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品質管理の玉手箱(16)

一般公開された情報には要注意!


 私たちが日ごろ目にする“情報開示(公開)”の一例として、厚生労働省が実施している「国民生活基礎調査」の中から「二人以上世帯の貯蓄現在高」を見ると、2020年度の調査結果では、1世帯当たり平均貯蓄現在高は1,791万円なのですが、この数字(貯蓄額)は、皆さんにとって妥当な(納得できる)数字ですか?

  一般的に平均値とは「集められたデータの中心を示す値」と理解されているでしょう。また、データの分布形状は「中心(平均値)付近が最も高(多)く、左右に外れるに従って低(少な)くなっていく」いわゆる“正規分布(図1)”をイメージする方も多く、こうした一般的な平均値のイメージだけが独り歩きして、公的な調査結果に接して「自分はこんなに持っていない」と不安を感じる人も決して少なくありません。

(図1) 一般的な平均のイメージ

  以前「老後2000万円問題」が話題になりましたが、もしかすると、この調査報告辺りがベースになっているのかもしれませんね。

  ところが、実際の貯蓄現在高の分布グラフは図2の様に、一番左(100万円未満)が最も高く(10.1%)、平均値(1,791万円)を含む階級より上(1,800万円以上)の世帯は全体の1/3の32.9%に過ぎません。これならば、多少は、皆さんの実態(実感)に近づくのではないでしょうか?

(図2) 実際の平均貯蓄現在高の分布

 このように、一般的に情報開示(公開)されている“加工された情報”や“選別された情報”だけに頼っていると、時として大きな間違い(勘違い)や意図しない結論に導かれてしまうリスクさえあって、“組織の活性化”や“現場力の向上”には、かえってマイナスにもなりかねません。

 “組織の活性化”や“現場力の向上”のために必要な情報とは、現場で起きている「一瞬一瞬の出来事(事実・現実)」、つまり「現場の“生(なま)”の情報」なのです。

 常に「現場の“生(なま)”の情報」が組織内の隅々まで公開(開示)されていて、それに基づいて、「組織内で、今、何が起きているのか?」を組織内の誰もが考えることができるようになっていてこそ、“組織の活性化”“現場力の向上”ができるのです。


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