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小泉今日子さんによる朗読会に行ってきた

名古屋城で12/8に開かれた小泉今日子さんによる「満月の夜城朗読会」に行ってきました。
※※※本朗読会は、配信もされます。本文は他愛もない自分語りがほとんどですが、もし配信をネタバレなしにご覧になりたい方は、本文を読まないことをお勧めいたします。また、本文は、筆者の主観が多分に含まれることをご理解ください。※※※
詳しい内容は、こちらから
https://t.livepocket.jp/e/kei_1208

私はこの朗読会に特に予備知識もなく、バチボコクソミーハー心で参加したため、事前に知っている内容といえば
『「名古屋城」で「小泉今日子さんによる朗読会」が開かれる』以外の情報は何も無し。
市役所駅を降りてから「うわあ、きっと、参加するのは、ガチのファンとかon reading(名古屋の素晴らしい独立系書店)の顧客である感度の高い方とかなんだろーなあ。さっきまで、丸亀製麺で温かいかけうどん(withイカ)をかっくらっていた私なんかが参加して良いのだろうか・・・。」と、マスクと寒さと眼鏡の相性は今日も最悪な中、レンズを半分曇らせながらまとまらない頭で、一人名古屋城へ歩みを進める。
左手に愛知県体育館(ドルフィンズアリーナとか言われても分からんのよ)が見えてきたのだが、一向に名古屋城の入り口が見えてこない。
すぐ曇るメガネと微妙に暗いせいで、不慣れな私がワタワタしながら係りの方に
「あ、あの、名古屋城の入り口ってどこですかね? 」
と、名古屋城の電子チケットを表示したスマホを見せながら問い合わせると
「あー、キョンキョンのチケットは今ここで見せんでええで。中で見せて」と言われてしまう。多分、向こうも暗くて、チケットの内容を理解出来ていない。
「これ、名古屋城の電子チケットなんですけど~」
と言うと、別の方に
「あ~、あっちだで」
と、右手の方を案内された。
あぶねえ、もう少しで、左側の体育館の方の通路に行くところだったぜ。てか、右手の入り口、狭いから、夜だと左手の体育館の存在感に負けてるのよ。昼なら全然問題ないんだろうけどさあ。
入り口から、ジャッ、ジャッ、と砂利の上を音を立てながらパンプスで歩いていくと、ようやく城が見えてきた。
寒さですぐに曇る眼鏡からでも、師走の満月の夜にライトアップされた名古屋城は、とても綺麗で最高だった。
この景色を見て、
「来てよかったあ」
と、柄にもなく写真を撮ったりする。
このイベントは「名古屋城 秋の夜間特別公開」の一環のため、この朗読会だけでなく色々なイベントが行われており、それらも興味があったのだけど、丸亀製麵で時間をとられた私は、当然他のイベントに参加する余裕などなく、横目で見ながら、ひたすら会場へと歩いた。
そして、ようやく人がザワザワしている場所が見えてきた。
受付の人に電子チケットを見せ、リストバンドをはめてもらい会場へ。
入り口で、毛布とカイロを渡される。そこで、気づいた。

「え?!外なの?!本丸御殿の中じゃないの?!」


私は、ずっと、朗読会は本丸御殿の中でやるものと勘違いしており、そこで初めてこの朗読会が
『本丸御殿中庭(南側)特設ステージ』で行われることを知った。
そう。よく見たら(というか普通に見れば)ちゃんと書いてあるのに、私は『本丸御殿』だけ読んで、そこで(=中で)やるものと思い込んでいた。
あー、やっちまった。自分は子どもの頃から注意力散漫で叱られてきたけど、相変わらずだ。
仕事帰りだから、普通にタイトスカートとパンプスだよ。しまった。パンツにしておくべきだったわ。
しかし、この日は、いつもなら風が吹きまくっている12月の名古屋とは思えない、まったくと言っていいほど風が吹いておらず、満月は冴え冴えと輝き、完璧な気象状況だった。
「これがスターのパワーか・・・」
と思いながら、セッティングされている場所へ。
最初は後ろに座っていたのだが、係りの方に「前の方空いてますよ~」と案内され、なんと端とは言え、前から2列目の席に座ることが出来た。
え?いいの?バチボコクソミーハーな私がこんな席で良いの?!
と、ビクビクしながら着席。しばらく周りの様子をうかがっていると、多分ガチファンの男性やら、上品なミセスやらで、自分が浮いていることを確信。だんだん勝手にいたたまれなくなり、開演ギリギリまでイヤホンで音楽を聴いて、どうにかやり過ごすことに。一人でいるのにコミュ障が爆発するって、どういうことだよおい。
そうしているうちに開演前となり、スマホをしまい待っていると、前のガチファンの男性が左側をガン見してる。見てみると、そこに小泉さんが歩いて登場。
「えええええええええええええええええええええええ?!?!?!?!普通にそこから登場するの?!?!??!?!」と、私がビビりまくっていると、どんどん近づいてくる。
当然ながら私は初めて小泉さんを見たのだが、その時の正直な感想は

