SOUNDS GOOD最新音源・楽曲公開!参加企業×アーティスト×レーベル代表安藤の3者がコラボレーションについて語る特別鼎談。
※この記事は、2019年9月にquantumウェブサイトに掲載した記事の再掲です。団体名やサービス名、肩書きなどは、取材時の記載をそのまま使用しています。
社内の環境音や、製品製造過程、特殊な設備機器などから放たれる企業の「音」を「個性」と考え、“ASMR”化した音声コンテンツで音ブランディングを提案するレーベル、“SOUNDS GOOD”。
本日9月19日、創業約100年の歴史を持つB to B企業・彌満和製作所が参加し、「ネジ穴を開ける、4つの音色。」「砥石で削る0.001mmの世界」「2,000l/分の油を注ぐ部屋」「確認は、ヒトか、機械か。」の4コンテンツが公開された。(リリースはこちら。)
これらのユニークな音から、既存のタイアップではなく、完全オリジナルの楽曲を生み出したのは、CIRRRCLE / Pecori (踊 Foot Works) / Sawa Angstrom / SEKITOVA / Shingo Suzuki (Ovall)のアーティスト5組のアーティスト。音としての魅力をピックアップするナレーションを、2017年に結成し、東京とロサンゼルスで活動を展開するヒップホップ・クルー、CIRRRCLEが担当した。
今回、本プロジェクトのローンチを記念し、彌満和グループ・株式会社やまわエンジニアリングサービス 執行役員 今野敏行氏とCIRRRCLE、そしてSOUNDS GOOD代表 安藤紘の三者が初めて一堂に会しての鼎談を行った。話は、企業の期待、クリエイターの手応え、両者を邂逅させた安藤の狙いにおよび、そこから見えてきたのは、SOUNDS GOODの未知なる可能性だ。
歴史ある企業と新しいアーティストが組めば、いいコラボレーションになる
—三者が一同に顔を合わせるのは今回が初めてだそうですが、まずは安藤さんから、今回のコラボレーションに対する期待感を聞かせてください。
安藤 今回のコラボレーションは彌満和さんからお話をいただいて始まったんですが、大正12年創業という企業さんに対して、新しいアーティストと一緒に組めればと考えたんです。そのタイミングでCIRRRCLEさんを紹介してもらって、100年弱の歴史を持つ彌満和さんと、国際色が豊でいろんな背景を持つCIRRRCLEさんの組み合わせは、すごくいいコラボレーションになると思ったし、今はローンチをすごく楽しみにしているところです。
今野 弊社は、工業製品に使われるネジを製造するための工具を作っています。製品としてのブランド力は持っているつもりですが、工具自体は一般の方が使うものではありませんので、“知る人ぞ知る”というか、メジャーではないわけです。実際に、ほとんどの方はネジがどのように作られているのかご存じないでしょうし、私自身、家族に話しても、誰も分かってくれません(笑)。もちろん、知る人ぞ知る存在であればそこまで広める必要はないという社内の声も確かにありました。ただ、業界的にも人手不足という問題がある中で、「ウチみたいな会社もありますよ」ということを、若い方の記憶に残すにはどうしたらいいかと考えていた時に、安藤さんがSOUNDS GOODを語っている新聞記事を弊社の社長が見つけまして、「これは面白いんじゃないか」という話になったんです。
— 一方でCIRRRCLEさんは、彌満和さんの音からどんな刺激を受けましたか?
A.G.O 音楽とはまったく違うところから生まれた音がすごく新鮮でした。自分が想像していなかった部分で音が馴染んでいったりして、「工場の音が音楽になった!」という、新しい感覚がありました。
Amiide 基本的に曲を作るのはプロデューサーのA.G.Oくんで、彼のトラックに彌満和さんの音が加わることで、「わっ、新しい!」ということは、すごく感じました。
Jyodan こういうコラボレーションは、海外でもほとんど聞いたことがない。すごくオリジナリティなものだと思ったよ。
CMでも、広告でもなく、「音楽にしてみたら」という切り口に可能性を感じた
— 彌満和さんは、自社のブランディングに、映像やビジュアルを重視しCMや広告ではなく、なぜ“音”を選択したのですか?
今野 ウチも専門誌などには広告を出してはいるんですが、「音楽にしてみたら」というSOUNDS GOODの切り口に可能性を感じたんです。音楽ってなぜか記憶に残るじゃないですか。ただ最初は、企業の音から音楽を作るって、正直、「え?」と、まったく想像できなくて(笑)。それでも、東京ガスさんなどの音から作られた音楽を聴いていくと、ウチの音から音楽が出来たら面白いだろうな、ウチの音ならどんな風に使われるのかなって思うようになりまして。中にいると気づかないんですが、今回やってみて「ウチってこんな個性的な音があるんだ」って再認識できたんです。ただ、使いにくい音なんじゃないかと心配にもなりました(笑)。
A.G.O いえいえ、そんなことはなかったですよ(笑)。今回、僕がトラックを作って、AmiideとJyodanに歌を考えてもらったんですが、あまり先入観なく作ろうと、Jyodanにはあえて何も知らせなかったんです。
Amiide 自分は彌満和さんの件を知ってたんですが、いつも通りのスタイルで歌を書いた後に、Jyodanに彌満和さんの話をしたら「そうなんだ!」って(笑)
Jyodan まったく知らなかった。「本当に!?」って驚いたよ(笑)。僕は車が好きだから、こういう工具がすごく好きなんだ。I love Tools!(笑)。
映像には残せないけど、音なら伝えられる。”企業機密”にこそブランディングに必要な個性になる。
— トラックを作る際は、工具だとか、歴史ある企業の音だといった点まで意識したのでしょうか?
