手術note16 気管虚脱で呼吸困難の犬

8歳のポメラニアンが呼吸困難で来院し、レントゲンで重度の気管虚脱と診断しました。
以前から呼吸の問題を抱えていたようですが、最近になり急性に悪化したとのことでした。
酸素ケージから出るとすぐにチアノーゼになってしまう状況だったため、急遽、気管虚脱の整復手術を行うことになりました。

手術前のレントゲン:頚部の気管内腔がほとんど確認できなくなっている

術式  :気管外プロテーゼ設置術
手術時間:102分
麻酔時間:143分

頚部腹側皮膚の正中切開から舌骨胸骨筋などを分離して気管にアプローチしました。
気管は重度に扁平化し、腹側の気管軟骨も陥凹している状態でした。

頚部気管へのアプローチ

気管周囲の血管や神経を温存しながら、気管を全周性に剥離しました。

気管周囲の剥離
気管周囲の剥離:血管や神経は温存する

気管径10mmに合わせて作成したプロテーゼを気管周囲に巻き付けました。
プロテーゼと気管を4-0の非吸収糸で縫合して固定しました。
縫合は1周ごとに7-8糸を目安に行いました。

プロテーゼ設置後の気管

筋肉と皮下・皮膚を縫合閉鎖して終了しました。
手術直後のレントゲンでは気管内腔が術前よりも広がっていることが確認できました。

手術直後のレントゲン:気管内腔が広がっている

手術後は呼吸状態が顕著に改善し、早期に酸素ケージから離脱、術後3日で退院しました。

術後2週間の再診時のレントゲンでは広がった気管内腔が維持されており、呼吸状態も非常に良好とのことでした。

術後2週間のレントンゲン

今回の手術では呼吸状態を劇的に改善することに成功し、軽度な咳は一過性にありましたが、虚血による気管壊死などの重度な手術合併症の徴候はありませんでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?