「うわ!思ったより本物!!!」


であった。
思ったより、って何だよ、という感じだが、今までコンサートやらライブやらで芸能人の方を見た時は、向こうがステージにいるせいか、どことなく現実感がない、ホログラムのような、3Dのような印象しかなかった。目の前に来たこともあったけど、大きな会場で爆音でのライブだったりすると、相手から「生」を感じることは少なかったから。
けど、距離がある程度(と言っても、数メートル)あるとはいえ、同じ地平を歩いているからか、薄暗い景色の中の半曇りの眼鏡越しでも分かる、
「うわあああ、ほ、ほ、ほんもの・・・」
と、硬直しながら静かに衝撃を受けた。
私がそんなことを思っている間にも、小泉さんはスタスタとステージに歩いて行く。
黒のタートルにピンクのパンツ(ロングスカートかもしれない)に、白い柔らかい素材のロングカーディガンのようなものを羽織り、黒のショートブーツを履いていた(ように見えた。正直、細かいところまでよく見えなかったので、雰囲気です)。
その姿は小さいながら存在感があり、やっぱり普通の人とは全っ然違う、と感じた。私は軽い相貌失認の気があるのだけど、もし普通に街ですれ違っても、多分「この人一般人じゃないな」くらいは思うだろうなあ、と。オーラとかそういうのはよく分からないけど、それでもそう感じた。
ステージは、やぐらのようになっており、暗い中、群衆を見下ろしながら明かりに照らされ、一人本を読み始める小泉さんと、それを野外で聞く群衆、という、きっと、今後二度と経験しないだろう不思議空間。
その中で、座って、眼鏡をかけて読み始める小泉さん。
朗読しながら、右足をトントンとリズムを刻むように動かしている。
過去、朗読会に参加したことはあったけど、足を刻みながら読んでる人は初めて見た。それを見た時、私は勝手に
「やっぱり、少女時代からステージ立ち続けた「癖」のようなものが残っているのだろうか」
と、妄想を繰り広げる。いや、自分、ちゃんと朗読聴けや。
そして、一段下がったところで、生でギターの方が朗読を妨げないように演奏しているのだけど、朗読はじめて5分くらいの時に、ヒラリ、と楽譜が、一枚床に落ちた。
「うわ!落ちたし!楽譜落ちたし!誰か拾ってあげろし!」
と、心の中で焦りまくる私をよそに、ギタリストの方は一話目が終わるまで何事もなかったように弾き続けた。寒い中のギターってだけで大変なのに、プロってすごいなあ(一話目が終わったところで拾っていらっしゃいました)。
一話終わるごとに、小泉さんから本についての語りが入る。
選書は小泉さんがしたわけではなく、「on reading」の方がされており、その理由も小泉さんが話すなどしつつ、
「寒くない?」
などと、やぐら(違)の上からこちらを気遣う小泉さん。
もちろんそれなりに寒かったが、よく考えたらやぐらの上に座っている小泉さんの方がもっと寒かったに違いない。本当、お疲れ様です。
そんな感じで朗読は進み、正直、最初の2,3話くらいまでは、小泉さんも固かったように感じた。
ギア入ってきたなあ、と思ったのは、会話劇がメインの6話目。
いつの間にか右足の動きは無くなり、どんどん口調が生き生きしてきて、明らかに「ノッてきた」感があった。
朗読という形式は、ストーリーテラーとして話を伝えるということで、それはそれで落ち着いた感じで良いのだけど、自ら登場人物の一員となってストーリーを進める会話主体の話の方が、個人的には好きでした。で、会話劇を聞きながら「この人のお芝居見たいなあ」と思いました。
が、朗読と朗読の間でのトークの時、次回の公演について話していたのだけど、
「名古屋ではないんですよ~。劇場が呼んでくれたら来ること出来るんですけど」って。
うおーーーい!ここでも名古屋飛ばされてんぞ!!
ちょっと聞いた?!たかし(=名古屋市長)!秀章(=愛知県知事)!呼んでくれたらキョンキョン来るって!!(違う)。いや、行政の長に頼んでもどうしようもないのかもですが。マジでこういうのって誰に頼めばいいの?!てか、名鉄ホール、中日劇場、何でなくなっちゃったんだよーーー(愚痴)。
そして、最後に漱石で〆。てか、全然古臭くないお話で、夏目漱石ってすごいなあ、と思いました(偏差値2の感想)。
ここまで、約1時間。
小泉さんは、終わりのあいさつをし、ステージから降りてきたのですが、帰り道も、行きと同じルートで帰られるらしい。
え?てか、一人で観客の方に歩いてきたんだけど。
そして、観客の前に立ち、手を振ってるんだけど。
ねえ?!いいの!?私の目の前数メートルで、一人で手を振ってるんだけど!!!!!!
途中まで、ガチで一人で歩いてて、こっちがビビった。
さすがに、楽屋?までの道のりで案内の方いたけど。それまでは、ガチで一人だったのよ。そして、お客さんもそんな小泉さんに対して、拍手で送ってるのよ。
すごいなあ。
いや、違う。今まで私が入った現場が、動物園過ぎたんだ。
これが、常識のある大人の方々の当たり前の対応なんだな。
私が勝手に驚いている間に、朗読会は恙なく終了。
気づけば満月は、始まった時より少しだけ高い位置で輝いており、一筋の飛行機雲が横に沿うように出来ていて、風は最後まで吹かなかった。
ライトアップされている本丸御殿を見ながら「この御殿の1ミリくらいは私の税金で作られているのかなあ」と思いつつ、席を立ちました。
駅に向かいながら朗読会の余韻につつまれつつ、
「(来年から駅名が変わるので)「市役所」駅に来るのも、これが最後かあ」
と、微粒子レベルの感傷を覚え、一刻も早く足を温めたい気持ちで家に帰りました。

おしまい


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