手術note2 脾臓の巨大な腫瘤

※ この記事は小動物医療関係者向けです。

9歳のラブラドール・レトリバー、かかりつけの動物病院でお腹の張りを指摘され、検査で脾臓の巨大な腫瘤が見つかり摘出手術を行いました。

画像検査では腹腔内に巨大な腫瘤が見られます。

腹部レントゲン

手術:脾臓腫瘤摘出(脾臓摘出術)
手術時間:66分
麻酔時間:88分

腹部正中切開〜傍陰茎切開でアプローチします。
腫瘤を腹腔外へ出せるくらい大きく切開をする必要があります。

大網を被った脾臓の腫瘤

腫瘤は優しく取り扱い、腹腔外へ出して作業します。
腫瘤を落下させないように注意が必要です。
腫瘤には大網が癒着しているので血管シーリングデバイスなどで止血しながら癒着した大網を剥がします。
その後は定方通りに脾臓に分布する血管を処理して脾臓を摘出します。

腹腔外へ取り出した脾臓と腫瘤

閉腹は定法通りです。
摘出した腫瘤は3.2kgありました。

摘出した脾臓腫瘤

手術後の経過は良好で、翌日に退院しました。
病理組織検査の結果は血腫と髄外造血で、予後は良好です。

手術のポイント
脾臓の腫瘤はしばしば非常に大きくなりますが、周囲臓器と癒着することは稀で、ほとんどの場合は大網が癒着する程度です。
そのため癒着した大網の処理には時間が多少かかるものの、それ以外は通常の脾臓摘出とあまり変わりません。
大網の癒着は広範囲におよぶこともあり、止血処理には血管シーリングデバイスが使用できると便利です。


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