手術note22 副腎腫瘍の摘出

ヨークシャー・テリア、9歳、オス
多食、パンティング、腹囲膨満、皮膚の菲薄化などがあり、かかりつけの動物病院さんで左側副腎の機能性腫瘍と診断されて、手術を目的にご紹介頂きました。

エコー検査では左副腎に腫瘤状の病変がみられました。

手術計画を立てるために手術前にCT検査を受けてもらいました。
左副腎に腫瘤がありますが、血管浸潤などはみられませんでした。

機能性の副腎腫瘍であり、ご家族と相談のうえで手術を行うこととなりました。

術式  :左副腎摘出術
手術時間:76分
麻酔時間:116分

上腹部の正中切開と傍肋骨左側横切開で開腹アプローチしました。

左腎臓の頭側の後腹膜下に副腎と腫瘤がみられる

副腎周囲の後腹膜や後腹膜下の組織を、血管リーシングデバイスやバイポーラなどで止血しながら分離し、横隔腹静脈の後大静脈側を止血クリップで止血して切断して副腎を摘出しました。

副腎周囲の分離
止血クリップによる横隔腹静脈の止血
摘出後

出血がないことを確認して閉腹しました。

手術後の経過は順調で術後3日で退院しました。
病理組織検査の結果は副腎皮質腺腫でした。

💡ポイント 副腎腫瘤の手術適応

副腎腫瘤の手術適応は以下の点に考慮して検討します。

機能性の有無
機能性(副腎皮質機能亢進症を伴っている)か非機能性かを臨床徴候や検査所見などで判断します。

腫瘤が悪性が良性か
悪性が疑われる場合には手術を積極的に考えますが、手術前に良性か悪性かを判定するのは難しい場合も多いです。

大きさや周囲への浸潤
大きい腫瘤や特に血管内浸潤がある場合には手術のリスクに影響をします。

良性か悪性かを判断する術前の明確な基準はありませんが、大きさが2cmを超えるものは悪性である可能性が高いという報告もあります。海外の報告なので小型犬の多い日本で同じ基準で考えて良いかはわかりませんが、増大傾向があり2cm前後まで大きくなる副腎腫瘤は手術を検討しても良いのかもしれません。

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