三田村信行の源平盛衰記

やはり、どんな内容でも、書く人の文章が面白ければ、なんでも面白くなってしまう、と思う。

これは、古典舞台芸術の、演者が面白くなければ、物語自体がつまらなくなってしまう事、と同じ事だ。

面白く演じるためには、物語自体を知り、自分が一番におもしろいと思っていないといけないと思う。

三田村信行の源平盛衰記は面白い。学校の図書館にあるような本で、割とやさしい日本語で書かれている。けれど、ワクワクする。

一冊目を読み終わって、すぐに次の二冊を図書館で予約した。ちなみに吉川英治の新平家物語は、最終巻を読み始めた所だ。

吉川英治の新平家物語も素晴らしい、でも、もう一度読まないといけない。いろいろ読み飛ばしてしまった箇所があった。

どうでもいい余談ですが、私は数年前に、「梁塵秘抄」という後白河上皇が編纂した歌(今様)をもとに作曲された歌曲をリサイタルで歌った。

フラン人のコーチが譜面を持っていて、私に勧めてくれた。その時は、後白河上皇がどんな人間か、文字としての情報は調べたけれど、言ってみればキャラクターのアイデアは全くなかった。

今は思う。何故あんな戦いの渦中にいた人が、あのような素敵な歌を編纂しようと思ったのか。

「眠気を覚ますような鼓の音が可愛らしい」

確かそんな歌があった。友人は、「誰かが下手な鼓を練習していて、びっくりするような音だけど、それが愛おしい」と解釈を手伝ってくれた。私は、「ふーん」くらいの感想だったけれど、たくさん人が戦って、裏切り、裏切られ、めちゃくちゃになった都、隠れている離宮で、きっと小さな子や、孫が、どこかで鼓の練習などしていた平和だったころの様子なんかを思い出していたのかな、と今は想像することができる。

ああ、自分を戒めよう。古典の名作は、いかすも殺すも演者次第。



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