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the dialogue #2 社内文化を変えるアプローチこそが健康経営に直結する。「POZ」導入企業との対話。

quantumのfoundersが、共に0から1を生み出そうとするパートナーや、尊敬する起業家、有識者との対話の中から、新規事業の可能性や、成長へのヒントを探っていくシリーズ the dialogue -つくりだす人との対話-

quantum発のセルフ・コンディショニング・サービス『POZ』事業責任者の金学千がヘルスケアテックの可能性を掘り下げるシリーズ第2回目の今回は、『POZ』の導入企業であり、「健康経営優良法人(ホワイト500)」にも認定されている、富士通ゼネラルを訪問。

富士通ゼネラルは、研究開発拠点「イノベーション&コミュニケーションセンター」内に、社員の健康促進を図るスペース「健康デザインセンター」を設け、『POZ』をはじめとしたさまざまなツールを導入している。なぜ、そこまで健康経営に注力することになったのか。そして、なぜ『POZ』を導入されたのか。富士通ゼネラル健康経営推進室の佐藤光弘室長と玉山美紀子氏にお話を伺いました。

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※2019年11月にquantumウェブサイトに掲載した記事の再掲です。団体名やサービス名、肩書きなどは、取材時の記載をそのまま使用しています。


従業員の平均年齢が上がり、健康促進が重要な経営課題に


 何度かお邪魔しながらもしっかりお聞きする機会が無かったので、改めてお伺いします。現在『POZ』を設置していただいている、この「健康デザインセンター」は、どのような目的で設立されたのでしょうか?

佐藤 富士通ゼネラルに健康経営推進室が立ち上がったのが、2017年4月のことです。すでに「健康経営」という言葉は世の中に知られるようになっていましたが、専任の部署を作った企業は珍しかったと思います。とはいえ、メンバーは私と玉山と派遣の社員の方が2人いるだけ。本当に小さな部署です。

玉山 しかも、佐藤さんは富士通ゼネラルの人事部の主席部長でもありますからね。

佐藤 そんな小規模のチームで、当初は健康経営推進のために活用できる場所も、隣の「健康管理センター」しかありませんでした。保健師の方に常駐していただき、社員の健康上の相談に乗ってもらえるスペースです。しかし、ここはもともと実験室だった場所に間仕切りを置いただけの部屋で、面談の内容が外に筒抜けになってしまうような状態でした。

それはいけないということで、富士通ゼネラルの社長に「せめて壁を作ってくれませんか?」とお願いしたら、「いっそのこと、もっと健康経営について発信できるような場所を作ろう」ということになり、ここまでの広さのスペースができたのです。つまり、「健康デザインセンター」は、単に社員が運動するためのスペースというわけではなく、会社が「健康経営に注力する」というメッセージを発信するためのシンボリックなスペースとして設けられています。

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玉山 実際、リフレッシュ目的以外にも活用してもらっています。たとえば、営業の人が販売代理店さんを招いて会議をするときに、「普通の会議室では面白くないので、ここを貸し切らせてもらえないか?」という申し出もあります。新しいアイデアを出すために、いつもの業務から離れた場所でミーティングしたいというときにも活用されているんです。

――そもそも、なぜ富士通ゼネラルは健康経営に注力されているのでしょうか。

佐藤 私はもともと富士通株式会社の人事部にいました。健康経営に関わるようになったのは、今から10年くらい前に当時の富士通の社長が、「社員とその家族の健康を大切にすることは、重要な経営課題である」というメッセージを出し、健康推進本部を作ったときです。通常、こういう部署は総務や人事の下に作られるのですが、会社がどれだけ力を入れているか示すために、人事部と同列に置いたんです。玉山も同時期に、キャリア採用でこの部署に加わりました。

玉山 当時の富士通は社員の平均年齢が40代に上がってきたことで、健康上の不安を抱える人が増えていました。残業が多く、食生活も乱れている人が山ほどいました。海外赴任先で倒れてしまう人も少なくなかったんです。社員が次々と倒れるようなことになってしまっては企業にとって損失ですから、健康経営の推進が経営課題として浮上してきたというわけです。

