Note 71: 例のあの加湿器の使い心地は実際どうか


また買い物ネタ。

加湿器、という家電ができたとき、別にあってもなくてもいいものをまたメーカーが売りつけに掛かっているな、と思ったものだ。
ジメジメした気候は日本の悪いところだし、冬は(太平洋側は)カラッとしていて清々すると思っていたからだ。
しかしある年、インフルエンザに罹ってから考えが一変した。

インフルエンザにまだ罹ったことがない人は「風邪のひどいやつ」ぐらいに捉えていると思うが、認識が甘い。
「風邪の超・超・超・超・ひどいやつ」である。
どれぐらい違うかというと、遊園地のおサルの電車とジェットコースターぐらい違う。
最近は特効薬があって、飲めば治るんだけど、ぼくの場合ぜんそく体質なので、熱が下がってからも2ヶ月ほどはゲホゲホやっている。
辛い。

このインフルエンザ、および風邪いっぱんに、部屋の加湿がそうとう有効らしい。
風邪類のウイルスは、エヘン虫というぐらいで、表面がトゲトゲしていて、それが喉の表面にくっついて体に侵入する。
(DNAを打ち込んでくる。)
部屋を加湿していると、ウイルスを撃ち落とすだけではなく、喉もうるおすので、風邪類に罹りにくくなり、罹っても治りが良くなるという。
そういうことらしいよ。

それで、いちどインフルエンザで死線を彷徨ってからは、せいぜい部屋を加湿してきたが、超音波加湿器というものも危険だとわかった。
超音波加湿器というのは、水道の水を超音波で細かいミストにして噴出している。
安価でファッション性の高い製品が多く、音が静かで、電気代も安いので、人気がある。
ただ、弊害があって、水道水をそのまま噴出しているので、カルキ(カルシウム塩)が壁について白く汚れる。
それだけでなくて、水を加熱しないので、フィルターにレジオネラ菌という微生物が繁殖し、それを部屋に撒いてしまうという。

このレジオネラ菌の感染症で、大分県(ちなみにぼくの故郷)でお年寄りが亡くなったそうだ。
大変だ。
この感染症は初期症状が風邪に似ているというからいやらしい。
風邪に罹りたくないから部屋を加湿していたら、風邪っぽい初期症状の重篤な病気に罹ってしまうことになる。

不幸な事態が報道されたあとも、超音波式加湿器は今も多く売られているので、メーカー各位は対策しているんだと思うが、そういう話を聞いたので、スチーム式の加湿器を買おうと思った。
スチーム式はお湯を沸かして蒸気を出すもので、煮沸消毒されているので黴菌の心配は少ないだろう。
難点はお湯を沸かす音がすることと、電気代が掛かること。

スチーム式と言えば、ドラッグストアなどにもおいてある、こいつである。

いろいろ考えて、これを買ってみた。

Amazonに同じ商品の出品形態がいくつかあるが、ぼくはメキシコ産の並行輸入品を買ったが、これがちょっと失敗した。
これから買う人は、少し高くなるし、中身の品質は変わらないと思うが、日本語説明書つきというのを買った方がいいと思う。
ぼくは英語とスペイン語しかない説明書を読んでいろいろ当惑した。

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「まず、水道水だけを入れて10分加熱してみろ」と書いている。
で、もしも蒸気が出ていなかったら、それはあなたが住んでいる地方の水道水がミネラル分を含んでいないから、塩をひと摘みかふた摘み入れてみろと書いてある。
本当にそう書いているのである。

中学時代に習ったことだが、日本は新期造山帯と言って、比較的最近土地が出来たので、水が軟水である。
一方、欧米は古期造山帯で、硬水だ。
それで、日本で使うと水に電気が流れないので(?)塩を入れろということらしい。
すげえアナログ・・・。

で、さらに10分経って、もしも蒸気が出なかったり、弱かったりしたら、さらに塩をひと摘みかふた摘み入れろ、この過程を10分おきに、好みの加湿量になるまで最大8回くりかえせという。
ちなみにひと摘みかふた摘み(1 to 2 pinches)とはティースプーン8分の1のことだと書いている。
大量に入れたらヒューズが飛ぶから気をつけろと書いている。
いかにぼくが英語が出来ないとはいえ、これぐらいのことなら分かるけど、あまりにもハイテクであってしかるべき家電のイメージとはかけ離れた内容なので、本当にそんなことが書いてあるのか疑わしいのである。

とりあえずやってみると、3摘みぐらいでそうとう盛大な蒸気が出た。
逆にちょっと出過ぎかなと思うぐらいだ。
これ、逆に弱めるにはどうするのって思うけど、水を捨ててさっきより少し少ないぐらいの塩を入れればいいだけだと言う。
ただしその場合も蒸気が出るまで15分は我慢しろと言う。
自分にとっていい塩加減を覚えておけということだ。
すげえな!

なお、週に一回は、蒸気発生機を深さ4インチのお酢(white vinegar)に10分浸し、流しの上で下の部分を手で覆いながら、上から水を入れて左右に振り洗いする。(上下に振り洗いしてはならない。)これをお酢の匂いがなくなるまで繰り返せと言う。
本当!?
ねえ、本当なの!!??
深さ4インチ(10センチ)まで蒸気発生部(直径10センチぐらいの円筒)が埋まるお酢って結構大量だぞ。10センチの立方体と考えても1リットルである。
無理じゃね???

いろいろな人に聞いたけど、いわゆるスケール(水道水に入っている白い固形の物質)が析出して加熱部に当たるので、それを洗うんだけど、まめに洗うなら水道水でもいいし、普通の加湿器用のクエン酸タブレットでもいいという。
また、3千円なら、エコではないけど2年おきとかに買い直してもいいのかなという気もする。

いろいろ書いてきたが、品質、性能的には大変満足している。
まず容量が大きい。
日本製品で3.78リットルはなかなか売ってないよ。
もっと大きなタイプもある。
加湿の強力さも気に入っている。
また、上記の通り、塩加減を試行錯誤する手間さえ惜しまなければ、文字通り分子・原子レベルでの調整を行うことが、原理的には可能である。

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ひとつ注意点として、ACプラグの金具の一方が、相当大きい。
日本のコンセントの差し口も、注意して見ると一方が他方より大きくなっている。
ただ、日本の場合この差はちょっとであって、逆にしても入るし、電気は使える。
(オーディオなどは正しい向きに入れたほうが音が良くなるという人もいるけどホントカナー)
ところが、メキシコ産ヴィックスの加湿器の場合、金具の大小差が極端で、逆向きには入らない。
日本のコンセントでも、壁のはたいてい正しく一方が大きくなっているから、向きを正しくすれば入るが、そのへんで買った安物の延長コードや三叉コンセントなどは、入らない場合もある。

他にも、スイッチはなくて電源を入れるとオン、抜くとオフであるとか、3センチぐらい水を残してポンと途中で加湿が終わってしまうとか、いろいろクセがある。

気になる騒音だが、いわゆる水を沸かしているポコポコポコポコ・・・という音である。
自然音であり、ぼくは慣れた。
(実は日本メーカー製も買ったが、モーター音がうるさすぎて返品してしまった)

どうしても面白いところ、変なところ、困ったところばっかり書いてしまうが、全体的にオススメだ。これ以上シンプルな家電はないだろう。

(この項おわり)

会社員兼業ライターの深沢千尋です。いろいろ綴っていきますのでよろしくです。FaceBook、Twitterもやってますのでからんでください。 https://www.amazon.co.jp/l/B005CI82FA