Note 68: 月蝕歌劇団11月公演「新選組 in 1944」を見た！

今日は下記事で予告した演劇公演、月蝕歌劇団「新選組 in 1944―ナチス少年合唱団―」を見た。

楽しかった！

最初はしばらく演劇とは関係ない話が続くよ。

金曜日が初日で、演劇の初日はアクシデント＆リカバリーが見ていて楽しいのだが（イヤな客！）仕事が立て込んでいたので、先週の仕事は先週のうちに終わらせないと週末思いっきり楽しめないと思って、土曜昼公演からの参戦にした。
（エライ！＞自分）

劇場は、ザムザ阿佐ヶ谷という、広さといい、暗さといい、アングラ具合と見やすさが兼ね備えられたいい劇場。
でも雨の日になると劇場前がぬかるむのはなんとかしてクダサイ。

ぼくは武蔵中原という微妙に不便な場所に引っ越している。
いぜんは新丸子だったので、無批判に東横線＝＞渋谷＝山手線＝＞新宿＝総武線＝＞阿佐ヶ谷という経路を取っていた。
阿佐ヶ谷は高円寺、西荻窪と並ぶいわゆる杉並三駅の一つで、土日だけは中央線快速が通過するので（平日なぜか停車するという方が正しいか）注意が必要だ。
でも引っ越したので、乗換案内を引いてみた。
なんと南武線立川行き＝＞立川＝中央線快速＝＞三鷹＝総武線＝＞阿佐ヶ谷という裏ルートを勧められた。
座って行けてラクチンだったのだが三鷹という用事がなければ行かない駅で思いっきり逆走してしまった。
「豊田」という駅名標を見てビックリ。
それから戻っても間に合う時間だったのだが、中央線の遅れも相まって開演ギリギリになってしまった。

だいたいこの劇団は開場も開演もオすのだが、今回に限ってオさずに進行していた。
ふだんは最前列にがっついて目の間に役者さんしかいない空間を楽しむのだが、今回はなんと、最後列になった。
しかし、最後列は最後列で風情があった。

まず、闇だ！
真っ暗闇の闇！
善光寺のお戒壇巡りだ！
というのは大げさで、かすかにスプリンクラーとおぼしきLEDの明かりがついていたが、真っ暗な客席のワクワク感が楽しかった。

そして、舞台全体が見渡せ、改めて俳優や舞台装置の配置、色彩への気配りが感じられた。
レトロな雰囲気の劇場と演出で、動くレンブラントの絵のような、深いセピア色の空間を楽しめた。

それにしても満員である。
びっくりびっくりだ。
変な人もいなくて、笑うべきところは大いに笑って盛り上がった。

脚本、演出をすべてつとめていた高取英さんの没後、実娘さんの白永歩美さんが代表を受け継がれて１周年の公演だ。
昼夜公演の間に、顔見知りのオタクの人に言われた言葉で印象に残ったのは
「今回の（最近の）月蝕の公演は丁寧に、きめ細かく作られている」
「この話は何回も見ているけど、今回は話が本当に良く分かる」
というものだった。

高取さんの生前の公演は、それが狙いだったのだが、ラフで、荒っぽい演出だった。
それも魅力だったが、没後の再公演は「高取さんが本当に伝えたかったこと」を、劇場全体でじっくり噛みしめるような演出になっていて、笑いも泣きもしっかり味わえた。

俳優さんではなんと言っても廻天百眼の看板女優、おなじみ紅日毬子さんの七変化が見ものだった。
どんな舞台も、紅日さんが入ると、ココイチで例えるとカレーがハンバーグカレーになるぐらいゴージャス感が爆アゲするけど（わざわざココイチで例えなくても良かったけど）今回はゴージャス感がさらに特盛で、ファン熱望のナチス将校に加え、メガネの美少年合唱団員、ライザ・ミネリを超えたプリ尻のキャバレエダンサー、そして青い目の着流し和風ヒーロー（あと３役ぐらいあったらしい）という大活躍で、眼福の極み、見るだけで本当に寿命が伸びる。ありがたや〜〜

そして才能の固まり、ナチュラルボーンアーティスト岬 花音菜ちゃんが、ガチの歌のうまさを生かした役で良かった。
踊りもすごいけど歌もうまいのね。
この生声を劇場で、間近で聞けるのは、今日ザムザにいる観客だけ！ という喜びをしみじみと感じた。
悲しい役だけど……。

最後、桜の花びらが舞い散る舞台を見ていて、最近は長州出身の総理大臣の「桜を見る会」が話題だけど、そんな時代を予見していたような、この国を支配する禍々しい閉塞感と、それを若い暴力で打破しようとした新撰組の挫折と、挫折しなかったかもしれない可能性について、いろいろ思いをめぐらせた。

こんな文章読んでいても意味がわからないと思うけど、それは見てくださいと言うしかない。
明後日、月曜昼までやっている。

追記：

俳優として、また「詩劇ライブ」の歌手として、月蝕から生まれたアイドル・ユニット「月蝕Gigelle21」の姿が見られて良かった。
高取さん作詞のこの歌、歌詞が超ウケる。
大好き。

（この項おわり）

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