手術note5 胆嚢摘出と総胆管切開

12歳のポメラニアンさん、急性の嘔吐でホームドクターさんを受診、黄疸があり胆嚢粘液嚢腫と胆管閉塞と診断されました。

来院時の超音波所見

内科治療では改善がなく、手術を行うことになりました。

術式  :胆嚢摘出術、総胆管切開術
手術時間:73分
麻酔時間:103分

上腹部の正中切開でアプローチしました。
胆道系は胆嚢、胆管、肝管のいずれも顕著に拡張していました。

拡張した総胆管
肝管も拡張
胆嚢を剥離したところ

総胆管は十二指腸との接合部まで拡張し、内部には非常に硬結した所見が触知されました。
閉塞物が強固であるため総胆管洗浄による閉塞の解除が困難と考え、総胆管の切開を行い閉塞物を除去しました。

総胆管の切開を行い閉塞物を除去したところ
総胆管内の閉塞物

閉塞物は胆汁やムチン成分が凝固して硬結したものと判断しました。

総胆管の切開部の縫合閉鎖

ついで胆嚢を定法通りに切除して、総胆管内を洗浄して総胆管の縫合部を縫合して閉鎖ました。
肝生検を行い、閉腹、閉創して手術を終了しました。

病理組織検査
胆嚢:胆嚢粘液嚢腫
肝臓(肝生検):中程度の化膿性胆管肝炎/中程度の線維化

手術後は順調にビリルビンの値が改善しましたが、基準範囲内までなかなか到達しませんでした。
病理組織検査の結果を受けて胆管肝炎の治療としてプレドニゾロンを用いたあとはビリルビンは速やかに基準範囲まで改善しました。

豆知識💡

ポメラニアンは近年、胆嚢粘液嚢腫の好発傾向が認識されています。
それと共に、ポメラニアンという犬種自体が胆嚢粘液嚢腫の手術後の死亡リスクとの関連することが報告されており(PMID: 31492387)、手術の適応や実施に関してより慎重な対応が必要になりそうです。


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