佐藤 それが3年前に「富士通ゼネラルでも健康経営をやりたい」ということになり、こちらに転社することになりました。でも、昔ながらのものづくり企業というのは、社内に診療所があって、社員が来たら診てあげるという仕組みなんですよね。それだと健康経営にはならない。体調を崩してから診療するのではなく、常日頃から社員の健康に気を配れるようにしていかないといけないわけです。だから、こういう社員とフラットに接することができるスペースがあることが重要だったのです。


「運動」は健康経営促進のための手段に過ぎない


  世の中で予防医療が注目されているように、健康経営でも、「そもそも病気にならないようにする」ことが重要ということですね。

佐藤 なにかあったら行けるスペースではダメなんです。経営の中の健康ですから、社員の病気を治すことではなく、組織を活性化することが目的で、そのためにも健康でいてもらいたい。じゃあ我々としては、健康でいることの重要性にどうやったら気が付いてもらえるかということが活動の軸になっています。

――つまり、社員の健康状態を改善しようと思ったら、それをサポートするスペースを作るだけではダメで、社内の文化そのものを変えるようなアプローチをしないといけない。

佐藤 まさにその通りです。富士通ゼネラルは経営の苦しい時代が長くて、社内のサークル活動みたいなものがなくなっていました。目先の仕事をやることに必死で、社内からコミュニティが失われていたんです。でも、それでは組織が活性化していかないですから、みんなを元気にするために、川崎フロンターレの応援に行きましょうとか、社員の家族をよみうりランドへ招待したりとか、いろんなイベントもやっていきました。「そんな余裕がどこにあるんだ」という声もありましたが、そういうことを積み重ねていくことで、少しずつ文化が変わってきているんです。

――なるほど。健康経営を推進するためには、社員同士のコミュニケーションを促すような機会を作っていかないと、社内がどんどん暗くなってきて、社員がストレスを感じやすくなり、結果的に体調も悪くなると。

玉山 コミュニケーションが活性化していくと、組織内に「互いに何を言っても大丈夫」という心理的安全性の確保につながります。それは健康に寄与するだけでなく、新しいアイデアを自由に発言できるという企業文化を育てることにもつながるのです。だから、健康経営を推進することは、長期的には新規ビジネスが生まれることにもつながっていくと考えています。

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佐藤 だから、この「健康デザインセンター」も、運動の場ではなくコミュニケーションの場だと捉えています。運動は手段に過ぎなくて、ゴールはあくまでも活気のある職場を作ることです。

玉山 最終的に事業に紐付いていないと、経営判断として投資する意義を見出だせないですからね。

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『POZ』が上司と部下のコミュニケーションツールに


――その意味では、『POZ』のどういった点に魅力を感じて導入されたのでしょうか。

佐藤 ここは職場のコミュニケーションを活性化させるためにリフレッシュしてもらうための場ですから、短時間でできるものを探していました。自分でバランスボールを活用する人もいますけど、『POZ』はポーズを確認しながらできるので、誰でも手軽にリフレッシュできるということが大きかったですね。

玉山 女性が使いやすいリフレッシュツールが少なかったというのもあります。『POZ』はヨガがベースにありながら、どんな服装でもできるので、女性のグループにも多く利用してもらっています。

――利用状況はいかがでしょうか。

玉山 最初に金さんに来てもらい、説明会をしていただいてからはすぐ利用されましたね。

 お話にあったように、ツールを置くだけでは利用されない可能性があるので、佐藤さま玉山さまと相談した後にまずは社員の方に声をかけていただき、お昼休みに『POZ』のお披露目/説明会をしたんです。

佐藤 それからはポイントが貯まるとドリンクがプレゼントされるイベントをして、定期的な活用を促しています。ゼロ円ビジネスと一緒で、まずは体験してもらおうと。

――当初想定していなかった効果が生まれたといったことはありましたか?

