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手術note23 大腿骨遠位変形骨切術を実施した再発性膝蓋骨内方脱臼の症例

症例
サモエド、1歳3ヶ月齢、避妊メス
両膝関節に膝蓋骨内方脱臼グレード2があり、他院にて右膝に2回の手術が行われていたが再脱臼したため当院を受診されました。来院時に跛行はそれほどないものの、脱臼が恒久的になりつつあったため、今後の膝関節伸展制限の発生や関節炎の進行を抑えるために手術を勧めました。
X線検査では大腿骨遠位端の内反変形が認められ、一般的な滑車溝造溝術や脛骨結節転移術だけでは脱臼がコントロールできない可能性が高いと考えました。大腿骨の頭尾像からaLDFA( anatomical lateral distal femoral angle)を計測すると、112°と大型犬の正常範囲である94-98°から13-18°の変形があることがわかりました。そこでCORA(center of angulation of rotation)法に則って大腿骨遠位変形骨きり術を主体に膝蓋骨内方脱臼を実施いたしました。

大腿骨頭尾像


骨切り計画

手術は横臥で前外側アプローチを行いました。滑車溝は掘削法で造溝されていましたが再脱臼に伴い仮骨や軟骨で充満していました。また膝蓋骨は高度に摩耗し周囲に結合組織が形成されていました。

滑車溝と膝蓋骨が観察される

大腿骨骨切術に加えて各手術も実施いたしました。滑車溝は軟骨や結合組織を取り除き造溝をやり直し、脛骨結節転移術を実施いたしました。内側広筋、縫工筋頭部、内側関節包のリリース、外側関節包縫縮も行い再脱臼しないことを確認し閉創しました。


術後のX線画像
術後のX線画像

再脱臼はなく術後約2ヶ月で骨癒合も認められ当院での治療は終了いたしました。
膝蓋骨脱臼は脱臼の時期、犬種、年齢などで複雑な病態を持っていることがあります。全ての手術に言えることですが、術前に正確な検査を行い、全ての病態を把握し、しっかりとした術前計画を立てる必要があります。これを再認識させられる症例でした。

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