その時展示されていたのは『ジャパノラマ』と題された国内各地の看板やどこかの商店の主人が描いたマッチの絵などを模写するだけの作品。氏のインタビューの動画で見たが「オリジナリティーが嫌い」というのも頷ける傑作だと思う。『ダブ平&ニューシャネル』もこの時初めて見た。友人と一緒に見たのだが、二人でなんかヤバイな!?と言い合った。他にもただの木材、コーナンでふつうに売ってありそうな木の棒を蛍光色にペイントしたものが吊るされてあって、それすら異様でかっこよく見えた。
 
 あのとき感じたやばさ。
 壮年も終わりに差し掛かかり、氏の展示を10年ぶりに見てヤバイという感覚が沸々と蘇ってきたように思う。それだけで大満足だった。
 このよくわからない不明瞭なヤバイという感覚なんて大人になればなるほど必要がなくなってくると思うし、自分も現に忘れかけていた。社会に埋もれてしまったという大それたことでもないけれど、薄れていくもんなんだ。このいい雰囲気のヤバイ感覚ってどういうことなんだろうともう一度考え直したい。いい雰囲気、なんて言ってしまうと、もうヤバくないんだけどね。でも、悪い雰囲気のヤバイはどことなくご法度で目も当てられない気がするんだ。私が所有する80年代に刊行された美術手帖に大竹伸朗の絵が載ってあって、インタビューの記事で「絵を見て美しいとかより、絵を見てやばいなんて最高、僕ももっとやばくならなきゃ」というようなことが書かれていたのを展示を見て思い出した。それでたまたま2日前、80年代どこかで開催された氏の展示の紹介動画をユーチューブで見た。愛媛県立美術館で最も感嘆とさせられた作品『ゴミ男』を既に展示している映像だった。やや、というかかなり臭い言い回しで言えば、青年の大竹伸朗は既に大竹伸朗で今も大竹伸朗なのだと思った。
 『大竹伸朗展』は愛媛県美術館での会期後、富山県へと巡回する。数ヶ月でも今の自分とはまた違った感覚、氏のヤバさを改めて確認しに再度足を運んでみようと思っている。単純にどんな展示の見せ方なのかと、また見たいってだけなんだけどね。

百円ください。お願いします。