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品質管理の玉手箱(4)

現場主導の品質管理

 ファイゲンバウム博士が提唱したTQC(Total Quality Control)と、我が国の高度経済成長と高品質を支えた“日本型TQC”の違いを一言で表現するならば、前者が「トップダウン型」であるのに対して、後者は「ボトムアップ型」であると言えることでしょう。

 では、「トップダウン型」と「ボトムアップ型」は、何がどう違うのでしょうか?

  おおよそ人が意図的に行う行為には、大なり小なり、何らかのかたちで"管理のサイクル"に従っています。
 まず、行為の目的や目標、それらを達成するための方法や手順を計画(Plan)し、それに従って実行(Do)し、その結果を当初の計画と照らし合わせて確認・分析(Check)し、確認の結果から問題点を洗い出して是正や改善策を作成(Action)すると言う、皆さんもどこかで一度は耳にしたことがあるであろう"PDCAサイクル"のことですが、先に揚げた「トップダウン型」と「ボトムアップ型」では、この"PDCAサイクル"の各ステップの主体が異なります。

 一般的な「トップダウン型」では、現場(ここでは、製品の製造や販売、サービスや業務成果の提供などの実務に直接携わる組織及び個人を総称して、"現場"と呼びます)が主体的に関わるステップは"D(実行)"のみ(限定的に"A(是正改善)"に関与する場合もありますが…)で、"P(計画)"や"C(確認分析)"に現場が主体的に関与することは殆どありません
 経営管理者や、彼らから経営管理業務(例えば、経営企画や品質管理、財務管理など)を任された組織が策定した計画に従って淡々と実務を行うのが、現場の最大の責務なのです。

 これに対して「ボトムアップ型」では、"PDCA"全てのステップに、現場が直接的に関与することが求められます。

 自分たちの置かれた現状から自分たちが抱える問題や課題を把握し、それらの解決、或いは達成に向けた目標や手順(進め方)を計画し、実行し、その結果(達成度など)を分析し、次なる計画に繋げて行く…つまり、現場が自主的、かつ主体的に管理のサイクル(PDCA)を回す「自主管理活動」ですが、これを、戦後日本の産業界で初めて体系化して展開したのが、"日本型TQC"でした。

 そして、"日本型TQC"の中心にあって、常に日本の品質管理の発展を支え続けてきたのが、現場第一線の職工たちで構成された自主管理活動グループの「QCサークル」で、これこそが、"日本型TQC"の強さの秘訣だったのです。

  そこで、次回からは「QCサークル」についてお話ししましょう。

 

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