A.G.O そこは純粋に、音から受けるイメージで作っていこうと思って。もちろん、どんな会社か調べましたけど、音のイメージが固まらないように、あえて深堀りしないようにして。サウンドに対しては、とても尖っていて、“カチッ”“パシッ”といった角ばった音だというのが第一印象でした。
今野 ウチで作ってる工具は、一般的に言うところの鉄で出来ているので、どうしても硬くて、角ばった音がするんです。
A.G.O それをそのまま、硬い音として使うこともできましたけど、僕らの音楽って、あまり硬い、四角い雰囲気がないので……。
Amiide “CIRRRCLE”だしね(笑)。
A.G.O そう、“円”だから(笑)。それで、彌満和さんの四角い音を、ちょっと丸い雰囲気にしてみたら面白そうだという発想で、トラックを作っていきました。
Jyodan 僕は最初、コラボレーションのことを知らなかったから、ワンカップ・ボトルの中で1円玉がカランカランと転がっているような音だと思ったよ(笑)。
A.G.O ASMRの大元になっている工具の現物を見たのは、今日が初めてなんです。だから、曲を作る時はいろいろと想像をして。
安藤 実は彌満和さんの工場で音を録る際、映像の収録がNGで、CIRRRCLEさんには、あまり資料を渡せなかったんです。でもそこにこそ、僕らが音でブランディングしようとする狙いがあって。彌満和さんは独自の技術で製品を作っているから、競合他社に技術を真似されないように映像は残せないわけです。それってつまり、その工程に企業としての個性があるわけで、映像はダメだけど音はOKであれば、今まで出しづらかった企業さんの個性を、固有の音でブランディングできるはずなんです。そこがSOUNDS GOODの、ひとつの大きなコンセプトなんです。
企業の音は、音楽で使われることを前提としていない、音楽の外にある音。そこが魅了的
—では、音楽を作る側から見て、企業ASMRの魅力や面白さは?
A.G.O 先ほども少し触れましたけど、音楽の外にある音だという点です。世の中には膨大な数のサンプリング素材がありますが、音楽で使われることを前提としたものなので、それだけで作ると音楽がどんどん集約されてしまうんです。でも、企業さんの音って全然違うところにある音だから、それが面白くて。
安藤 そもそも僕らは、サンプリング素材ではなく、気持ちのいいノイズをASMRとしてたくさん録ろうと考えていたし、ASMRはあまり世の中にないものだから、アーティストさんにとっても貴重なものになるんじゃないかと考えたんです。
A.G.O ASMRって、数秒間のサンプリング素材とは長さがまったく違うし、しかも音が一定じゃなくどんどん変わっていくから、どの部分を使うのが一番いいかという探求から始まるんです。その作業も新鮮でしたね。
企業ありきのCMではなく、アーティストと企業がフラットになれる、一歩下がった関係
ー さらにSOUNDS GOODは、CM的なタイアップではなく、100%自分たちの作品として楽曲の権利を持てるという企業との関係性も、大きな特徴ですよね。
A.G.O だから今回の制作は、彌満和さんとSOUNDS GOODと僕らでお互いにいいものを持ち寄って、ひとつの物を作り出すという感覚でした。例えるならば、みんなで玩具を持ち寄って、それをこねくり回しながら「こんなのできた!」っていう作り方。今までにないものでしたね。
Amiide まったく異業種の企業と自分たちが直接的につながれること自体、新しいですよね。タイアップだと、クライアント側の意図を汲まなくてはいけない事もありますが、今回はまずレーベル側から、「絶対にアートは自由にやって欲しい」と最初に言っていただけて。だから、「これがCIRRRCLEです」と自信を持って言える曲が作れたし、自分たちのEPにこの曲が入っていても何ら違和感のない、完全に自分たちの音にできたと思っています。
安藤 僕はそういった、アーティストと企業のフラットな関係を作りたかったんです。アーティストさんは、作品をお金に変えていくという課題を抱えていて、企業さんも、自社をブランディングしていくという課題がある。みんなが悩みを持つ中で、従来の受注関係ではなく、誰も損をしないフラットな環境を作りたかったんです。
A.G.O おかげで僕も、彌満和さんというB to Bをやられている会社を知れましたし、これがいい前例となって、自社をアピールしたいと考えている企業さんの、ひとつの選択肢になるんじゃないかって思っています。
今野 まさにおっしゃる通りで、ウチみたいな会社にとって、SOUNDS GOODは取り組みやすいなと、改めて感じました。CMは企業ありきで作るものですから、企業が前面に出るわけですが、ウチのような会社だと、前に出すぎず、でもCIRRRCLEさんの曲にくっ付いて、ファンの方や音楽好きな方に彌満和の名前を広げていけるというのが、身の丈に合ってるやり方のように感じています。一歩下がったところでみなさんと一緒にいられる、そこがウチのような会社からすると魅力的なんです。