玉山 同世代の人たちがグループで使ったりすることは想定していました。ただ、実際に導入して意外だったのは、上司と部下のコミュニケーションツールにもなっていることです。上司がうまくポーズできないのを見て、部下の人が笑っているというような、微笑ましいコミュニケーションが生まれています。

そうやって業務外でコミュニケーションできる場があると、マネジメントもしやすくなると思うんです。今はプライベートの話をすることが、ハラスメントを恐れるあまりタブー化しているじゃないですか。でも相手のことを知らないと、そもそもケアできないしマネジメントもできない。だから、上司と部下がラフに話をできる場ができたことはありがたいです。

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――コミュニケーションの活性化にも寄与するというのは、『POZ』側としては想定していたんでしょうか。

 『POZ』を導入していただいている企業さんの中で、そういう効果も生まれているらしいというのは気が付いていたのですが、お二人のお話を聞いて、改めてコミュニケーション活性化の効果が強かったのだと実感することができました。まさに「健康経営」というものは経営上の課題を解くための健康寄りのフレームワークとも考えられますから、『POZ』が健康促進に寄与するだけでなく、経営上のさまざまな課題解決に寄与し得るものだという可能性を示していただいたのは、すごくうれしいですし、我々としても大きな収穫です。

――逆に『POZ』側から従業員の利活用を促していくためのアドバイスはされていますか。

 体験された方にアンケートを行っていただいています。我々は常に仮説を持ちながら実証実験を行い、そこで出た声を反映させて改変を繰り返していくということをしているので、フィードバックに重きを置いているんです。なので、我々が用意したアンケート項目を富士通ゼネラルさん向けに改良して使っていただいています。項目としては、『POZ』の効果実感をメインに、こういうものを導入してくれる会社に対するロイヤリティの変化を問うような設問もありますね。

玉山 金さんには我々の聞きたいことも盛り込んでいただき、すごくきめ細かい支援をしていただいています。アンケートを取っていくことで、社員の健康状態がどう改善されたか数字で示すこともできるようになりますから、こちらとしても助かっています。

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健康経営の取り組みはまだ始まったばかり


――しかし、社内に前例がない状態から、ここまでのスペースを実現されたのは、あらためて驚きます。

佐藤 最初はおカネも人も全然なくて、製薬会社さんの無料セミナーをお願いしたりなど、いろんな手段で健康経営を浸透させようとしました。実はおカネをかけずにできることも意外にあるんですよね。

玉山 佐藤からは突拍子もないアイデアがいろいろ出てくるんですよ。正直、どう受け止めたらいいのかわからないこともありました。でも、HRカンファレンスで経営学者の楠木建さんが、経営ではやらないことだけ決めておけばいい。ひとつひとつは突拍子もないアイデアでも、あとから振り返ったときにストーリーとしてつながってさえいればいいんだということをお話されていて、そういうことなんだと納得できました。もちろん、佐藤はとにかくなんでもやってみるしかないという発想だったと思いますが。

 最後にこちらからもうかがいたいことがあります。今、『POZ』は職場から離れた場所に設置されていますが、もしこれが自席のパソコンからできるようになったとしたら、どうでしょうか。それとも、わざわざ足を運んで体験することに価値があると思ってらっしゃいますか。

佐藤 両方あるんじゃないでしょうか。足を運んでくることにも日常の業務から離れることでリフレッシュできるという価値があるし、自席で手軽にできることにも、職場の空気を変えるというメリットはありますよね。

玉山 それから今、『POZ』は本社のここにしかないので、地方や海外の社員が使えないじゃないかという問題もあります。これがパソコンさえあれば誰でも利用できるとなったら、そういう福利厚生の格差をなくすことにもつながりそうです。

 お話を聞けば聞くほど、発想が経営的な目線ですよね。お二人とも前例のない中で社内外のリソースをフル活用され、会社の文化を変えられてきたという意味では、企業内起業家精神をお持ちになって健康経営を推進されてきたんだなと、今日のお話を聞いてあらためて思いました。

佐藤 でもまだまだ始まったばかりですよ。富士通ゼネラルではようやく3年目にして、「運動」というキーワードを入れることができました。あとはどう活用してもらうかというフェーズです。『POZ』の導入から1カ月あまりで、200人以上の従業員がアンケートに答えてくれています。そのみなさんから意見を集めて、300人、400人……と広げていきたい。そうすることでやがて、会社全体が変わっていくのだと思います。

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