手術note12 大腿骨遠位骨幹端粉砕骨折の猫

サイベリアン 10ヶ月齢 室内でおそらくキャットタワーから転落し、左側大腿骨遠位骨幹端粉砕骨折を呈し当院をご紹介されました。
X線写真のラテラル像では遠位骨折端は近位尾側に変位し部分的に粉砕骨折を起こしていました。頭尾像では遠位骨折端は近位外側に変位し外側部で粉砕した小骨片が観察されました。

ラテラル像 遠位骨折端は近位尾側に変位し部分的に粉砕骨折になっている
頭尾像では遠位骨折端は近位外側に変位し外側部で粉砕した骨片が観察される

横臥位に保定しし前外側切開でアプローチしました。X線所見にあったように遠位骨折片の近位外側は粉砕していました。さらに近位滑車溝の軟骨が剥離し関節内の骨折もあることが分かりました。

近位滑車溝の軟骨が剥がれている

滑車溝の軟骨を0.8mmKwire2本で整復し、ピンパンチでKwireの断端を埋没しました。

滑車溝軟骨がKwireで整復されている

近位から順行性に髄内ピンを刺入し骨折を整復しました。その後外側に2.0mmのコンディラープレートを設置しロッキングスクリューで固定しました。周囲の骨片を骨欠損部に充填しました。

コンディラープレートで固定


術後ラテラル像
術後頭尾像

手術後から患肢の使用があり、翌日には負重が可能でありました。術後2週間後の再診では歩行が可能でX線検査でも異常は認められませんでした。

猫の骨折は高所からの転落が多く、粉砕骨折することがよくあります。粉砕骨折はアラインメントを正確に回復させることが難しく、インプラントの強度も強くする必要があります。また関節に近い骨折ではスクリューを挿入するスペースに限りがあるためかなり難易度が高くなります。この症例ではさらに滑車溝を形成している軟骨が剥がれていたためその整復も必要でした。

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