いつか、「この音、彌満和の音って言ってたな」となってくれると、とても嬉しい
安藤 いや、身の丈だなんて(笑)。僕らは彌満和さんに無限の可能性を感じています。ただ、企業さんが、自分たちの言いたいように物事を伝えていくという時代は、もうなかなか訪れないだろうと思っていて。要するに、もうマスがいなくなった時代だから、ちゃんと刺さる人に対してメッセージを伝えていくことが重要で、そこで僕らは、音、音楽を選んだんです。そうした時に、CIRRRCLEさんが「彌満和さんの音のために頑張りました」というよりも、「遊んでいたらこんな面白いコラボレーションが出来ました」っていう方が、のファンに音楽が入っていきやすいのかなと思っていて。
今野 だから私どもが期待しているのは、そうやってCIRRRCLEさんの曲が一人歩きしてくれることなんです。そこにおんぶしていただいて(笑)、彌満和の名前も一人歩きしてくれるといいな、と。
A.G.O 実は僕らも、彌満和さんの音が一人歩きしていったら面白いだろうなって考えているんです。例えば、音楽を作ってる人なら、僕らの曲を聴いて「これ何の音?」って気になるだろうし、「この音を使いたい」っていうアーティストが他にも出てきそうですよね。
ー SOUNDS GOODの企業AMSR音源は、申請をして、企業名をクレジットすれば、誰でも楽曲制作に使用できるんですよね。
A.G.O そうやって、僕らとは違う方向性で、彌満和さんの音から新しい曲が生まれていくと面白いですよね。
今野 それでいつか、「この音、彌満和の音って言ってたな」っていう風になってくれると、とても嬉しいですね。
Amiide みんなにとって恵のあるシチュエーションだなって思います。
安藤 本当にみなさんにSOUNDS GOODのヴィジョンを理解していただけて、今野さんも、CIRRRCLEさんも、今日、初めて会った気がしないです……あれ、表現が違ったかな(笑)
一同 (爆笑)
歴史がある会社なのにイノベイティブ。これでいろんな日本企業のイメージが変わると思う。
安藤 ちなみに、彌満和さんから見て、CIRRRCLEさんの第一印象って、どうでした?
今野 いやぁ……実はSOUNDS GOODに参加されているアーティストさんって、正直、誰一人として知らなかったんです。
安藤 いや、むしろ知ってたらすごいですよ(笑)
今野 (笑)。なので、CIRRRCLEさんの印象も、ジャケット写真とかを見て……ちょっと怖そうだなって(一同爆笑)。
A.G.O いえいえ、3人とも、かなり怖くない方だと思いますけど(笑)
今野 今日でまったく印象変わりました(笑)。みなさん個性的で、実際にお話しできて、ますます曲が楽しみになりました。いい人たちで、よかったなぁ(一同笑)。
A.G.O でも僕らも同じで、最初に彌満和さんの名前や製品を見て、四角い、カチッとした会社なんだろうなって思ったんです。あまり、どんな会社か想像がつかなかった。だけど、SOUNDS GOODに参加するという時点で、何か新しいことをやろうとしているんだなと。堅い会社かもしれないけれど、でも柔軟な考えを持っているんだろうなと感じて。
Amiide 彌満和さんのように歴史がある会社が、こうしてアーティストと関わろうとすることって、すごくイノベイティブですよね。これで、いろんな日本企業のイメージが変わると思う。
Jyodan 自分たちのジェネレーションが、歴史のある企業を知ることはすごくいいことだと思う。だけど特に日本は、そういう歴史ある企業ほど新しいことをやりたがらない。でも、どんな大きな企業でも、進化していかなければ時代と共に忘れ去られていくと思うから、そういう意味でも、本当にグレイトなコラボレーションだったと思ってるよ。
Amiide しかも、自分たちの名前の出し方として、ここ(SOUNDS GOOD)を選ぶことが尖ってるし、コラボレーション相手が、日本でもかなり変わったことをやっているCIRRRCLEっていうのも尖ってる(笑)。でも、私たちも日本から世界を目指していて、どこでも通用するものを作りたいから英語で歌っているし、それと同じように、彌満和さんの工具も、世界に通用する、どこに行っても絶対に必要なグローバルな技術。そうしたアイデンティティの部分は共通しているのかなとも思っていて、彌満和さんとCIRRRCLEが出会えたことは、本当にミラクルだなって、改めて感じています。
ーend
※この記事は2019年9月にquantumのウェブサイトにて公開された記事です。
※彌満和製作所のASMR音源はこちら
※CIRRRCLEとのコラボレーション楽曲はこちら
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