Note 107: オッサンが嫌われる理由

ネットというのはだいたい対立しているもので、ある陣営が別の陣営に叩かれているが、若者叩き、女性叩きはあまり起こらないが、オッサンというのはかなり叩かれる。
日本のパブリック・エネミーだ。
オッサンの一人として悲しい限りである。

男女で比較すると、男性というのは歴史的に既得権者であって、叩かれてもしょうがない気がする。
アメリカのBLM運動みたいなもんで、これまでの借りを返してもらうという意味があるだろう。

老若で比較すると、高齢者は社会的に恵まれている。
単純に高収入の可能性が高いし、権力者も高齢者だし、選挙に行くのも高齢者だ。
だからどうしても高齢者びいきの世の中になり、風当たりは強くなる。

でも、最近のオッサン叩きというのは、そういうのとまたちょっと違う。
「オッサンなるもの」「オッサン性」が嫌われている気がする。

ぼくは10年間ぐらい社会実験して「オッサンというのは嫌われてもしょうがないなー」と確証を持った事象があった。
個人的な経験である。

いぜん働いていた会社が、横浜ランドマークタワーというところにあった。
日本有数の高層ビルであり、観光地であって、平日から観光客が押し寄せる。

観光客はとうぜん最上階の展望台に行きたい。
ところが、オフィス階に行くエレベーターと観光客用のエレベーターは違うのだ。
まあ、サンシャインであろうが新宿副都心であろうがよくあるパターンだが、ランドマークタワーはこの区別が分かりづらく、相当数の観光客がオフィス用のエレベーターの前で立っている。
とうぜん目的地に到達できず、かわいそうだし、エレベーターが混むのも迷惑なので、観光客然とした人が、自分が乗るオフィス用のエレベーターの前で立っていると「このエレベーターはオフィス用ですがよろしいですか。展望台には行きませんよ」と、せいぜいにこやかに声を掛けていた。

こういう風に、知らない人から親切に声を掛けられたらどうしますか。
ぼくが声を掛けた人のうち、若い人や、歳を取っていても女性の場合は「ああそうですか、スミマセーン、ありがとうございます」と言って、ぼくが指し示す方向に向かっていく。
しかし、歳を取った男性の多くは、こちらをジロリと見て、何の挨拶もなくその場を離れる。
あるいはぼくを「無視」して、そのままその場を離れる。
考えられますか。
ぼくは他人に親切にされて「無視」したことは、ただの1回もない。
しかし、多くの、日本人の高齢者男性は(外国のことはよく知らないが)、平然とこれをするのである。
あたかもそれが礼儀のようである。
いや、礼儀なわけあるか!
せいぜい「会釈」「黙礼」をされるぐらいである。
あと「ああ。。」と変な声を出すパターンもある。
とにかく「ありがとう」の一言がない。
老夫婦に声を掛けた時がてきめんで、ほぼ絶対に奥方の方がお礼してくれて、旦那の方はそれをぼうっと見ている。
不愉快げに顔をしかめるのも多い。

まあ、こちらもオッサンであって、服装も超カジュアルであまり偉そうに見えないので、そんなやつに突然声を掛けられて気持ち悪いかもしれないし、公然と不明を指摘されて面白くない気持ちはあるのかもしれない。
しかし、明らかに親切にされているのであって、お礼があってしかるべきではないか。
これを、10年、何組もの観光客にやってきたのだが、とにかく、オッサンは礼を言わない。
本当だ。
無視、会釈、黙礼、ジロリ、「ああ。。」それぞれ20%ぐらいである。
ちゃんと男性からはっきりとお礼を言われたのは1%未満と言うか、ひと組ふた組のような気がする。
(男性の二人連れ以上の場合は、高齢者の中でも若年の方がお礼をいい、年取った方は黙っている気がする。これも興味ぶかい)
経験的にそれが分かったので、オッサンの場合は世話を焼くのをやめようと思ったが、それも業腹だし、途中からは面白くなってきたのでことさらに声を掛けたりしていたのだが、そのたびに仮説が裏付けられたものだ。

こういう現象をまざまざと目にしてきたので、日本のオッサンは社会に嫌われてしょうがないと思うし、自分はそうならないように注意しようと思ったのである。

(この項終わり)


会社員兼業ライターの深沢千尋です。いろいろ綴っていきますのでよろしくです。FaceBook、Twitterもやってますのでからんでください。 https://www.amazon.co.jp/l/B005CI82FA