第6回:役職定年の節目(その1)★右型上がりの会社人生が崩れる瞬間! 「役職定年」 その時私たちは…★

高久和男と昌宅由美子の「シルバーではなく、輝き続けるゴールド人財への道」

由美子:和男さんは5年前に役職定年を迎えられましたが、その時はどう感じましたか?

和男:自分の親父の世代は55歳が定年でしたから、それを思うと60歳の定年退職までまだまだ5年あるのかぁと思ったように記憶しています。55歳の役職定年ってあまり実感がなかったというのが本当のところですかね。
一般的に55歳の役付の方は管理職としての任が解かれ、マネジメントからラインの仕事に変わる人が多いのではないかと思います。私は当時役付でしたが、プロジェクトのリーダーを任されている途中での役職定年でした。品質・採算・納期の責任者であるプロジェクトリーダーの役割は、役付社員とか一般社員とかに関係がない役割なので、役職定年になったからと言って働き方の違いは何もありませんでした。スケジュールに遅れが発生していないか、作業負荷となっているメンバーはいないか、などなど毎朝部下とミーティングを行い、そのあとは対策を考えたりお客様や会社の上長に説明する資料を作ったりと、仕事を終えるのが毎日22時という日々でした。仕事が終わったから帰ると言うよりも、22時になったから帰るという生活でしたね。

由美子:そうなんですね。でも、同じ働き方をしていても役職定年でお給料は減った訳ですよね?

和男:ええ、そうですね。我が家の場合家計費の管理は妻任せだったので、お小遣い制の私は正直あまりピンときていなくて・・・。給料が下がって「大変だ! 大変だ!」と妻から言われ、小遣いは減らされましたけどね。

由美子:それじゃあ、早く帰れる日でもあまり飲みに行けなくなっちゃいましたね (笑) 。そういう働き方に対して何か理不尽なものは感じなかったんですか?

和男:報酬よりも責任を優先してしまうのは昭和世代の働き方なんでしょうか・・・。自分の役割や報酬に応じた働き方しかしない割り切った考え方の人もいると思いますけど、私の場合は前者でした。由美子さんの場合はどうでしたか?

由美子:私の役職定年の時は、和男さんとは状況が違いますね。私は、役職定年と同時に全く別の部署へ異動しました。それも、いままで経験したことがない部署です。直前までは、人材開発での研修や女性の応援をしていたので関連がある部署かそこに残るのかな、なんて勝手に考えていたんです。
給与が下がることは、もちろんショックでしたよ。でも、それよりも私の場合は、役が外れて「あなたはお役御免よ!」って言われたような気がしてショックだったんです。
もちろん、役職定年の制度は、役が外れることって頭ではわかっていましたよ。でも、実際になってみると、やっぱりショックは大きいです。
会社のためにこんなに頑張ったのに、「お役御免なんだ!」と思ってしまったんですね。

 「お役御免なんだ!」に「なんでそこの部署?」という気持ちがプラスされて、異動を知ってしばらくは、心の整理がつかなかったです。今いる部署の自分の荷物を整理して、自分で台車に乗せて運んでいくときの気持ちも、なんとも言えなかったですね。ひとりでダイバーシティの担当になって、ここまで引っ張ってきたのは自分なのにとか、まだまだ、できるのになんで?とか心の中にいろんな気持ちが渦巻いていました。
会社最優先で会社のために尽くしてきたのに!という思いもありましたよ。
 
和男:そうか、由美子さんにとっては大ショックだったのですね。でも、由美子さんみたいに役定で感じる人の方が多いかもしれません。僕の感じかたの方が特別かもしれない。病気だったから。
会社の制度によっても役職定年後の扱われ方が色々と違うようですね。私はこの担当していたプロジェクトの途中で病気が再発し、納品まで後1か月というところで入院せざるを得なくなり、プロジェクトリーダーを降りることになってしまいました。そのあとは後任が後を引き継いでくれて、赤字を出すこともなく期限通りにプロジェクトは完成したのですが、翌年の人事考課で降格することはなかったのですが、給与テーブルが1ランク下がりました。評価項目に『プロジェクトを最後まで責任をもって完遂したか』というのがあり、この評価が悪かったからなんです。プロジェクトが完成してからの入院だったらどう評価されたんですかね。後1か月ってところでの入院だったんですけどねぇ。「病気だったんだからしょうがないだろ!!」と自分に言い聞かせましたが、会社というところは病気だろうがケガだろうがスキル不足だろうが、与えられたミッションを達成できないと評価されないんだとつくづく痛感しました。

由美子:通常は、給与、役職、役職定年後の仕事内容でモチベーションが違ってくるんだと思いますが、和男さんの場合は、役職定年で給与が下がったことよりも、病気でプロジェクトリーダーの責任が果たせなかったことで評価が下がったことの方がショックだったんですね。そのショックは、責任感を持ってやっていたのに、会社に見捨てられたような気持ちですよね。役職定年のショックと似ています。

和男:そうですね、55歳になったら給料が下がることは前から認識していましたが、入院で評価が下がるとは思ってもみませんでした。でも、僕のショックも、会社に見捨てられた、会社は冷たい、ひどいとものすごく感じましたから役定のショックと、会社に対する気持ちという意味では同じかもしれません。

由美子:そうですね。役職定年の節目は、人にもよりますが大きな葛藤があります。「こんな気持ちのまま仕事を続けていくのか・・・」と私も思っていました。だから、まず皆さんに伝えたいのは、ショックを受けて当然ということです。会社命で頑張ってきたほど、責任感の強い人ほどショックが大きい。だから役職定年でショックを受けるのが悪いのではなく、そのショックとどう向き合い、どう生きていく、働いていくのかが重要です。私たちの周りをみていても、役職定年でモチベーションが低迷してしまったり、急にやる気が失せてプライベートな趣味に走ってしまうような人、周りに迷惑をかけるような働き方になってしまう人がいます。次回は、そんな方々をちょっと紹介しながら役職定年を乗り越えるための、ちょっとした気持ちの切り替えのヒントなどをお伝えしたいと思います。

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